2021年の「住みたい街」、埼玉県が大躍進!コロナ禍で目覚めた地元愛?
リクルート住まいカンパニーでは、 関東圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している20歳~49歳の7000人が回答した「SUUMO住みたい街ランキング2021 関東版」を発表した。調査時期が2021年1月のコロナ禍であるが、ランキングに変動はあったのだろうか?【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2021 関東版」を発表/リクルート住まいカンパニー
コロナ禍の住みたい街ランキング2021は、「横浜」が無敵の強さを見せる
さて、2021年の住みたい街(駅)ランキングの結果は、1位「横浜」、2位「恵比寿」、3位「吉祥寺」とTOP3は4年続けて同じ顔触れとなり、安定した人気を誇る結果となった。なかでも、横浜は各世代・各ライフステージから幅広い支持を集め、得点で2位以下を大きく突き放す強さを見せた。
住みたい街(駅)総合ランキングトップ20(関東全体/3つの限定回答)(出典:リクルート住まいカンパニー)
コロナ下の調査ということで、筆者はランキングに変動があるかどうか気になっていた。というのも、コロナ下では郊外の街に人気が出ているという話題が多く、郊外の街で躍進があるのではないかと思っていたからだ。
しかし、ランキング上位に大きな顔ぶれの変動はなかった。複数路線が利用できるターミナル駅が上位に並び、にぎわいや利便性の高い街が顔をそろえたという印象だ。とはいえ、今回のランキングで注目したい点もある。近年着実に順位を上げている「さいたま新都心」や20位以内に躍り出た「舞浜」、「桜木町」など、埼玉県や千葉県、神奈川県の人気の街が、ランキングを上げている点だ。前年20位以内からランキングを下げたのは、「二子玉川」と「赤羽」なので、3県の人気の街が東京都の街を抑えたわけだ。
ほかに、2020年では得点60点未満のためにランキング圏外だった街で、2021年にランキングに入った街にも注目したい。85位の「逗子・葉山」、116位の「志木」、129位の「本郷三丁目」、132位の横浜「山手」、136位の「大森」、138位の「根津」、141位の「聖蹟桜ヶ丘」、同「ふじみ野」、147位の「朝霞台」、150位の「西日暮里」、155位の「ユーカリが丘」、160位の「蒲田」、同「中央林間」、163位の「武蔵小金井」、170位の「菊名」だ。
広域での知名度がやや低くちょっと地味な印象があるが、住み心地がよい街が見直され、数多くランキングに入ってきたということだろう。ちなみに、新駅「高輪ゲートウェイ」は64位だった。
自虐で知られる埼玉県の街が、住み心地のよさで躍進の気配
前年のランキングでは、「大宮」、「浦和」、「さいたま新都心」のさいたま市中核エリアの躍進が注目された。2021年でも、さいたま市中核エリアの躍進が続いたことに加え、33位の「和光市」、34位の「川口」、44位の「所沢」が過去最高順位を記録するなど、埼玉県勢が大躍進を見せた。
SUUMO編集長・池本洋一さんがランキングの記者発表会で説明したところによると、1都4県全体や埼玉県民から「埼玉票」が集まったからだという。特に注目したいのは、これまでは自県以外に投票していた埼玉県民が、自県にこれまでより多く投票したことだ。
埼玉県民が自県に投票した比率を見ると、過去4年で最高の55.4%に達している。その一方で、東京都民が自都に投票した比率は過去4年で最低の84.0%だった。埼玉県民が自県を見直して投票したのに対して、東京都民の票は他県に流れたというわけだ。
自県から自県への投票を集計した比率(出典:リクルート住まいカンパニー)
さらに、池本さんの分析によると、「その街を魅力的だと思う」項目で、浦和やさいたま新都心、川越では「街の住民がその街のことを好きそう」が、さいたま新都心や和光市では「人からうらやましがられそう」が、上昇したが、これらの項目は埼玉県民が東京都の街を選ぶ際に上位になる項目だという。
つまり、以前は東京都の街に憧れとして感じていた魅力を自県の街に感じるようになった、といった変化が起きて、自県の街に投票したと考えられるわけだ。
地元に長く滞在し、改めて住み心地のよさを感じるなど、コロナ禍による変化という側面もあるのかもしれない。埼玉県といえば、過激な「埼玉ディスり」で話題を呼んだ映画『翔んで埼玉』が思い浮かぶ。タモリが「ダサイタマ」という表現を広めたのに始まり、筆者の好きな落語でも三遊亭円丈師匠が「悲しみは埼玉に向けて」という新作落語を作ったりと、自虐ネタで知られる埼玉だが、どうやら埼玉県民は、自県をリスペクトするようになったようだ。
コロナ禍を受けて「理想的な街」に求めるのは、医療施設の充実
また、ランキングでは「今後の注目される街」も発表され、「錦糸町(東京都墨田区)」、「聖蹟桜ヶ丘(東京都多摩市)」、元住吉(神奈川県川崎市中原区)」となった。
これらの街が上位に選ばれたのは、コロナ禍の変化が関係している。「新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、回答者にとっての理想的な街の条件が変化した度合い」を「とても意識するようになった」~「ほとんど意識しなくなった」の5段階評価で尋ね、「とても意識するようになった」と「やや意識するようになった」の回答率の合計で、理想的な街の条件のランキングを行ったところ、次のような結果になった。
コロナ影響による「理想的な街」への意識変化TOP10(関東全体/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー)
1位は病院や診療所などの「医療施設の充実」だ。コロナ感染者が入院できずに、自宅療養を強いられた事例が多かったことなどが影響しているのだろう。次に、「一回の外出で複数の用事を済ませられる」、「歩ける範囲で日常のものはひととおり揃う」、「徒歩や自転車での移動が快適だ」など、地域の暮らしの利便性を重視する項目も上位に挙がった。一方、憧れ系の項目は下位になった。
なお、記者発表会では、俳優の磯村勇斗さんやタレントの若槻千夏さんも登壇した。緑の丸っこいSUUMOくんも応援に表れ、いつも緑のネクタイをしている池本さんに色を添えるように、ゲストの二人も緑のファッションでご登場。
埼玉県出身の若槻さんは、「大宮が目黒の上に来た」、「ランキングに埼玉の多くの街が入っている」と埼玉躍進に喜びを見せた。また、今住んでいる「渋谷」の魅力についても語った。一方、磯村さんは井の頭公園や美味しいカレー屋がある「吉祥寺」に注目し、「スーパーが近くにあるか」「落ち着けるカフェがあるか」などを住みたい街の条件にしていると語った。
また、サウナアンバサダーをしている磯村さんには、池本さんが自然豊かでグランピングもできる「飯能」をおススメしていた。
さて、2021年のランキングの結果は、前年のランキングと大きく変わったという印象はあまり受けなかった。しかし、コロナ禍というまれな事態を経験したわれわれは、間違いなく今後住む街を選ぶ際の見方を変えるだろう。これからのランキングにそれが表れるのかどうか、来年のランキングにも注目したい。
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