端午の節句に飾られる「鐘馗」ってなにもの?なんであんな怖い顔のものを飾るの?
5月5日の「端午の節句」になると、鯉のぼりや五月人形を飾る風習が日本には昔からありますよね。その他に、鐘馗(しょうき)と呼ばれる絵や像を飾る風習もあります。
しかし、その鐘馗(しょうき)の顔はやたらと怖いですよね。子どもの健康と成長を祈る日なのに、子どもたちがビックリして泣いてしまいそうな形相をしています。
なぜあんな怖い顔のものを飾るのでしょうか?ここではその鐘馗とは何者なのか、そして端午の節句の際になぜ飾るのか、その由来をご紹介します。
鐘馗とは
鍾馗(しょうき)とは、中国民間伝承に伝わる道教の神様のことです。
日本では端午の節句の際に絵や像を飾る風習がある他、京都では屋根の上に鐘馗の像を飾る文化が根付いています。
鍾馗は長い髭を蓄え、何かを睨むような大きな眼をした顔立ちに、中国の官人の衣装を身にまとい、鋭い剣を持っているといった見たものに恐れを抱かせる姿形をしています。
皇帝の枕元に立った鐘馗
怖ろしい顔をしている鐘馗ですが、実はそこにはある伝説が言い伝えられています。
鍾馗は、唐の時代に皇帝の玄宗がマラリアにかかってしまった際、夢に出てきた悪鬼を退治してくれたとの言い伝えがあります。その際、悪い鬼を食べてしまったという豪快な退治っぷりもあります。
事実、マラリアに苦しめられた玄宗が夢から覚めると病はすっかり治っていたのだとか。そのことに感動した皇帝は、有名な画家に鍾馗の絵を描かせたと言い伝えられています。
それ以降、魔除けとして新年に鍾馗の絵や像を門に飾る風習が根付いたようです。
魔除けの神様となった鐘馗
皇帝の魔除けとされた鐘馗は、時代が進んでからも絵や像を飾る風習は廃れるどころか、むしろ新年だけではなく年末にも飾られるようになったそうです。
そこから端午の節句にも、魔除けとして鍾馗を飾るのが定番となったようです。
日本に伝わった鐘馗
日本に鍾馗が渡来してきたのは、平安時代末期頃のことだといわれています。当時から魔除けの絵として扱われ重宝されていたようです。
そして、民衆の間で特に広まったのは江戸時代末期の頃で、その頃から関東では五月人形として飾り付けるようになりました。
関西では屋根の上に像を置いたりするようになったと考えられています。
流行病除けとされた鐘馗
鍾馗は日本では疱瘡除けなどにもご利益があるとされており、古くから流行病除けとしても重宝されてきました。
特に疱瘡除けでは、顔を赤く塗った鐘馗の絵が飾られることもあったことから、時代や目的によって変化していたようです。
現代でも病に負けないようにと鍾馗の像や絵を飾る人もいます。
学業成就のための鍾馗
鍾馗は学業成就にもご利益があると信じられ、旗や屏風や掛け軸として飾ったりする他、屋根の上に像を置いたりすることもあります。
人々を健康にしてくれるだけではなく、勉学にも良い効果をもたらしてくれるなら嬉しいですよね。
ちなみに、学業成就については鐘馗の生前に関係あります。
唐の皇帝・玄宗の枕元に立ったのが鐘馗の魔除けとしての始まりと前述しましたが、実は生前、清の時代まであった中国における官僚試験の科挙を受けていた人物でした。
残念ながら科挙に落ちてしまった鐘馗はこれを恥じ、その場で命を絶ってしまったのだとか。
しかしその時、唐の初代皇帝がその亡骸を手厚く葬ってくれたことを、亡くなっていながらも恩義に感じ、恩返しのために玄宗の危機を救ったとされています。
残念ながら科挙には落ちてしまっていますが、頭脳明晰だったことから学業成就のご利益があると考えられるようになったそうです。
関東で五月人形になった鐘馗
鐘馗は地域によって伝わり方が異なっており、関東では五月人形として飾られることが多いです。五月人形として飾る目的は成長を願うとともに健康を祈ったためだといわれています。
昭和30年代頃までは現在の鎧人形よりも、鐘馗を象った五月人形の方が主流だったようです。
京都の屋根の上に据えられた鐘馗
京都では鐘馗が屋根の上に据えられていることがあります。
もともと鬼より強い鍾馗を置くことで魔除けや邪除け、厄除けとしてのご利益があると信じられてきたため、屋根に据えることで家内安全を願ったのだとか。
京都では鐘馗に対して、より親しみを込めて「鍾馗さん」と呼ぶことが多いです。京都の人にとっては身近な守り神として古くから愛されているわけですね。
日本に1ヵ所しかない鐘馗を祀った神社
京都府京都市東山区にある若宮八幡宮社では、鍾馗を祀っています。
若宮八幡宮社は別名で「陶器神社」とも呼ばれていますが、その一角に鐘馗を祀っている神社があります。
その神社は若宮八幡宮社の境内末社の1つで、鍾馗神社という名です。
祭神を鍾馗として崇めているため、より鐘馗の存在を感じられると思いますが、中国の道教の神を神社で祀っているというのは非常に珍しいことですね。
まとめ
端午の節句には鐘馗の絵や像を飾ることがありますが、あんなに怖い顔をしていながらも、実は守り神として崇められているのです。
厄災から守ってくれる神様なので、ぜひ端午の節句には鐘馗の力を借りてみましょう。
あんなに怖い顔をしているのですから、鬼も怖がって近寄らず、きっとどんなことからも守ってくれると思いますよ!
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