AI研究の第一人者が語るDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
4月7~9日に、東京ビッグサイト青海展示棟において、日本最大規模のAI専門展「第5回 AI・人工知能EXPO【春】」が開催された。9日には、東京大学大学院教授である松尾豊氏が、講演を行なった。
松尾教授は日本におけるAI研究の第一人者であり、日本ディープラーニング協会理事長も務めている。日本におけるAI研究の第一人者である松尾教授の研究室からは、グノシーをはじめとする様々なベンチャーが生まれたことでも有名だ。
先端技術でビジネスを新しくするのがDX
その松尾教授による講演は、まずディープラーニングの活用事例の紹介からスタート。製造、農業、水産業、エンタメなど、様々な分野でディープラーニングは活用されているという。
たとえば、日立造船のAI超音波探傷検査システムは、これまでは目視で行なっていた検査の効率と精度を大幅に向上させ、2020年にはディープラーニングビジネス活用アワードの大賞も受賞しているとのことだ。
今回の松尾教授の講演のタイトルは「DX時代のAI(ディープラーニング)活用最前線」であり、DXについても詳細に語られた。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」の略称である。
デジタルトランスフォーメーションを簡単に説明すれば、先端技術を活用してビジネスモデルを新しいものへと変革させることだ。松尾教授の講演の中で、DXのプロセスの中に「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」という過程があると解説された。
デジタイゼーションとは、アナログをデジタルに変えることである。たとえば、紙ベースだった資料をデータベース化することなどが、これにあたる。
一方でデジタライゼーションとは、デジタル技術によってビジネスの付加価値を向上させることなどを意味している。このデジタイゼーションとデジタライゼーションを経てDXが行われるのだ。
講演では、DXの具体的な事例としてタクシー業界のケースが挙げられた。まず、デジタイゼーションの段階では、タクシーの位置情報がデータ化される。デジタライゼーションの段階では、従来は無線で行われていた配車サービスが位置情報のデータ化によって格段に効率化される。この流れで生み出されたのが、アメリカの送迎サービス「Uber」である。
松尾教授は、日本企業はデジタイゼーションからデジタライゼーションへと一歩ずつステップを踏んでいくが、アメリカではいきなりUberのようなサービスが生まれることもあると語った。
テキストから画像を生成するAIも登場
DXは、このようにビジネスに変化をもたらすが、そのDXにおいて中心的な技術となるのがディープラーニングを含めたAIだ。
講演の中では、AIの最新技術のトレンドとして、テキストからの画像生成も紹介された。「チュチュを着た赤ちゃん大根が犬を散歩させているイラスト(an illustration of a baby daikon radish in a tutu walking a dog)」や「アボカドの形をしたイス(an armchair in the shape of an avocado)」などの言葉から、まるで人間が描いたかのようなイラストがAIによって作られるのだ。
このようにディープラーニングとAIの技術は飛躍的に進歩し続けている。その進んだAIの技術によるDXで、今後も多くの分野で新しいビジネスチャンスが生まれることだろうと感じさせる講演だった。
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