第93回 日本のヒーロー文化から生まれた歌謡アイドル映画『スーパー戦闘 純烈ジャー』
アメコミ・ヒーロー物ではないですが、もうすぐ公開される『スーパー戦闘 純烈ジャー』。そのタイトルからわかるようにスーパー戦隊をモチーフにしたヒーロー・コメディであり、ムード歌謡グループ、純烈のメンバーが出演する歌謡アイドル映画です。
元々、純烈のメンバーの多くが特撮ドラマ出身だったので実現した企画のようです。
純烈のグループがスーパー銭湯でライブを行うので戦闘と銭湯をかけている。
スーパー戦隊のパロディではあるのですが、本家本元の東映(東映ビデオ)さんが作っており仮面ライダー等のスタッフが参加しているので、ヒーローの造形や殺陣は本格的。
楽しく笑える愛すべき映画ですが、こういうパロディ映画が作られるということは、改めて
スーパー戦隊シリーズはもはや説明のいらないヒーロー物の代名詞になっていると思いました。
例えばアメリカでヒーロー物のパロディが作られる時は、だいたいスーパーマンかバットマンをベースにしていることが多い。それだけスーパーマンやバットマンがヒーローの代表格だからです。日本ではまだヒーロー物のパロディは少ないですが、関ジャニ∞の 『エイトレンジャー』もこの『スーパー戦闘 純烈ジャー』同様、スーパー戦隊をモチーフにしています。純烈も関ジャニ∞もグループなので、それぞれの出番・個性を考えたらスーパー戦隊ものが一番活かしやすいのは当然ですが、説明があまりいらずわかりやすいし、ウルトラマン、仮面ライダーと並ぶ日本のヒーロー文化だからメジャー感もある。(=パロディのしがいがある)
ちなみに海外(北米)ではスーパー戦隊はパワーレンジャーとして紹介され大人気です。いつかアメリカのヒーロー物のパロディで、スーパー戦隊=パワーレンジャーを使った作品が現れたとしたらスーパー戦隊はスーパーマン、バットマンと肩を並べるヒーローの代表になったということでしょう。特にダイバーシティ&インクルージョンが叫ばれる中、様々な人間で構成されるスーパー戦隊というのはますます注目されるかもしれません。
(なお日本のホラー映画のファンの間でも話題になった、カナダの映画『サイコ・ゴアマン』
は明らかに日本の特撮ヒーロードラマの影響を受けていますね。特に怪人の造形とかアクション)
『スーパー戦闘 純烈ジャー』に話を戻すと、個人的にいいなと思ったのは、純烈ジャーの設定です。彼らは温泉の女神という温泉の精と合体する(契る)ことで、温泉を守るために変身します。地球の平和ではなく温泉のために戦うヒーローなんですが、温泉というのは火山や火と水に由来するものです。そして温泉とは人々の癒しと活力を与える場所でもある。言い方を変えれば温泉ヒーローというのは、火山と水の精の力を得て人々の心のやすらぎのために立ち上がるのです。
人々の癒しの場を守るヒーローって素敵ですね。
(文/杉山すぴ豊)
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『スーパー戦闘 純烈ジャー』
9月10日(金)新宿バルト9ほか公開
配給:東映ビデオ
公式サイト:https://junretsuger.com/
©2021東映ビデオ
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