福田パン、ばんどう太郎、551蓬莱……人気ローカルチェーンはいかに地元民から愛される存在になったのか
地域に根差し、地域に愛されながら発展してきたローカル飲食チェーン。その魅力は「安くておいしいメニューが目白押し。そこには地域の食習慣も垣間見える」ところにある、というのは『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』の著者・辰井裕紀さん。
辰井さんはライターであり、テレビ番組『秘密のケンミンSHOW』(現・『秘密のケンミンSHOW極』/読売テレビ・日本テレビ系)のリサーチャーとしても活動する人物。そんな彼が人気ローカルチェーンを現地取材し、1冊にまとめたのが本書です。
「ローカルで繁盛している」「すごいビジネスの工夫がある」という2つの条件をもとに選ばれた7店は、地元発だからできるローカライズ戦略や全国チェーンへの対抗手段、看板メニューを磨くワザなど、ローカル流ならではのアイデアが満載です。
たとえば、近年のコッペパンブームの火付け役ともいえるのが、東北ローカルフードの代表的存在「福田パン」。その場でパンを作ってくれる対面式の直営店3店には、朝7時から地元客が列をなします。名物「あんバター」などの甘い系(菓子パン)、「タマゴ」「やきそば」などの調理系(総菜パン)といった多彩なメニューに、追加できる「トッピング」があるほか、クリームの塗り方の指定などもでき、オーダーの組み合わせは実に2000種類以上になるといいます。
この対面販売以外に、地元のスーパーや高校・大学の購買などへのパッケージ商品の「卸売り」、スーパーなどに出張して行われる「実演販売」を加えた3つの柱で展開している福田パン。1948年の誕生から地元の人々が慣れ親しんできた「心の味」は、「これからも岩手県民が生きる大きな力になるはずだし、その存在を岩手県民たちが守るはず」(本書より)だと辰井さんは記しています。
商品とともに、ユニークな経営手法に驚かされるチェーン店もあります。そのひとつが、茨城県を中心に展開する和食レストラン「ばんどう太郎」。長年働くパートから「女将さん」と呼ばれる店の顔となる女性を選ぶ、店長はなるべく地元民にして各地で好まれる味に近づけるなど、独自の理論に基づいた接客や味作りをおこなっています。さらに、「床ピカピカナンバーワン賞」「笑顔がステキナンバーワン賞」といった個人賞を設けるなどして、店員の士気を高めることにも余念がありません。
このほか本書では「551蓬莱」(大阪)、「おにぎりの桃太郎」(三重)、「ぎょうざの満洲」(埼玉)、「カレーショップインデアン」(北海道)、「おべんとうのヒライ」(熊本)を紹介。どの店も、社長や会長、現役社員らに話を聞いており、本音が詰まった内容になっています。
2020年に広まった新型コロナウイルスは飲食業界にも大きな打撃をもたらしました。しかし、これらのローカル飲食チェーンはその中でも堅調に営業を続け、店によっては売り上げや店舗数を伸ばしているところもあるといいます。その秘密はいったいどこにあるのか、みなさんも本書を読んで深掘りしてみてはいかがでしょうか。
[文・鷺ノ宮やよい]
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