実は「日本語がペラペラ」だった韓国の大統領

実は「日本語がペラペラ」だった韓国の大統領

韓国の大統領は、実は日本語がペラペラだった。

と言っても、現在の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の話ではない。最近、YouTubeで金大中(キム・デジュン)元大統領が野党政治家時代に記者会見したときの動画を見つけた。20秒足らずの、安全保障に関する断片的な言葉を収めただけのものだが、彼が日本語で、政治について十分に深い議論ができたであろうことをうかがわせるものだ。

動画:「安保というのはですね…」流ちょうな日本語で記者会見する金大中氏

金大中氏だけでなく、日本の統治下で教育を受け、成人した朴正煕(パク・チョンヒ)、金泳三(キム・ヨンサム)の両元大統領も日本語が堪能だった。

3人のうち、いちばん先に大統領になった朴正煕氏が、軍事クーデターで実権を握ったのが1961年5月。金泳三政権をはさみ、最後に大統領になった金大中氏の任期は2003年2月24日までだった。途中、日本の話せない大統領の時代もあったが、実に40年以上にもわたり、韓国政界の指導的位置に、韓国語と日本語のバイリンガルが君臨していたのである。

世界最大の「日本専門家」集団

しかしこの3人をはじめ、日本語の流ちょうな解放前世代の政治家は多くが鬼籍に入った。そしてその後、状況は激変した。

現在は韓国の政界から官界までを見渡しても、日本語の話者はごくごく少数派に過ぎないだろう。

文在寅大統領は今月1日、日本による植民地支配に反対し朝鮮半島の民衆が立ち上がった「3.1独立運動」の102周年式典で演説し、「日本との対話の用意はできている」と呼びかけた。だが周知のとおり、日本政府は徴用工判決や従軍慰安婦問題で韓国が「適切な対応」をするよう求める原則論で応じ、事実上、文在寅氏のメッセージをスルーした。

果たして文在寅氏が、日本との関係修復にどれだけ本気なのかは不明だ。しかしこの件に限らず、日本に向けた韓国からのメッセージは、日を追うごとに空虚さを増しているように感じる。さらに言えば、筆者も日本語と韓国語のバイリンガルだが、この空虚さを韓国側に伝えようとしても、聞き入れてくれる素地すらないように感じられてもどかしい。

思えばかつての韓国は、世界最大の「日本専門家」集団だった。朝鮮半島を併合、支配した大日本帝国は現地で日本語教育を行い、その時代に育ったエリートの多くは日本の大学に留学した。出世を夢見るなら日本語能力と、日本語による知識が必須だった時代があったわけだ。

一方、日本人にとって朝鮮語(韓国語)は必須ではなく、一部の専門家が理解できれば十分だった。それでも、朝鮮半島を支配下に置いていた時代には、その専門家もそれなりの数に上ったろう。しかし敗戦とともに、その必要性も急激に薄れた。

冗談も日本語で

ちなみに、朝鮮半島の北半分、つまり現在の北朝鮮はどうか。

北にも日本語の堪能なエリートはいたが、共産主義体制が成立したことで日本との交流ほとんど途絶え、エリートが日本語を駆使する場面もほとんどなかった。また、北部出身で日本に留学したエリートの一部は、朝鮮戦争と前後して南に逃れた。

さて、日本語の堪能な韓国の政治家と、韓国語のわからない日本の政治家の対話や交流が、どのようなものであったか想像してみて欲しい。韓国の政治家は、日本の新聞や書物を読んで予備知識を備えることができる。日本の政治家も独力ではできないが、専門家の助けを借りれば同じようなことができる。

面談の場ではどうか。料亭などの会食の場に、日本側は念のため、通訳を帯同していたとしよう。それでも、たとえば2対2とか3対3とかの複数で対座した場合、ひとりやふたりの通訳がすべての会話をフォローするのは不可能だ。しかし韓国側は、日本側のすべてのやり取りを自分の耳で拾うことができる。

また1対1で会った際には、両者はほとんど言葉の壁を感じずにコミュニケーションが可能だ。冗談も言い合えば、お世辞を言うこともあるだろう。相手が乗り気になっているときの言葉遣いや、逆に消極的な場合のサインも拾うことができる。

間違いなく、ある時代までの日韓の政治には、こういう場面が存在したのだ。

いま両国の間で、ねじれにねじれている問題のうちのいくつかも、こうしたコミュニケーションの中であいまいになったり、先送りされたりした部分があったのかもしれない。

端的に言うなら、かつての日韓政治には他人のようで他人でない部分があったわけだ。

(参考記事:日韓関係の影響はあるのか? 大人気のコリアンタウン・新大久保を歩く 政治家たちの失策に現場は何を思う)

しかし今や、韓国でも日本でも、お互いの言語はエリートのキャリアパスに必ずしも必要なものではなくなっている。新型コロナウイルスの流行以前には双方から膨大な数の観光客が行きかったが、その過程で生まれた小さな交流をすべて束ねても、濃密だった時代の日韓政治で交わされた情報量には及ばないのではないか。

日韓はこうして今、過去100年ほどの間で最も疎遠な時代を迎えたと言えるのかもしれない。


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TABLOとは アメリカが生んだ、偉大な古典ミステリーの大家レイモンド・チャンドラー作品の主人公フィリップ・マーロウの有名なセリフがあります。 「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない」 人が生きていく上で、「優しさ」こそ最も大切なものであることを端的に表現した言葉です。優しさとは「人を思いやる気持ち」であり「想像力を働かせること」です。弱者の立場に立つ想像力。 「人に優しく」 これは報道する側にも言えることだと思います。 現在、ヘイトニュース、ヘイト発言、フェイクニュースがネットの普及に従い、増大しており、報道関係者の間では深刻な問題となっています。そこには「人に優しく」という考えが存在していません。 なぜ、ヘイト(差別)ニュースがはびこるのか。「相手はどういう感情を抱くのか」という想像力の欠如がなせる業です。ヘイトによって、人は人に憎悪し、戦争が起き、傷ましい結果をもたらし、人類は反省し、「差別をしてはならない」ということを学んだはずです。 しかし、またもヘイトニュースがはびこる世の中になっています。人種差別だけではありません、LGBT差別、女性差別、職業差別等々、依然としてなくなっていないのだな、ということは心ある人ならネットの言論にはびこっていることに気づいているはずです。本サイトはこのヘイトに対して徹頭徹尾、対峙するものです。

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