電話交換手、灯台職員、ドックかんかん虫… 昭和の仕事はこうして消えていった

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電話交換手、灯台職員、ドックかんかん虫… 昭和の仕事はこうして消えていった

 コンピュータなどの技術革新がすさまじく進む一方で、人知れず消えていく職業たち。一説によれば10年後には半分以上の仕事がなくなるともいわれており、そう考えるとコンビニや飲食店から完全に店員が消える日も遠くないのかもしれない。ただこうした現象は今に始まったことではなく、これまでにも多くの仕事が利便性と引き換えに姿を消していった。

 わかりやすい例を挙げるなら、昭和40年代後半頃まで存在した「電話交換手」。今でこそものの数秒で相手と通話できる時代だが、当時の電話は電話機から電話機へと直接かけることができなかった。そのため電話をかける際は交換手を必ず介す必要があり、相手の電話番号を告げてから交換手が繋げることで、初めて相手との通話が可能であった。

 だが、そんな電話交換手も今や姿を見ることがなくなった。昭和40年代後半になると電話回線が発達し、交換手を介さずとも電話ができるようになったからだ。

 このように私たちの生活が快適になっていく裏では、人知れずさまざまな仕事が姿を消している。ではそれらはいったいどのような仕事なのか。本稿では澤宮 優氏の著書『イラストで見る昭和の消えた仕事図鑑』(原書房)を参考に、激動の時代を支えた「昭和の仕事」を振り返りたいと思う。なお、ここで言う「昭和の仕事」とは、同書の説明に則り、昭和を象徴する仕事や昭和に消えた仕事、あるいは昭和に全盛期を迎えた仕事などをひっくるめて「昭和の仕事」とする。

 まずは、百貨店やホテル、企業ビルなどでエレベーターに乗って操作をおこない、客の案内をする女性、エレベーターガールから。そもそもエレベーターガールといえば、「上へ参ります」などと乗客を案内するイメージが強いだろう。しかし戦前のエレベーターはハンドルを回して運転するように作られていたため、エレベーターガールは各階を案内しながらエレベーターの運転もしなくてはならなかった。

「慣れないうちはハンドルに気を取られ、案内を忘れるときもあれば、エレベーターを各階にきちんと止めるのも難しく、案内しているうちに、床と三十センチほど離れて止めることもあった」(本書より)

 おまけに振動も激しいため脚の疲労に苛まれ、ストレスもあって肩こりや胃炎など内臓を痛めることも……。私たちが想像する以上にエレベーターガールは重労働だったと言えよう。しかし近年は人件費削減のために、ほとんどの百貨店のエレベーターが自動運転になった。同時にエレベーターガールはその数を減らしていったが、今も一部の百貨店ではまだ姿を見ることができるという。

 一方”完全に姿を消した”という意味では、「灯台職員(灯台守)」が挙げられる。灯台職員とは文字通り、船舶の航路標識としての役割を果たすように維持管理をする職員のこと。言わば海の守り人である。灯台の点灯・消灯はもちろん、光源の回転、気象観測、沖合の監視、時には見学者の案内など職員の業務内容は想像以上に多いのだが、何よりも1人(もしくは数名)で勤務する孤独な仕事であるがゆえに寂しくてやりきれなかったそうだ。加えて日常生活は不便極まりないものがあり、その苦労については以下のように記されている。

「赴任地が人口の少ない地域であるため、飲料水に乏しい、医者がいない、近所づきあいしたくても人がいない、子供の友人ができない、妻の出産のときは夫が産婆代わりに取り上げるなど、日常生活での不便はあった」(本書より)

 そんな苦労の多い灯台職員も、機械による自動化によってその数は減少。平成18年には最後の有人灯台であった長崎県女島灯台も自動化され、ついに灯台職員はいなくなった。

 対して「ドックかんかん虫」という珍妙な名前の正体は、鉄製船舶の錆を落としたり修繕したりする工員のこと。ハンマーで鉄をかんかんと叩き、鉛虫のようにへばりついて仕事をする様子からその名がついたらしい。昭和15、16年までは姿を見ることができたが、やはり彼らの仕事も時代とともに消失。モーターや電気式、金属製タワシなどもできて、人手による錆落としはおこなわれなくなったのだ。

 もちろん技術が進歩し、生活が便利になるのは決して悪いことではない。ただいつかコンビニや飲食店から店員が完全に消え、人がいなくても作業できる時代になったとき、私たちはいったい何を思うのだろうか。本稿のラストは、本書に掲載されている筆者のあとがきで締めたいと思う。

「昭和の消えた仕事を振り返ることは、時代の進む進行方向がこれでいいのかと問いかける作業である。昭和の時代に仕事に携わった人々の矜持や生きがい、社会を考えることから答えが生まれると信じたい」

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