中国人エリート君に政治的な話をいろいろ聞いてみた(note)

今回は華村@中国さんの『note』からご寄稿いただきました。

中国人エリート君に政治的な話をいろいろ聞いてみた(note)

 

「ある中国人エリートの結婚観、教育観、世代観」2021年4月22日『note』
https://note.com/stwtcpld/n/nff756ae45c3b

僕のnoteにたびたび登場してもらっている中国人エリート君なのですが、彼とは政治であったり、国際情勢などについて話すことがよくあります。彼の方が何倍も豊富な知識を持っているので話を合わせるのが大変ですが、センシティブな話題が聞けることもあるので、いつも刺激的で楽しいです。

今日はそんな彼との会話の中から、印象に残っているものをトピックごとにいくつか抜粋して紹介してみたいと思います。

これが中国において一般的であるとか、みんながこのような考え方をもっているわけではもちろんないのですが、なんだか現代に生きる「普通の」中国人の若者が思っていそうなことが凝縮されていて、とても興味深い内容になりました。

では、ご覧ください。

 

台湾について

——台湾は中国の領土だと思う?

うーん…台湾が中国なのかどうかというより、中国側についた方がメリットが大きいと思うんですよ。なぜ台湾が中国と協調するのを拒否するのかがよくわからないんですよね。領土とか歴史的経緯がどうかということよりも、なぜ現実的なメリットを見ないのかと思っています。

——「メリット」というのは?

はっきり言えば、台湾はアメリカと中国の間で牽制に使われてますよね。特に安全保障上の問題で。アメリカの顔色をうかがうより、中国と協力するほうが台湾自身にとって絶対いいと思うんですよ。そうすれば、中国との軍事的な緊張の問題もなくなるわけだし。アイデンティティの問題とか、中国は制度的に自由がないとかいろいろ思うところはあるんでしょうけど、今は中国だって経済発展したし、素晴らしいところもたくさんあります。何を怖がってるんだろうと思いますね。

 

香港について

——香港のデモについてはどう思う?

体制に不満を持つ人が大規模で破壊的なデモを開いた、という認識です。日本の報道なんかを見てると(注:彼は日本語の勉強のために日本の映像ニュースを毎日見ている)、かなりひどい状態だったみたいですね。あんな風に暴力的な手段で何かを主張するのは良くないですよ。警察が強硬に押さえるしかなかったのは残念なことだと思います。平和が一番です。

——その後、国安法が適用されて、中国の影響力が強くなったよね。

そうですね。香港は(中国大陸に比べて)自由なところと思っていましたが、これまでのようにはいかないくなるかもしれませんね。でも、あんなデモのようなことが起こるのなら、自由が制限されてしまっても仕方がないと思います。

あと香港については、個人的にはちょっと勝手なんじゃないかと思ってるんですよね……香港の人は中国を見下しているかもしれないけど、自分たちは散々中国で商売をしてきたじゃないかって思うんですよ。それから中国が強くなってきて、対抗できなくなったからって自分たちに都合のいい部分だけを残そうとするのは、どうなのかなと思う時があります。

 

ウイグルに強制労働はあるのか?

——最近は新疆ウイグル自治区のことが話題だね。

なんですか、しん…? ああ、xinjiangのことですか。日本語は難しいですね(笑)。欧米が言っている、「強制労働」とか「ジェノサイド」とかの話ですね。

まず、新疆綿の収穫は機械化されていて、「強制労働」とか、ましてや「奴隷労働」なんてことはありえないですよ。「ジェノサイド」というのも、何を根拠に言っているのかあんまりわからないですよね。

アメリカのやり方って昔からそうです。自分たちの国の経済のために、大義名分を掲げて都合の悪い敵を攻撃するんです。ほら、イラクに大量破壊兵器なんてなかったじゃないですか? それと同じですよ。

——さあ……どうなんだろうね。ウイグル以外にも、中国は少数民族との間でいろんな問題が起こってるみたいだけど、それについては?

少数民族ですか。うーん……難しい問題ですけど、政府はよくやっていると思いますよ。少数民族の文化を残しつつ、経済的に彼らが困るようなことがないように頑張っていると思います。

中国政府が彼らに対して干渉することを、よく思わない国外の人もいるのはわかるんですけど……少数民族の中にはあまりにも野蛮で、前近代的な習慣や制度を残してしまっている人たちもたくさんいます。ある程度は、中国による教育とか指導が必要だと思います。そうじゃないと、経済発展なんて望めないと思いますし。少数民族のほうが進んで受け入れている部分もあると思いますよ。

 

コロナ対策とオリンピック

——中国のコロナ対策は、一定程度成功しているね。

そうですね。最初にたくさんの犠牲者が出て苦しい思いをしたから、今は何がなんでもコロナを流行させないようにしているのだと思います。

中国のコロナ対策は自由を制限しているからよくない、という意見があることも理解していますけど、全体として人命や経済を守るためだったら仕方ないんじゃないのかなと思います。自由のために、ワクチンが普及する前のアメリカみたいになっちゃったら、何にも意味がないですよ。いったいどれだけの人が犠牲になったのか……そういえば、日本はワクチンの接種は進んでいるんでしょうか?

——ようやく高齢者向けの接種が始まったくらい(注:この会話をしたのがちょうどそのくらいの時期)だね。中国みたいに、一般には広まってない。日本はまだ自分の国でワクチンを生産できないから、数の確保も難しいんだよ。

日本はなんで、中国のワクチンを使わないんでしょう?

——……さあ? どうしてだろうね。オリンピックとの兼ね合いもあるから、接種を急がないといけないのは事実なんだけどね。

オリンピック、本当にやるんですか……

——政府は絶対にやりたいみたいだね。よく知らないけど、放映権とかIOCとの契約とかで、そう簡単にやめるというわけにもいかないみたいだよ。

そういうの、日本のことわざにありますよね。えっと…行くのも帰るのも大変みたいな…なんだっけ?

——「退くも地獄、進むも地獄」かな?

そうそう、それです。

 

政府について

——コロナ対策も含めて、今の中国政府にはみんな満足している印象があるね。

そうですね。大きな不満はないと思うし、コロナの前からみんなの政府に対する評価は高かったです。やっぱり経済が良くなっているのは大きいですよ。それがうまく行っている間は、中国はこれからも安定して発展していくと思います。習近平は、毛沢東と同じような強いリーダーですね。中国にはどうしても、強いリーダーが必要なのだと思います。

——なるほど。そういえば習近平の国家主席としての任期が事実上撤廃されたことが気になっていたんだけど、そのことについてはどう思ってる?

問題ないと思いますよ、習近平がリーダーをやってる限りは。ただ……リーダーが習近平じゃなくなるときはいつか来るわけで、その時がちょっと怖いとは思います。

——それはなぜ?

なんていうんだろう…それまでまとまっていた国が、一気にバラバラになってしまうんじゃないか、という気はします。おっと、これはあんまり言っちゃいけないですね、ハハハ!

——そうだね、この話はここで終わりにしようか、ははは。

 

以上、いかがでしたでしょうか。

彼は日本語が堪能なのでほとんどの会話は日本語で行いましたが、日本語で話しているのがなんだか不思議になるような内容の数々でした。

繰り返しになりますが、これが中国人の平均的な意識というわけではなく、あくまで個人の思っていることに過ぎません。でも、そこには現代の中国「らしい」何かが透けて見えるような気がしました。

皆様はどのようなご感想を持たれたでしょうか。是非コメントなどお待ちしております。

 
執筆: この記事は華村@中国さんの『note』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2021年7月19日時点のものです。

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