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米長永世棋聖「築いた万里の長城、穴が開いた」 電王戦敗北後の会見 全文

 プロ棋士対コンピュータ「将棋電王戦」の第1回戦が2012年1月14日おこなわれ、コンピュータ・ボンクラーズが日本将棋連盟会長の米長邦雄・永世棋聖を下した。対局後の記者会見では敗れた米長永世棋聖が「万里の長城を築きながら、そこから穴が開いて攻めこまれた」と自身の敗北を表現。1秒に1800万手を読むというボンクラーズに対して「手を読ませない」作戦で序盤は想定通りの展開だったとしたものの、終盤に相手がコンピュータであれば「取り返しのつかないうっかりミス」を犯していたことを明かし、悔しさを滲ませた。

・[ニコニコ生放送]将棋電王戦後、米長永世棋聖の会見から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv73267631?po=newsgetnews&ref=news#8:26:40

 男性プロ棋士が公式対局で敗れたのは初めてであり、歴史的な瞬間となった「将棋電王戦」。以下、記者会見で対局を振り返る米長永世棋聖の発言を全文書き起こして紹介する。

■「築いた万里の長城、穴が開いた」

司会: それでは対局者に本日の対局の感想を伺いたいと思います。米長永世棋聖お願いします。

米長邦雄・永世棋聖(以下、米長): 残念ながら負けてしまいました。将棋の中身について申し上げますと、私はボンクラーズに対する後手の最善手は「6二玉」ということに、私の研究では結論が出ました。プレ対局のときに「私が奇を衒った」というようなことを書いた(新聞)社もありますが、どうかそれはやめてほしい。それは6二玉という手がかわいそうなのですね。6二玉が悪いのではなくて、その後の私の指し方が良くなかったので。私が弱い、あるいはその後の作戦・読み筋が劣っていたということはどのように書いてもいいけれども、6二玉という手に失礼があるようなことは書かないようにしていただきたい。私の研究ではボンクラーズが76歩ときたときは、6二玉が最善手ということに決めておりました。

 序盤は、私は完璧に指したはずなのですけど、残念ながら私は途中で6五桂とはねられる手を見落としてしまったもので、万里の長城を築きながら、そこから穴が開いて攻めこまれたという結果になりました。それは私が弱いからであります。以上が私の感想というか、言い訳というか、発言でございます。

■1秒1800万手読むコンピュータに「手を読ませない」6二玉

司会: 続いて質疑応答に移らせていただきます。質問はございますか。

読売新聞・サイジョウ記者(以下、サイジョウ記者): プレマッチ後、初手6二玉が奇策だと書いたのは読売新聞なのですが、奇策ではないというのは具体的にどういうふうな考え方なのでしょうか。

米長: あなたのものの考え方ではわからないと思います。

サイジョウ記者: わからないから聞いているので・・・。

米長: そうですね。それではご説明致します。7六歩とつかれた時の最善手は6二玉と、これは(将棋ソフトの)ボナンザの開発者と密かにお会いしまして、その席で教えていただいた手なのですね。

 その後の指し方も、今日の将棋の序盤の金銀4枚密集した形のところまでが研究、こうなれば後はいけるという形なのです。今日のような形に、またこの次指したときなるかどうかは別ですけれども6二玉とあがって、振り飛車に対して銀を2枚並べて、そして相手の出足を食い止めて、おもむろに圧迫していくという、そういう作戦なのですね。

 ボンクラーズの1秒間に1800万手を読むという機械に対して、こちらのほうは手を読むというよりも、読ませないという作戦です。ですから、万里の長城を築いたというところが、築く第1手が6二玉だったのですね。

 ただし、これを技術的なことで説明しますと、1冊の本ができあがりますので、あとは(この後発売の)中央公論新社からの本を読んでいただきたいと思います。

■勝負の分かれ道となった2つの指し手

サイジョウ記者: 今日は具体的にどのあたりが疑問だったのでしょうか。

米長: 私の見落としは正直はっきり申し上げますと、飛車があっちへ行ったりこっちへ行ったりというところまでは、完璧に指し回しをしたはずなのです。しかし、重大なミスが出たのですね。

 それは指し手で申し上げますと、1番悪かったのはまた後なのですが、ちょうど80手目です。6六歩に対する同歩という手があったのですけど、その手では86歩、同歩と突き捨てて、7ニ玉と引いておけば優勢だったろうと思うのですね。

 その後どうなるかというと、当然指し手で申し訳ないのですけれども、6五歩、同桂となって、6六角と上がることになる。そこで同角、同銀、8六飛車と走ってしまおうと。そうすると優勢を持続できたのだろうと思います。

 人間相手なら間違いなくそう指したのですけれども、私はもっと安全に確実にというふうにずっと指していたものですから、それは切り替えができなかったのです。切り替えができなくて、私には致命的なミスが出たのですね。それは私が90手目いったときに、91手目7七桂とはねられて、私は重大なミスに気が付きました。それは、次に6六歩とつきましたけれども、その手では7四歩、同歩、同銀というふうにすれば、盤石の体制でほぼ試合終了だろうと思っていたのですね。

 しかし、その後7五歩とうたれまして、同銀左ととったときに65桂とはねられる手があるのです。6五桂とはねられる手を私はうっかりしたのですね。そのうっかりミスはもう取り返しのつかないうっかりミスで、それからその形になるとボンクラーズには勝てないということが私の勉強ではわかっていますので、あとはそのまま諦めたというところです。勝敗を分けたのはその2点です。

サイジョウ記者: ボンクラーズとの練習対局は何局くらい重ねたのですか。

米長: おそらく150局くらいだろうと思います。

サイジョウ記者: 勝率はどうだったのでしょうか。

米長: 勝率は1番最初に10月に機械を入れていただいた後、正直言って1手30秒で指しまして10連敗しました。1分将棋にしまして勝率1割。しかし、直近では4連勝していたのですね。ですから、だんだん弱点、長所も短所もわかってきていて、そして持ち時間を3時間にした将棋では1勝2敗です。

 ということで持ち時間が多くなって、そして相手の長所・短所をわかっていますので、今日の将棋はだいたい作戦通りうまくいったはずだったのですね。

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