昨年から続発!「プレミア価格のロレックス」強盗に遭遇してしまった男性に話を聞いた
どうも特殊犯罪アナリストの丸野裕行です。
筆者はヴィンテージROLEXの投資術や遊び方などをレクチャーする記事については、普通のライターとして執筆していますが、なんとそのアンティークのロレックスを狙った強盗が続発しているそうなのです。 今回は特殊犯罪アナリストとしてこの事件を読み解いていきたいと思います。
【連載】『シリーズ:オトナの時計投資』
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ネットオークションやフリマアプリで、プレミア価格で売買されるヴィンテージロレックスを狙う強奪事件は、昨年末あたりから徐々に増加し、なんと逮捕者の中には高校生も含まれていました。
手口は簡単なもので、一定以上の価値のあるヴィンテージROLEXを出品しているコレクターに、ダイレクトメールで接触し、人気のない駐車場などで待ち伏せして、そのまま襲って強奪するという卑劣なもの。
今回は、ロレックスコレクターの伊藤順二さん(仮名/48歳)が実際に遭遇してしまったロレックス強盗事件について、お話を聞きました。
今年に入ってから多発しているロレックス強盗
昨年12月、仲間と共謀してネットオークションに、6,000万円で“ヴィンテージROLEX”を出品していた会社員男性に、「実際に実物を見せてほしい」などと神奈川県川崎市の駐車場に呼び出して、襲いかかった事件では、滋賀県在住の20歳会社員と東京都内在住の19歳大学生が逮捕されています。
警察は、この事件に関しては非常に根が深く、組織的な犯行なのではないかと指示役を捜しているとのこと。6,000万円のロレックスに関しては、男性が腕に巻いていて無事でしたが、犯人たちが奪ったバッグの中に時価900万円相当の他のロレックスが入っていたというのです。
ロレックスなど、およそ1,800万円相当を奪ったのは、2人の高校生だった。
さらに愛知県名古屋市在住の17歳男子高校生の2人は共謀し、今年の1月東京都港区にある駐車場で、39歳会社員の男性を羽交い絞めにし、殴る蹴るの暴行を加え、約1,800万円のアンティークROLEXを2点奪った疑いとのこと。
被害男性は、事件が起こる数ヵ月前にネットオークションにロレックスを出品。「その時計に興味がある」と連絡をしてきた男から「現物が見たい」と頼まれ、指定場所で待機していたところを襲われたそうです。警察の調べに対し、高校生2人は容疑を認めましたが、被害男性に連絡した人物は特定されてはおらず、警視庁はやはり組織的な犯行の可能性があるとみて捜査しています。
なぜこのように、ヴィンテージロレックスばかりが狙われることになったのか。その真相については、ロレックス強盗に遭遇した男性の話を聞いてからお話しましょう。
高額プレミア商品を保有していることが一目同然のネットオークション
丸野(以下、丸)「どういった経緯で直接会うことになったんですか?」
伊藤さん「ネットオークションにロレックスデイトナRef.116505を出店していたんですが、そこに載せていたInstagramのDMに直接メッセージがきまして、“購入を考えている”“値引きはしなくていい”などと書き込まれていました。自己紹介も書いてありまして、某IT企業の重役と名乗っていました。“ずっと探していたロレックスだ”と。やりとりしていても意外にロレックスのことに詳しいので、すっかり信頼しましたね。保有しているアンティークROLEXの画像も送ってきたり……」
丸「そりゃ、信用しちゃいますよね」
伊藤さん「はい。すっかり心が開いてしまって……。それで、“実際に現物を見せてほしい。状態も気になるし、ギャラ(ギャランティーカード=ロレックス社が出した保証書)の確認もしたい”と。この流れって、至極当然のことなんですよ。コレクターやマニアにとって各部のディテールや状態は写真だけではわからないものですから」
丸「中古車でもそうですもんね。しかし、ネットオークションを見れば、誰が高額のプレミア品を持っているか、一目瞭然ですね。不特定多数の人間が知っているって怖いことです」
駐車場で待っていたものは……
伊藤さん「で、“都内の〇〇駐車場に来てほしい。車の中でじっくりと確認したい”と言われまして。でも、正直初対面で2人っきりというのもねぇ。だから、“人が多くいる場所で確認してもらえませんか?”と。すると“あんな稀少なもの、人の目に触れると危ない”だの“その場で現金購入したときに後をつけられたらどうするんだ。責任が取れるのか?”だのとヤケに粘る」
丸「人がいるところだと、タタキ(強盗)はできないですもんね(笑)」
伊藤さん「でも、やっぱり欲があったものですから、“わかりました”と承知してしまって……。その駐車場に愛車で向かうとあたりは真っ暗。閉店後の商業施設の駐車場でした。目印は真っ白なベントレー。寒かったもんですから、早く来いとだけ願ってました。すると、突然頭に衝撃が。頭を押さえながら振り返ると、3人の黒ずくめの男たちが立っていて、みんな黒ずくめで深々と帽子をかぶり、手には鉄パイプのようなものを持っていました。それが何度か振り下ろされたんですが、僕は小心者でもボクシングをやっていまして、鉄パイプの鈍い動きが動体視力で見えるんですよね。眼も慣れてくるし」
丸「とんでもない人を襲っちゃいましたね(笑)」
伊藤さん「広い駐車場なんで、逃げ回れるんですよね。僕は走り込みをやってますし。で、3人が散り散りバラバラになったところで拳を突き出しました。1人はその場でのびて、2人は戦意喪失というのか、動きが鈍くなって。それで車に乗り込んで、連中の方に突っ込んでいくと、逃げまわってましたね。次の日に“なぜ昨晩来なかったんですか?”というDMが入ってました。“何かあったんですか?”というので、かくかくしかじか書いて送ると、“場所を変えましょう! ぜひ見せてください”としつこくメッセージを送ってきて……」
丸「もういいって(笑)」
伊藤さん「一応警察に届けましたが、ヴィンテージROLEXも盗られなかったし、よかったなと。捜査を続けているかどうかはわかりません」
半グレが関与しているのか?
最近、《#腕時計 #ロレックス狩り #警戒してください #ロレックス強盗 #ネットオークションで強盗目的 #直接取り引き #麻布警察署 #高校生 #路上強盗 #犯罪組織の末端》というハッシュタグを見かけました。値打ちがあるヴィンテージのROLEXがイメージに反するカタチで世間に知られてしまったわけです。
しかし、冒頭でお伝えした2つの事件ですが、「実際にロレックスを見せてほしい」といった主犯は誰なんでしょうか? ひとつ可能性があるとすれば“半グレ”の存在です。20歳会社員と19歳大学生は面識がまったくなく、“闇バイト”などで知り合った可能性が高いといいます。“闇バイト”は半グレにとっての捨て駒集めの常套手段です。
さらに、金に変わる価値のあるもの、値段が跳ね上がったプレミア品を狙う。それを奪って売り払えばいい。この考え方は、半グレにしかない発想です。さらに、半グレは高級時計や高級車が好きで詳しいのもあります。今後は、エルメスのバーキンやケリー、クロムハーツ、すべてのブランドの限定品なども標的にされる恐れがあるわけです。
一時期、秋葉原のオタクたちを狙った闇金融もありました。高額のフィギュアを担保に金を貸すというものです。これは、暴力団系の闇金融業者が編み出した悪知恵ですが、“担保に預かる”という筋の通り方と、半グレの“奪い取る”という短絡的な犯行は、まったく違うわけです。
警視庁は未だ捜査をしているようなので、「一体誰が黒幕なのか」の真相をしっかりと明かしてほしいと思います。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)
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