他社と比較した、HISモバイルの価格について解説! 安さを実現した背景も
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旅行会社大手のHIS傘下で、日本通信との合弁会社であるHISモバイルは、新料金の「格安ステップ」を導入しました。
料金は1GBプランの590円から。音声通話料金額が30秒11円と同業他社の半額に抑えられているほか、月700円の「5分通話かけ放題」も提供されます。
同社は、2月に月額2178円で20GBのデータ通信が使える「格安弐拾プラン」を導入していましたが、格安ステップで、低容量から中容量帯を値下げした格好です。
料金プランは、1GB、3GB、5GB、7GB、10GBの5段階。金額はそれぞれ590円、790円、1190円、1490円、1790円です。あらかじめ設定したデータ容量を超えると速度制限はかかりますが、1GBを275円で追加可能。「ユーザーの9割近くが10GB以内に収まる」(代表取締役社長 猪腰英知氏)という総務省の調査に基づいた料金プランで、特に層の厚い1GBや3GBのプランはあえて「他社よりだいぶ安く設定した」(同)といいます。
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データ容量は1GBから10GBの5段階。それぞれの金額は上記の通りだ
実際、MVNOの業界2位であるOCNモバイルONEは、1GBプランが770円、3GBプランが990円で、低容量のプランではHISモバイルに軍配が上がります。IIJmioのギガプランとの比較でも、結果は同じ。お互いのデータ容量が異なりますが、HISモバイルが3GBで790円なのに対し、IIJmioは2GBで858円と、HISモバイルの3GBプランより高く設定されています。
逆に、10GBプラン同士では、HISモバイルが1790円なのに対し、OCNモバイルONEは1760円で価格は負けています。HISモバイルの10GBプランとIIJmioの15GBプランを比較した場合、1790円対1848円になり、価格はかろうじて下回っていますが、それ以上にデータ容量の差があり、特にデータ使用量の少ないユーザーがお得になることがわかります。
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競合他社と比較したとき、特にデータ容量の少ないプランが割安に設定されていることがわかる
同社は、親会社の1社である日本通信経由でドコモ回線を使用していますが、「日本通信と交渉した結果、価格的に強いものをお出しすることができた」(同)とのこと。データ通信料の接続料や音声卸の料金が下がったことを、ダイレクトに近い形で反映した価格。MVNOは数が多く、大小さまざまな規模の会社があるため「最安」と言い切るのは難しいところですが、「最安水準」を打ち出した1社と言えそうです。
もう1つの特徴が、冒頭で挙げたように、通話料が30秒11円と一般的なMVNOの半額に抑えられていることです。これも、同社が日本通信から回線を借りているため。一般的なMVNOは、ドコモから音声卸の形で音声通話の提供を受けていますが、この価格は30秒あたり15円程度に設定されています。その他のコストなどを乗せると、キャリアなどと同じ30秒22円に設定せざるを得ないというわけです。
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電話アプリの追加が不要で、料金は30秒11円
これに対し、日本通信は総務大臣の裁定を勝ち取る形でドコモとの交渉に成功し、音声卸の貸し出しコストを下げています。日本通信が直接提供する「日本通信SIM」では、3キャリア対抗をうたう「合理的みんなのプラン」や「合理的20GBプラン」に70分の無料通話を含んでいるほか、超過した場合も30秒あたり11円で通話ができます。この超過時の料金が、そのままHISモバイルにも適用されているということです。
他のMVNOも、アプリを介してプレフィックス番号をつけて発信することで、通話料を30秒11円程度に抑えることは可能です。一方で、アプリ電話は、着信から折り返す際に間違って通常の電話として発信してしまうトラブルもあります。そもそも、電話アプリを別途追加しなければならず、ハードルが少々上がり、使い勝手が悪くなってしまいます。
こうした課題を解決するため、回線を貸し出す側のキャリアが、「自動プレフィックス付与機能」と呼ばれるものを提供しています。先に挙げたOCNモバイルONEは、すでにこの機能を利用しており、通常の電話アプリから発信した場合でも、自動的に「OCNでんわ」になり、通話料も半額の30秒11円になります。大手キャリアの交換機側でプレフィックス番号を付与するため、アプリを使う必要がなくなるというのがこの機能の特徴です。
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OCNモバイルONEも、通話料は30秒11円。こちらは自動プレフィックス不要機能を使っている
とは言え、自動プレフィックス付与機能はまだ始まったばかりで、導入しているMVNOは限定的。そんな中、いち早く30秒11円の料金や700円での5分かけ放題を導入できたのは、HISモバイルの強みと言えるでしょう。同社は、「まだまだ数万回線の小さな事業者」(同)ですが、知名度の高いHISがバックグラウンドのMVNOなだけに、新プラン導入後の動向にも注目しておきたいところです。
(文・石野純也)
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