解放されたスピード、解き放たれたスピーチ。ステファン・ブルッゲマンのキュレーションによるグループ展
Stefan Brüggemann, Playback Free Speech, 2020 © Stefan Brüggemann
KOTARO NUKAGA では、ロンドンとメキシコシティを拠点とするコンセプチュアル・アーティスト、ステファン・ブルッゲマン(1975年 メキシコシティ生まれ)キュレーションによる展覧会「UNLEASHED SPEED UNLEASHED SPEECH (MISFITS)」を開催。
ブルッゲマンは欧米諸国で展覧会を重ね、今後さらなる活躍が期待されている注目のアーティストだ。2018年秋 KOTARO NUKAGA にて開催した日本初の個展は、現代のデジタルカルチャーを反映したシリーズ作品が好評を博した。ブルッゲマンのキュレーションによる本グループ展には、本人とともに、国際的に活躍するアーティストであるオリオール・ヴィラノヴァ、ジェイ・レヒシュタイナー、ガーダー・アイダ・アイナーソンの3名が参加。それぞれが異なる背景と作風を持ちながらも、情報が氾濫し加速を続ける現代の状況を鋭く見つめ、独自の視点と方法によって切り取った側面を作品に反映させている。社会が変化するスピードは留まる所を知らず、目の前を流れていく膨大な情報の表層だけではなく、深い洞察力を持って物事の本質を見抜く力が一人ひとりに対して問われている。この展覧会が、アートに対して、また社会に対する新たな視点を持つきっかけとなれば。
展覧会ステートメント
UNLEASHED SPEED UNLEASHED SPEECH
本展覧会のタイトルでもあるステファン・ブルッゲマンが放つ文字列に、わたしたちははっとする。
現代生活のスピードは極限状態であり、ふとしたきっかけで疑問や抵抗が堰を切ったように溢れ出す。
「スピード」と「スピーチ」という二つの語の頭韻が示すのは、社会への情報伝達方法における鋭い洞察であり、それは同時に抑圧でもある。(中略) この展覧会は、資本主義が大惨事に陥る中での人間行動の社会学的記録だ。さらに言えば、政治というシステムの中でいかに生きるかの指南書でもあるのだ。
Stefan Brüggemann, Headlines & Last Line in The Movies, installation view, KOTARO NUKAGA, 2019
Stefan Brüggemann (ステファン・ブルッゲマン)
1975年 メキシコ、メキシコシティ出身
ロンドン、メキシコシティを拠点に活動。テキストやアプロプリエーション(流用)を通して、現代社会における様々な事象に生じる矛盾を作品として成立させる。ブルッゲマンの作品は、主にポスト構造主義や脱構築、ニヒリズムの思想をベースにした理論とポップなイメージの融合である。言葉とテキストの関係、タイポグラフィとハンドライティング、媒体としての 素材など、ミニマルな表層の背後に計算された矛盾やアイロニーを組み込むことは、ブルッゲ マンの確固たる制作手法である。その表現はしばしば同語反復(トートロジー)されたテキストや記号的イメージを用いて行われ、テキストとイメージそれ自体の意味や答えだけではなく、それらが想起され挿入される文脈との関係において、見る者に問いや疑いを抱かせる。欧 米諸国で展覧会を重ね、2019年2月末から世界的な画廊であるハウザー・アンド・ワース(Hauser&Wirth)に所属。国内では、2017年「THE ART SHOW ‒ タグチ・アートコレクションにみるミレニアムの美術 」(群馬県立近代美術館)に出品。
Oriol Vilanova, Sunday, exhibition view Fundació Antoni Tàpies, Barcelona. Photo: Roberto Ruiz
Oriol Vilanova (オリオール・ヴィラノヴァ)
1980年、スペイン、マンレサ出身
ブリュッセルを拠点に活動。過去の個展として、グラン・オルニュ現代美術館(ベルギー)、オールブライト・ノックス美術館(アメリカ)、モナコ新国立現代美術館、イクセル美術館 (ベルギー)、M- ルーベン美術館(ベルギー)、アパルトモン 22(モロッコ)、ミロ美術館 (バルセロナ、スペイン)など。参加した主なグループ展の会場は、パレ・ド・トーキョー (フランス)、クンストハル・エクストラシティ(ベルギー)、レ・ザバトワール近現代美術館 (フランス)、ペタティクワ美術館(イスラエル)、アルル国際写真祭(フランス)、フューチュラ現代美術センター(チェコ)、バルセロナ現代美術館(スペイン)、ほか多数。
Jay Rechsteiner, Bad Painting 89: “If they die, let him dump them in a forest in Germany,” Mr. Lahoo said. 71 migrants suffocated in the back of a lorry , 2018 © Jay Rechsteiner
Jay Rechsteiner (ジェイ・レヒシュタイナー)
1971年 スイス、バーゼル出身
イギリスの南東部に位置するマーゲイトを拠点に活動。スイスとイギリスで美術を学ぶ。 1990年代に日本に移住、絵画制作活動を経て、2001年にヨーロッパへ帰国。ヴェネチア・ビエンナーレ、イギリスのホワイトチャペルギャラリーやテート・リバプールなどヨーロッパ各国、日本でも多数の展覧会に参加。2007年からはサーディン&トブラローネのデュオを結成、 2007年から2012年にかけてイギリスとポルトガルで活動。2012年に独立、現在の拠点地で活動を続ける。
Gardar Eide Einarsson, Untitled (Grave), 2019 © Gardar Eide Einarsson
Gardar Eide Einarsson (ガーダー・アイダ・アーナーソン)
1976 年、ノルウェー、オスロ出身
東京を拠点に活動。国立芸術アカデミー・ベルゲン校 ( ノルウェー )、ブラウンシュヴァイク 芸術大学 ( フランクフルト、ドイツ )、ニューヨーク・ホイットニー美術館(ニューヨーク) のインディペンデント・スタディ・プログラムを経て美術を学ぶ。 過去の個展として、アロスオーフス美術館(デンマーク)、フォートワース現代美術館(アメリカ)、アストルップ・ファーンリ現代美術館(ノルウェー)、ジュネーブ近現代美術館 (スイス)、フリデリツィアヌム美術館(ドイツ)など。
参加したアートフェアは、ルイジアナ近代美術館(デンマーク)、MoMA PS1、ビーゴ現代美術館(スペイン)、セラルベス現代美術館 (ポルトガル)、イスタンブール現代美術館、パレ・ド・トー キョー(フランス)、ホイットニービエンナーレ、シドニービエンナーレほか多数。
作品は、ニューヨーク近代美術館、サンフランシスコ近代美術館、フランクフルト現代美術館、ストッ クホルム近代美術館、オスロ国立美術館など数々のコレクションに所蔵されている。
UNLEASHED SPEED UNLEASHED SPEECH (MISFITS) Curated by Stefan Brüggemann
アーティスト:オリオール・ヴィラノヴァ、ジェイ・レヒシュタイナー、ガーダー・アイダ・アイナーソン、ステファン・ブルッゲマン
会期:2020年9月5日( 土 ) – 10月10日( 土 )
開廊時間:11:00-18:00 ( 火・水・木・土 )、11:00-20:00 ( 金 ) ※日月祝休廊
※国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。
KOTARO NUKAGA
〒140-0002 東京都品川区東品川 1-33-10 TERRADA Art Complex 3F
アクセス:東京臨海高速鉄道りんかい線「天王洲アイル駅」から徒歩約8分 東京モノレール羽田空港線「天王洲アイル駅」から徒歩約10分 京急本線「新馬場駅」から徒歩約8分
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