完全新作『ゴジラ S.P』は怪獣の声にも注目!高橋敦史監督「分析されきっていないところがゴジラの面白さで魅力」ジェットジャガー登場の理由は?
日本を代表するキャラクターのひとつ「ゴジラ」の新たなプロジェクトとして始動した完全新作のTVアニメシリーズ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』が、4月1日(木)より毎週木曜22:30~TOKYO MX、KBS京都、BS11、24:00~サンテレビにて放送中、Netflixにて3月25日(木)から各週1話ずつTV放送に先駆け国内先行配信中(2021年全世界独占配信)!
これまでの映画などとはまったく違う、新たなオリジナルストーリー全13話のTVアニメシリーズとして展開する本作は、監督を『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』の高橋敦史氏、シリーズ構成・脚本を、日本を代表するSF小説家で芥川賞作家の円城塔氏が務め、TVアニメのシリーズ構成&全話脚本に自身初挑戦。
キャラクターデザイン原案は漫画『青の祓魔師』の作者・加藤和恵氏、怪獣デザインは『千と千尋の神隠し』など多くのスタジオジブリ作品に参加してきたアニメーター・山森英司氏が担当。音楽は『弱虫ペダル』シリーズや数々の『映画ドラえもん』を盛り上げてきた沢田完氏。アニメーション制作は、『僕のヒーローアカデミア』のボンズと、他とは一線を画すハイクオリティなCGアニメを制作するオレンジが手掛けます。
充実のスタッフとスタジオの手により、女性研究者の神野銘と男性技術者の有川ユンという2人の若き天才が、人類に訪れる未曽有の脅威に対して、周囲の人間たちと共に挑んでいく姿が壮大なスケールで描かれます。
・TVアニメ『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』PV第3弾/OPテーマ:BiSH「in case…」/毎週木曜TV放送中
https://youtu.be/xVv3kouh4is
本作について、高橋敦史監督に見どころやストーリー、話題になっている「ジェットジャガー」登場の経緯など、お話を伺いました。
今回は『シン・ゴジラ』や初代に近い、災害として現れるゴジラをイメージ
――『ゴジラ』シリーズの新作オリジナルアニメを制作することになった経緯を教えていただけますか?
高橋監督:まず、ボンズさんから「ゴジラをTVシリーズでやっていただきたい」と言われました。最初は“世界各国の代表的な怪獣たちとゴジラが戦う”みたいな話で作れませんか?という話などありつつ、ちょうど劇場版アニメ3部作の『GODZILLA』(17年)制作が始まっていたところだったので、関連した話を作れませんか?というオファーでした。
オファーをいただいてから、僕も『ゴジラ』シリーズをすべて観ていたわけではなかったので、全作を観て、思っていたものと違うところや、「やっぱりそうだったな」と子供の頃観たきりだった曖昧な記憶と繋げるなど、『ゴジラ』というものをまず把握する作業をしました。
そこから、「実際に新作をやるとしたらどうするのか。本当に各国の代表とゴジラを戦わせる話でいいのか?」とか、「ちゃんとSF作品として振り切ったものが面白いんじゃないですか?」となって、円城さんに構成から脚本をやってもらえるんだったら面白そうだと案をださせていただきました。
――今作の『ゴジラ S.P』は、日本の千葉を舞台に始まりますが、完全オリジナルということで、世界観やストーリーを教えてください。
高橋監督:今回はゴジラがまだみんなの前に現れたことのない世界で、例によってなぜか東京に上陸して大暴れするゴジラを、町工場の社員たちが大活躍して、なんとかして封じ込めようと奮闘する話になっています。それと同時に、大学院生の神野銘と男性技術者の有川ユンが一緒に謎を解いていきます。
――“アニメならでは”になっている部分はありますか?
高橋監督:やっぱり『ゴジラ』って“特撮ならでは”という魅力でやってきているじゃないですか。なので、逆にそこで描けなかったところというか、例えば怪獣の中に人が入らなければならないとか、特撮ってどうしてもカメラの大きさにも制限があるんですけど、そこが無くなったりしているところかな、と思っています。
――ゴジラのデザインも着ぐるみでは不可能な骨格にしたと山森英司さんからコメントがありましたね。
高橋監督:ゴジラだけじゃなく、ラドンなども登場するんですけど、昔だったら人が入れるような形にするところ、「人を入れるという制約がなかったら、本来こういうデザインだったんじゃないか」みたいな事を考えて作っています。
ただ、最近は『ゴジラ』も3DCGに切り替わっている作品もあるので、そこまで技法的な差は出ていないかもしれませんが、キャラクターの面白さはあると思います。例えば人間の登場キャラが、大きな2mくらいの高さのロボットから落ちても、ちょっと痛がるくらいだったりするところは、アニメだから大丈夫というか(笑)。
――今作の注目キャタクターは?
高橋監督:犬のキャラクターの「ペロ2」(CV.久野美咲)と四角いだけの「ユング」(CV.釘宮理恵)という2体のAIが出てくるんですけど、可愛くなったので注目していただければと思います。特に「ペロ2」が思った以上に久野さんの演技に引っ張られて、当初の予定よりすごく活躍しているので、楽しんでいただけると思います。
――ゴジラって圧倒的な恐怖の対象だったり、シリーズや時代によってヒーローっぽく描かれているときもありますよね。今作のキャッチコピーは『抗えない未来<ゴジラ>を覆せ』ですが、今回のゴジラのポジションはどのようなものになるのでしょう?
高橋監督:今回は、『シン・ゴジラ』(16年/第29作)だったり1作目に近い、災害として現れるほうのイメージになっています。あまり意思を感じないというか、吹き出しが出てきてコミュニケーションを取ったりなどはしないゴジラになります。
――また今回、町工場で作られたロボット“ジェットジャガー”が活躍します。ジェットジャガーは『ゴジラ対メガロ』(73年/第13作)に登場するロボットですが、そこまで認知度の高いわけではないロボットを、なぜ今作で登場させようと思ったのでしょうか?
高橋監督:例えば『シン・ゴジラ』は1作目のリスペクトで作られていたり、『ゴジラ』シリーズは過去作品のリメイクだったりリスペクトが多くある中で、メカゴジラなど何度も登場している怪獣がいると思うんですけど、そういうのをやろうとすると、大概もう何度もリメイクされてしまっているんですよね。ジェットジャガーはまだあまり触れられていないというのと、単純に僕が観てあの不思議な話が面白かったので(笑)。
多くの人は、まずジェットジャガーがタイトルの「メガロ」だと思うと思うんですよ。それで観ていくと「これがメガロじゃないんだ。そしてゴジラと戦うんじゃないんだ(笑)」となるじゃないですか。そんなところも含めて不思議で面白いなって。そういうものをちょっとリスペクトしたところがあったほうが面白いかな、と考えて取り入れました。
でも、ジェットジャガーが出たことがこんなにウケるとは正直思っていなかったです。そもそも今まで誰も触れてないわけですから(笑)。狙って登場させているというよりは、お話の構成上、何か町工場で作っているロボットがあって、そいつと戦うとかどうですか?みたいな話の中で、「じゃあ、ジェットジャガーというロボットがいるので、それが面白いんじゃないか」というところから決まりました。
――『ゴジラS.P』に触れるにあたり、ジェットジャガーを知るために『ゴジラ対メガロ』を観たのですが、すごいとんでもない作品で、私はとても面白かったです。世間的には賛否両論ある作品ですが、現代の人にウケそうですよね?
高橋監督:そうですよね。デザインもちょうど2周くらいまわって今の感じにハマっていると思います。原色のビビッドな色使いやジェットジャガーを開発している博士の家もオシャレじゃないですか。なぜかカーアクションだったり、東京とは思えない風景が広がっていたり、巨大化したり……、でもなぜか観ちゃう、という面白さがあります。
――ツッコミどころ満載なので、ネットユーザーは好きそうです。めちゃくちゃ動いて戦うゴジラの姿も衝撃的でした。
高橋監督:『シン・ゴジラ』で今まで『ゴジラ』シリーズにあまり触れていなかった人や帰ってきた人たちが増えたと思うのですが、やっぱりシリーズを改めて観て、ゴジラのキャラが“安定していないところ”にインパクトの大きさを感じました。ものすごい悪い怪獣として現れる作品のほうが実は少なくて、みんなの味方として登場する作品も多いので、なかなか不思議な存在ですよね。
・「ゴジラ対メガロ」 | 予告編 | ゴジラシリーズ 第13作目
https://youtu.be/OBHgwl1cb4A
――ゴジラってひと括りに言っていいものなのか、と思います。
高橋監督:難しいですよね。人類の敵だったりするし、味方だったりもするので、「ゴジラとはこうあるべき!」みたいな制約がなくて。じゃあデザインなのか?と言ったら、ハリウッド版だったり、ゴジラのデザインも結構変わってきている。それでいて、「ゴジラはこうじゃなきゃダメだ!」というファンの方たちも結構いて、全員違うことを言ったりする(笑)。
――それでも『ゴジラ』という1つの同じ名前のコンテンツとして有り続けているというところがすごいですよね。
高橋監督:そこが『ゴジラ』の許容量というか、懐の深さというか……。分析されきっていない、言語化されていない、というのが面白さで魅力なんだと思います。
――観ていなかった『ゴジラ』シリーズを観ていこうと思い、たくさん怪獣が出てきそうな『ゴジラ FINAL WARS』(04年/第28作)を観たら、なんだかまた『ゴジラ対メガロ』を観ているような感覚になって(笑)。むしろ『ゴジラ』はその路線が王道なのかな?と思ったり。
高橋監督:すごい順番で観ましたね(笑)。でも、そうなんですよ。本来は『シン・ゴジラ』と同じ1作目の路線がゴジラの登場なんですけど、怪獣がいっぱい出てきてプロレスするというイメージの人もかなり多くいて。プロレスが流行っていた時代というのもあり、つい“タッグマッチ”という言葉に興奮してしまう時代だったので、そういう時代を表している存在だとも思います。
怪獣の声にもこだわり「最近の人は聞かない音だと思う」
――今回、アニメに登場する怪獣はどこからピックアップしているのでしょうか。
高橋監督:『ゴジラ』を知っている人が観てどの怪獣が出てきたら嬉しいか、というのと、並べたバランスを見て似ていない怪獣を意識して、被らない感じで選んでいます。
――今作の注目してほしいところや、こだわった部分を教えてください。
高橋監督:円城さんのセリフをどう映像で見せていくか。そもそも映像化不可能と言われている作家さんの文章を映像化していくというところで、やっぱり脚本以前の上がってきたテキストでめちゃくちゃ面白いんですよね。また今回、かなり特殊な作りをしていて、3DCGを使っているカットの量もかなりありますし、円城さんが書く脚本のセリフ量もすごいので、普通のアニメーションともだいぶ違っていると思います。
――音楽も特徴的で、まさに『ゴジラ』の映画音楽が多彩に使われていてテンションが上がります。
高橋監督:音楽の沢田さんとは、昔のノスタルジックな感じをなるべく再現するというか、リスペクトしていくスタイルでいきましょう、と話しました。元々、美術や風景もノスタルジックな昭和のイメージで行こうと言っていたので、それを音楽でも出せませんか?とお願いしました。
そして怪獣の声も、今どき加工せずにシンプルな電子音みたいなものになっています。今、プロの人に任せると、もっと複雑な生き物の声を混ぜたりして情報量を増やした音を作ってくると思うんですけど、そこは踏みとどまっていただいて、昔の電子音が鳴っているような感じにしています。
――最初のラドンの超音波のような鳴き声からインパクトがあるなと感じました。
高橋監督:最近の人は聞かない音だと思うんです。昔の『ゴジラ対メガロ』もそうですけど、音の面でも「あ、こんな音が鳴るんだ」と今聞くとインパクトを感じる部分があると思います。人類がシンセサイザーとか電子楽器を手に入れて嬉しかった時代というか(笑)。少し前だと古い感じを取り入れるとダサいと言われてしまう恐れもあったんですけど、それが2周くらいまわって今は良い感じに映ると思うので、そこをわかっていただけると嬉しいですね。(キービジュアルである)ポスターもちょっと昔っぽくしましょう、と意識して加工なども入れていただいています。
――今作をどんな人に観ていただきたいですか?
高橋監督:東宝さんからは「『シン・ゴジラ』で増えた、今までゴジラを観ていなかった若い層に観てもらいたいんです」というオファーだったので、一応そういうつもりで作っています(笑)。
――1話、2話を観て気になった人に向け、今後の展開について教えていただけますか? まだ謎が多すぎて!
高橋監督:最初はまだ日本の千葉だけで起こっているんですけど、徐々に世界的な規模の話になっていきます。今までのシリーズの人気怪獣たちもちょいちょい現れて、ゴジラが出るまでを楽しませてくれるんじゃないかなと思います。
――『ゴジラ』シリーズをあまり知らずに、今作を観て興味を持った人にオススメする作品は?
高橋監督:やっぱり1作目ですね。1作目と『シン・ゴジラ』はやっぱり一番面白いです。その後は、『キングコング対ゴジラ』(62年/第3作)や『ゴジラ対ヘドラ』(71年/第11作)など聞いたことのある有名タイトルをかいつまんで観ていくのがいいと思います。あとは、1回復活してからのシリーズとかも全然ノリが違ってきていたりするので、なかなか捉えどころがないシリーズですね。『シン・ゴジラ』は皆さん観ているであろうという前提で、まず1作目を観ていただいて、あとはやっぱり話題になっている作品は面白いので楽しめると思います。
――ジェットジャガーが大活躍する『ゴジラ対メガロ』も、ぜひ観ていただきたいです! では、『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』の今後の放送を楽しみにしています!
・ゴジラS.P 第3話予告/4月15日(木)22:30TOKYO MX,BS11他テレビ放送/Netflix先行配信中
https://youtu.be/0uouJLUupgU
・『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』オープニング映像/OPテーマ:「in case…」BiSH/毎週木曜テレビ放送中
https://youtu.be/mBlPuHK7W-4
・『ゴジラ S.P<シンギュラポイント>』エンディング映像(ノンクレジット)/EDテーマ:「青い」ポルカドットスティングレイ/毎週木曜テレビ放送中
https://youtu.be/MBfEYXwqrnA
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https://getnews.jp/archives/2960582
TVアニメ『ゴジラ S.P <シンギュラポイント>』
4月1日(木)放送開始
毎週木曜22:30 TOKYO MX、KBS京都、BS11/毎週木曜24:00 サンテレビ
3月25日(木)Netflix国内配信開始
各週テレビ放送から1話ずつ先行配信(2021年全世界独占配信)
<スタッフ>
監督:高橋敦史 シリーズ構成・脚本:円城塔 キャラクターデザイン原案:加藤和恵
キャラクターデザイン:石野聡 怪獣デザイン:山森英司 音楽:沢田完
CGディレクター:池内隆一・越田祐史・鈴木正史 VFXディレクター:山本健介
軍事考証:小柳啓伍 美術デザイン:平澤晃弘 美術監督:横松紀彦 色彩設計:佐々木梓
撮影監督:若林優 編集:松原理恵 音響監督:若林和弘
オープニングテーマ:「in case…」BiSH
エンディングテーマ:「青い」ポルカドットスティングレイ
アニメーション制作:ボンズ×オレンジ 製作:東宝
<キャスト>
神野銘:宮本侑芽 有川ユン:石毛翔弥 ペロ2:久野美咲 ユング:釘宮理恵
加藤侍:木内太郎 大滝吾郎:高木渉 金原さとみ:竹内絢子 佐藤隼也:阿座上洋平 山本常友:浦山迅 鹿子行江:小岩井ことり
海建宏:鈴村健一 李桂英:幸田夏穂 マキタ・K・中川:手塚ヒロミチ ベイラ・バーン(BB):置鮎龍太郎 リーナ・バーン:小野寺
瑠奈 マイケル・スティーブン:三宅健太 ティルダ・ミラー:磯辺万沙子 松原美保:志村知幸
<ストーリー>
2030年、千葉県逃尾市。
“何でも屋”な町工場「オオタキファクトリー」の有川ユンは、誰も住んでいないはずの洋館に気配がするということで調査へ。
空想生物を研究する大学院生の神野銘は、旧嗣野地区管理局“ミサキオク”で受信された謎の信号の調査へ。
まったく違う調査で、まったく違う場所を訪れた見知らぬ同士の2人は、それぞれの場所で同じ歌を耳にする。
その歌は2人を繋げ、世界中を巻き込む想像を絶する戦いへと導いていく。
孤高の研究者が残した謎、各国に出現する怪獣たち、紅く染められる世界。
果たして2人は、人類に訪れる抗えない未来<ゴジラ>を覆せるのか―。
ゴジラS.P公式HP: http://godzilla-sp.jp ゴジラS.P公式twitter: http://twitter.com/godzilla_sp
オレンジ公式twitter: https://twitter.com/cg_orange_inc
(C)2020 TOHO CO., LTD.
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