エンジニアにスーツを着せているIT会社

エンジニアにスーツを着せているIT会社

今回はmojixさんのブログ『モジログ』からご寄稿いただきました。

エンジニアにスーツを着せているIT会社

私がよく通る道に古いオフィスビルがあり、そこの1階にITの会社が入っている。看板に出ている社名と、窓からちょっと見える社内の雰囲気からして、古いタイプのシステム開発会社のようだ。その会社ではスーツ着用が必須のようで、全員スーツを着てPCに向かい、開発している。座席のレイアウトも昔ながらの「島型」で、向かいの人の顔が自分の視界に入るやつだ。私はこの会社の横を通るたびに、「ここの社員はかわいそうだなあ」と思う。

座席のレイアウトは、場所や予算の制約もあるだろうから、まあ目をつぶるとしよう。しかし、開発をするエンジニアにスーツを着せても、まるで意味がない。営業やサポートにも行くエンジニアや、客先常駐するエンジニアならまだわかるが、自社で開発しているエンジニアにスーツを着せても、仕事のジャマになるだけだ。

こういう古いタイプの会社は、経営者がおそらく「まじめに働く」ことを重視しているのだろう。みんながスーツを着て仕事していると、たしかに「まじめに働く」雰囲気は出るかもしれない。しかし、実際は仕事がやりにくくなるので、成果物の品質が下がるだけだ。

エンジニアの役割は、できるだけ良いものを、できるだけ短い時間で作ることだ。そのためには、できるだけ働きやすい環境を用意したほうが、いいパフォーマンスが出せる。もちろん、働きやすい環境を用意することにはコストがかかるので、パフォーマンスとコストのバランスは考える必要がある。しかし、スーツをやめて、服装を自由にすることには、何のコストもかからない。コストをかけずにパフォーマンスを上げられるのに、それをやらないというのは、愚かというほかないと思う。

システムを使うお客さんの立場からしても、お客さんはできるだけ良い品質のシステムを、できるだけ安く、できるだけ早く欲しいだけだ。エンジニアにスーツを着せても、システムの品質はよくならないし、早くできるわけでもない。むしろその反対だろう。

ITというのは製造業でもあるが、その仕事の性質は、「ものづくり」というよりは「物書き」に近いところがある。「物書き」にスーツを着せても、いい作品を書けるようにはならないだろう。プログラマも一種の「物書き」だと考えれば、どうすればよいパフォーマンスが出せるのか、おのずとわかってくる。

執筆: この記事はmojixさんのブログ『モジログ』からご寄稿いただきました。

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