ガンプラの「1/144」スケール誕生秘話
ガンダムのプラモデルシリーズ、通称「ガンプラ」。男性の多くは一度は作ったことがあるのではないだろうか。
1980年7月、300円で発売が開始された「1/144ガンダム」を始めとするガンプラは、2010年の時点で、累計生産数量4億個を超えている超ロングセラー商品だ。このガンプラを作ったことがある人ならご存知の通り、「1/144スケール」「1/100スケール」といったスケールが必ず表示されている。アニメーション作品に登場するロボットや宇宙船などが、プラモデルとして商品化されるに際し、当然の如く表示されるスケール。まさにガンプラが、キャラクターモデルのスケール化を確立させたと言っても過言ではない。
では、なぜガンプラは「1/144スケール」なのだろうか。
『ガンプラ開発戦記』(猪俣謙次、加藤智/著、アスキー・メディアワークス/刊)では、ガンプラ誕生の経緯や未曾有の大ブームに立ち向かった人々の戦いの記録を通して、ガンプラブームの秘密を紹介。
バンダイがガンダムを商品として扱うための版権を取得したときのエピソードや、バンダイ模型が威信を賭けた「1/144ガンダム」発売当初の様子も開発者側から読むことができる。
今でこそ、キャラクターモデルは、大人も楽しめるホビーとして一般的にも認知されているが、ガンプラが世に送り出される以前の時代、キャラクターのプラモデルは「組み立ておもちゃ」と揶揄されることもあり、戦車や飛行機といった縮尺模型(=スケールモデル)と比較し、一段レベルの低い子供のモノと見下される傾向にあった。そんな時代の中で、なぜガンプラは、スケールモデルとして世界的に通用する「1/144という国際スケール」を冠することとなったのだろうか?
商品化第1段となるガンダムは、設計がスタートした時点では、会社の開発方針として明確なスケール設定がなく、300円という価格だけが決まっていたという。このガンダムのメイン設計を任されていたのが、バンダイ模型のエース設計者・村松正敏氏。重要なシリーズがスタートする時は必ずといってよいほどメインアイテムを担当してきた男だ。
村松氏は、『宇宙戦艦ヤマト』のプラモデルでつかんだ手応えから「ガンダムはスケールモデル的な設計をしよう」と決めていたものの、この設計開始時点では、明確に1/144スケールとは決めていなかった。そして、スケール表示の必要性を感じていた村松氏は、テストショットが上がり、発売が近付くと、完成した図面を改めて計測しスケールを算出した。すると、ほぼ1/144のスケールだったのだ。偶然なのか、必然だったのか、奇跡のような出来事から、1/144スケールのガンダムが誕生したのだ。
村松氏はこの時、設計図面に鉛筆で「1/144」と書き込んだという。
その他にも様々なエピソードがつづられている本書は、ガンダム世代にはたまらない一冊だ。
(新刊JP編集部)
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