「貧乏人はより一層貧乏になる」は間違った思い込み!? データを基に世界を見るチカラ

「貧乏人はより一層貧乏になる」は間違った思い込み!? データを基に世界を見るチカラ

 「ビジネス書大賞2020」の大賞などを受賞し、日本国内で売り上げ90万部を突破する書籍『FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』。著者は冒頭でこのような質問を読者に投げかけます。

 「あなたは、次のような先入観を持っていないだろうか。『世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている。金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう』」(本書より)

 「その通りだ」と思う方もいるかもしれませんが、これは正しいとは言えません。データに基づいて見てみると、極度の貧困層はここ20年で半減し、世界で最も多くの人が住んでいるのは中所得国。世界中の1歳児のほとんどがなんらかの病気に対して予防接種を受けているというのが事実です。

 しかし、このような貧富や人口、教育、暴力、環境といった世界を取り巻く状況の変化についてクイズを出すと、多くの人が回答を間違えるといいます。しかも高学歴の人や国際問題に興味がある人でも間違えるというから驚きです。

 そこで、データや事実にもとづいて世界を読み解く方法を教えるために著者が執筆したのが本書。「何かひとつ世界に残せるとしたら、人々の考え方を変え、根拠のない恐怖を退治し、誰もがより生産的なことに情熱を傾けられるようにしたい」(本書より)と記します。

 本書では、私たちが思い込みを抱きやすい10の事柄について紹介。「世界は分断されている」「世界の人口はひたすら増え続ける」「目の前の数字がいちばん重要だ」などといった思い込みです。

 たとえば第2章「ネガティブ本能」で取り上げているのは、「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み。この誤解を解くために本書で提示されているのが「極度の貧困率(1800年~現在)」のデータです。「1日2ドル以下で生活する人々の割合」を見てみると、極度の貧困の中で暮らす人々の割合は20年前には世界人口の29%だったのが、現在は9%にまで下がっていることがわかります。

 続いて、「平均寿命の変化(1800年~現在)」というデータ。1800年頃は世界のどの地域でも平均寿命30歳でしたが、現在は72歳とめざましい進歩を遂げていることがわかります。

 このように、膨大なデータをもとに、私たちが持っていた固定観念を覆し、世界が想像とはまったく違っていることに気づかせてくれます。すべてのデータには出典が明記されており、信ぴょう性は非常に高いといえるでしょう。

 さまざまなニュースを目にするたび、未来に不安を感じたりネガティブなイメージを抱いたりすることもあるでしょう。しかし、著者が「事実に基づいて世界を見られれば、人生の役に立つし、ストレスが減り、気分も軽くなってくる」(本書より)と述べる通り、希望もあることに気づかされます。本書を読んで、事実に基づいて世界を見るスキルを身につけてみてはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]

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