コロナ禍の2020年、首都圏の中古住宅市場はどう動いた?

コロナ禍の2020年、首都圏の中古住宅市場はどう動いた?

コロナ禍の影響を受けた2020年の住宅市場の動向が、相次いで公表されている。そこで今回は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表した、首都圏の中古住宅(マンション・一戸建て)の動向について、詳しく見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】

「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

東日本レインズの市場動向は、どんなデータを使っている?

まず、レインズ(REINS)とは何かについて説明しよう。「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構(通称東日本レインズ)だ。不動産を仲介する事業者は、このネットワークに登録された物件情報を活用して、物件の売買を仲介している。

今回東日本レインズが公表した市場動向は、首都圏の中古マンション、中古一戸建て、新築一戸建て、土地について、それぞれ成約物件と新規登録物件について分析している。

○成約物件:レインズに契約が成立したと報告された物件

○新規登録物件:レインズに新たに登録された物件

ここでは、中古住宅(マンション・一戸建て)に絞って、市場動向を見ていこう。

中古マンションは2020年に成約件数減少、成約価格上昇

コロナ禍に見舞われた2020年は、好調だった中古マンション市場にも影を落とした。首都圏では2016年を機に、新築マンションよりも中古マンションのほうが売買の件数が上回る状況が続き、中古マンションの成約件数は上昇トレンドにあったのだが、2020年は首都圏のすべてのエリアで前年を下回る結果となった。

2020年を月次で見ると、緊急事態宣言中の4月と5月の成約件数が対前年同月の5割減、4割減まで減少したことが、年間の結果に大きく影響した形だ。

一方で、中古マンションの成約物件の価格は1平米当たりの単価(首都圏平均55.17万円)でも、成約価格(首都圏平均3599万円)でも、全てのエリアで上昇となった。中古マンション市場では、人の動きが止まる緊急事態宣言中は取引が減少したものの、人の動きが戻れば取引が活発化し、価格が下がらないという構図になったようだ。

中古マンションの成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古マンションの成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古マンションが人気となる要因に、新築マンションの供給数減少と価格高止まりが挙げられる。中古マンションの価格帯別成約件数を見ると、最も多く成約したのは「3000万円~5000万円」の価格帯(32%)だ。また、3000万円以下の成約件数が減少するのに対して、5000万円を超える価格帯の成約件数は増えている。2020年の新築マンションの平均価格が6084万円だったことを考えると、新築マンションに手が届かない層が中古マンションに目を向けたという様子がうかがえる。

中古一戸建ては2020年に成約件数は微増、成約価格は微減

一方、2020年の中古一戸建ては、中古マンションとは異なる動きを見せた。成約件数は前年を上回り、過去最高を更新したが、成約物件の価格(首都圏平均3110万円)は前年を下回った。

中古一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

この結果は、中古一戸建て市場が安定していることを映したと見るのがよいだろう。成約件数は微増、平均価格は微減といえる範囲だ。例えば、中古マンションの平均価格を8年前の2012年と比べると、8年間で44.0%も上昇しているが、中古一戸建ての平均価格は8年間で6.6%しか上昇していない。

また、コロナ禍の影響が小さかった要因に、在宅勤務の普及で仕事スペースを確保するための広さを求め、一戸建てニーズが高まっていることも挙げられる。SUUMOの「第2回コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」の結果では、マンションか一戸建てかの選択で、一戸建て派がコロナ流行前の56%から9月時調査では61%とさらに多くなった。

中古一戸建ての成約件数を2020年の月次で見ると、緊急事態宣言中の4月と5月の成約件数が対前年同月の4割減、2割減と大きく減少し、平均価格も下落したが、10月と11月になると対前年同月の4割増、2割増と大きく伸び、平均価格も上昇トレンドに変わった。コロナ禍の一戸建て人気が押し上げたと見ることもできるだろう。

中古市場は新たに売り出される物件が激減している!?

もう一つ注目してほしいのが、新規登録件数が減少していることだ。中古マンション、中古一戸建てともに、対前年の1割減となった。新型コロナウイルス感染の影響は、買う人の需要を減らす方向よりも、売る人の意欲を奪う方向に動いたようだ。

中古マンションおよび中古一戸建ての新規登録状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古マンションおよび中古一戸建ての新規登録状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

買う側の需要が縮小していないのに、市場に新たに売り出される物件が減れば、売り出し中の在庫が減る。ただし、買う側がほしいと思える物件が市場になくなるとマッチングしなくなるので、売買が成立しづらくなる可能性も生じる。したがって、首都圏の中古住宅の市場にとってリスクとなるのは、売り出し物件が今後も減ってしまうことだろう。

在宅のまま自宅を売り出す場合、コロナ禍で人に出入りされるのはいやだという人もいるだろう。しかし、条件の良い住宅であれば、競争相手が少ない今は高く売れるチャンスでもある。市場の動向をきちんと把握したうえで、それぞれが判断してほしい。

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