団体信用生命保険、住宅ローン契約者の3割近くが「知らない」。どこまで保障?違いはあるの
住宅ローンを借りる際、「団体信用生命保険」という保険に加入するのが条件となっていることが多いのをご存じだろうか?住宅ローンを利用していながら、このことを知らないという人が3割近くもいるという。それで問題はないのだろうか?【今週の住活トピック】
「生命保険に対する消費者意識調査」結果を公開/MFS(モゲチェック)
3割近くが住宅ローンに付帯される「団体信用生命保険」を知らない
オンライン住宅ローンサービスを運用するMFSが生命保険について調査を実施した。この「生命保険に対する消費者意識調査」の中で、住宅ローンを利用する際に加入が条件となる「団体信用生命保険」について調査した項目がある。
まず、住宅ローン利用者に対して、「住宅ローンに団体信用生命保険が付帯していることを知っているか」聞くと、知っていて当然であってほしいところだが、「知らない」が26.1%もいた。
次に、「団体信用生命保険の内容を踏まえて住宅ローンを選んだか」聞くと、「選んでいない」が38.8%だった。知らない人はもちろんのこと、知っている人の中にも団体信用生命保険の内容について無関心だった人が多いことが分かる結果だ。
住宅ローンと団体信用生命保険について(出典/MFS「生命保険に対する消費者意識調査」より転載)
団体信用生命保険にはさまざまな特約が付帯できる
「団体信用生命保険」とは、住宅ローンを借りた人に万一のことがあったときに、残りのローンの全額を保険で弁済する保障制度。略して「団信」と言われるものだ。借りた人がローンを返せない状態のときに、家族がそのままローンを抱えることのないように、金融機関に保険金が支払われる。その保険料は、一般的に住宅ローンの金利に含まれている。
なお、持病があるなど健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない場合には、「ワイド団信」を用意している金融機関もある。一般の団信より加入条件を緩和したものなので、持病などによってはワイド団信に加入できる場合があるが、その際に適用される金利は高くなる。
さて、問題となるのは、この「万一のことがあったとき」とはどういった状況のことか、ということだ。通常の団体信用生命保険では、住宅ローンの契約者が「死亡または高度障害の状態になったとき」が対象となる。高度障害の状態とは、例えば病気やケガによって、両眼の視力を失ったり、精神や臓器に著しい障害が残ったり、両手足を失ったりなどの場合をいう。
「生命保険(死亡保険)」が同じ内容をカバーするので、住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入したら生命保険を見直して、団信と重複する分だけ生命保険を減額するという人は多い。
しかし、団体信用生命保険や一般の生命保険では、高度障害に至らない病気やケガまでは保障されない。特に、日本人の2人に1人がかかるといわれる「がん」の治療では、高額な費用がかかることもある。そこで、別に「がん保険」や「医療保険」に加入して、万一に備える方法がある。
がんのリスクを考慮して、住宅ローンの団体信用生命保険に「がん特約」を付帯できる住宅ローンは多い。最近では、「3大疾病特約」を付帯して、3大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)で所定の状態になったときにも、保障できるようにする金融機関も増えてきた。3大疾病特約の人気が高まったので、5大疾病や8大疾病、全疾病などバリエーションが増えてきたというのが、今の実態だ。これらの特約を付帯すると、保険料を支払う必要があるが、金利に一定率が上乗せされる場合と保険料を別途支払う場合がある。
団体信用生命保険の内容を知って、どこまで保障されるか確認
では、特約として多くの疾病を保障するものがよいかというと、そういうわけでもない。その病気にかかれば保障されると思いがちだが、一定期間以上所定の状態が継続したときなどの条件が付いていたり免責期間があったりなど、それぞれの細かい条件を満たす必要がある。
MFSでは、この調査結果を記者向けに発表するオンライン勉強会を実施した。その資料の中に、団体信用生命保険の全体の傾向を分かりやすく整理したものがあったので、それを使って説明しよう。
団体信用生命保険の種類と保険金の支払事由(出典/MFS「『団体信用生命保険』記者勉強会」資料より転載)
図のように、一般団信やワイド団信のほかに、さまざまな特約を付けられる保険商品がある。3大疾病のうち、脳卒中と急性心筋梗塞では、一定の症状が60日以上継続したり手術を受けたりしないと保障対象にならない。また、その他の疾病を保障するものでは、病気にかかると一年間返済が免除され、働けない状態が長く続いた場合に限ってローン残高が保険金でカバーされるといったものが多い。
ここではおおよその傾向を説明したが、実際には同じような名称でも保障の内容に違いがあることも多い。例えば、一般団信でも【フラット35】に付帯する「新機構団信」では、高度障害保障が身体障害保障に拡大され、介護保障が加わるなどの違いがある。具体的に、どういった場合にどういった保障が受けられるのか、付帯する保険商品の内容をよく調べる必要がある。
団体信用生命保険の特約は本当に必要?
また、団体信用生命保険の保険料の総額は、ローンの借入額や返済年数によって大きく変わる。特約を付帯したときの保険料は、金利に上乗せされることが多いが、例えば金利が0.3%上乗せになった場合に、保険料の総額がいくらになるかを試算しておこう。後から付帯することができないこと、金利上乗せタイプなら途中解約ができないことなども注意点だ。
一方、一般の生命保険や医療保険などは、加入する人の年齢や健康状態などによって保険料が変わり、保険商品の種類も多い。こうしたものと比較して、保障が重ならないように考慮し、支払う保険料と必要な保障のバランスを見て保険商品を選択することが大切だ。
今後の人生で、どんな病気にかかるかを予想することは難しい。だからといって、やみくもに保障の範囲を広げると、高い保険料を支払うことになる。健康状態やライフスタイル、貯蓄の有無などを考慮して、何を保険で備えるのがよいかを検討してほしい。
また、住宅ローンは長期間返済し続けるものなので、まずは、長期固定か変動するかなどの金利タイプと適用される金利を第一に考えて、そのうえで団体信用生命保険に特約を付帯するかどうか考えるのがよいだろう。
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