【ライヴレポート】Salyuと弦楽器が紡いだ”希望という名の灯り”

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Salyuが新たな音楽の旅路へと向かう。これまで数多くのステージで共演している羊毛こと市川和則のガットギターとストリングス・カルテット梶谷裕子(Violin)須磨和声(Violin)、三品芽生 (Viola)林田順平(Cello, Arrangement)と共にビルボードのステージに登場した。果たして珠玉の楽曲たちが多様な弦楽器たちとのコラボレーションでどんな表情を覗かせるのか。

今回は8月14日(土)ビルボードライブ横浜にて行われた1stステージの模様をお届けする。

当日は新型コロナウイルス蔓延防止等重点措置のため、予定時刻を繰り上げてスタート。市川和則・ストリングス・カルテットメンバーに続いて、グレーのセットアップというミニマルな衣装でステージに現れたSalyu。「みなさんこんにちは!」とあのキュートな笑顔を振りまき場内がたちまち和やかなムードに包まれる。「早い時間からのスタートになりますが今日はカルテット・ガットギター・ヴォーカルという編成で心を込めてお届けしてまいります。どうぞよろしくお願い致します。」とその謙虚な姿勢に暖かい拍手が送られていた。

白い照明がsalyuに向かって焚かれ神秘的な雰囲気の中でリリイ・シュシュ時代を代表する楽曲「回復する傷」から幕を開けた。ガットギター、ヴァンオリン、ヴィオラ、チェロの四重奏そして、そこに楽器の様なSalyuのヴォーカルが加わり、一人一人のプレイヤーとしての存在感に圧倒されていく。雨が降ったこの日、少し肌寒さを感じていたがSalyuの歌声が場内を徐々に優しく包み込んでいった。
そしてシームレスにデビュー作「Valon-1」が披露される。珠玉のバラード楽曲もこの編成でしか味わうことの出来ない優美なアレンジで魅了。サビの「きっと月の光と 夜の闇と 宙を舞う夜光虫へと」をなぞるように、黄色と青色の照明が交互に焚かれる演出が印象的であった。アウトロで儚く歌われた「きっと…」には先の見えない今を生きている我々の背中を押してくれる様な希望の様なものを感じなかっただろうか。

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ここでそれまでの空気が一変する様な厳かなカルテットの音色に誘われながら2015年リリースのアルバム『Android & Human Being』より「リスク」と2005年リリースの1stアルバム『 landmark』から「landmark」の2曲という、salyuの骨頂ともいうべきであろうシリアスな楽曲が立て続けに披露された。ミニマルな編成ゆえに際立つベースラインを感じさせるヴィオラの音色も美しい。その独特の音色が印象的なヴィオラは人間の声の音域に一番近い楽器と言われているそうだがSalyuの変幻自在のヴォーカルとの相性の良さにも驚かされる。次曲「be there」では滑走路を今にも飛び立つ様な高揚感溢れるバイオリンの刻むリズムに乗っかって、片手を天に掲げながらどこまでも上昇していくSalyuのファルセットが気持ちいい。

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そして続けざまのロックバラード「THE RAIN」。暗闇のステージで雨が降っているような細かいシャワーの照明に包まれるSalyuが「どんなことが起きても 夜はいつか開けるし」と切実に歌う。さらに曲中、雨が上がった様な会場全体に煌々とまわるミラーボールの輝きと、弦楽器の奏で、そしてSalyuのエモーショナルなヴォーカルが一体となって力強く届けられる。

「今日は朝から風が強く雨も強い中、お越しくださってありがとうございます。最後にお届けしたいと思うのが沢山歌わせてきていただいている愛を歌った楽曲です。情勢が移り変わって行ったりストレスの多い時代になっていると思うんですけれども、日常の中のささやかな愛、自分の優しさみたいなものなのかな。少しでも愛に出会えることが人間として最も幸せなのかなと思ったりすることがあります。皆さんの一日一日もどうか豊かな愛の風に包まれます様に。」と壮大なバラード「Lighthouse」が披露される。世界規模や日常見るニュースでも分断というワードが囁かれる昨今ゆえに、Salyuの力強いヴォーカルが一人一人の胸の中に灯火となって響いていく。

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心地いい余韻が冷めやらない中カルテットメンバー3名を携えてアンコールへ。2年前にビルボードで初めてカルテット編成でライヴに挑戦したとSalyuが語る。その時に弦楽器の響きの美しさや、自分の中での手応えや喜びが忘れられずいつかまたこの編成で、と心に秘めていて、今回数年越しのライヴ実現となったという。さらに今回披露された全ての楽曲のアレンジを手がけたのが林田順平で、メンバーで最年少なのに頼もしいです、とにこやかに語る。

3人で演奏出来る曲を、ということで披露された2006年リリースのシングル「プラットフォーム」のカップリングのアコースティック楽曲「行きたいところ」。羊毛の素朴なガットギターの音色とSalyuの伸びやかな歌声がビルボードのステージをどこまでも漂っていく。「肩を借りたら、また次の場所へ行く」というフレーズに、どこまでもストイックに仲間と音の旅をし続けるSalyuの姿を重ねてしまったのは自分だけだろうか。

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最後に残りのカルテットのメンバーを迎え入れ、「私自身もこの曲に出会ってからたくさん励まされて、今日まで歌ってまいりました。優しい心の篭った曲です。皆さんの心にも暖かさ、が届きますように。そんな思いを込めて。」と披露された代表曲「To U」が無敵だった。「今を好きにもっと好きになれるから、慌てなくてもいいよ」と歌う力強いヴォーカルに加わって、未来へと前進していく様なヴァイオリンの豊かな音色が会場いっぱいに鮮やかに響く。Salyuからの温かくて強い音のプレゼント。貴重な一時間ちょっとの親密なステージは来場した全ての人の心に”希望という名の灯り”として刻まれた。

Text By 三好香奈
撮影:RyoICHIKAWA

Salyu × カルテット & Billboard Live YOKOHAMA(1st)

1. 回復する傷
2. VALON-1
3. リスク
4. landmark
5. HALFWAY
6. be there
7. THE RAIN
8. Lighthouse

en.
9. 行きたいところ
10. to U

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