Fashion/Reborn: 「人との連絡を欠かさず、自分なりのよりクリエイティヴな方法で現在の状況に対応すること」Interview with Andreas Knaub

NeoL Magazine JP | Photo:
Andreas Knaub Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara


誰もが経験したことのないニューノーマルの時代に突入している中、クリエイティヴ業界では、アート/コマーシャルの垣根を超えて新たな側面から制作に取り組む姿勢が見受けられる。今回は、様々なバックグラウンドを持つフォトグラファーたちの創造力・技術への向き合い方を探りながら、華美な物語からストリートで巻き起こるファッションフォトグラフィーの過去・現在・未来においてどのような変遷が起きているのか掘り下げていく。
ミニマリズムを追求した親密的な空間の中、それぞれのモデルが持つ魅力を最大限に引き出し、人間味溢れる作品が印象的なベルリンを拠点とするファッション/ビューティーフォトグラファーAndreas Knaub。彼の作品の多くは、光と影を駆使し全てを露にせず、洗練されていながら粗い側面も垣間見ることができ、誰もが感情を掻き立てられるだろう。Andreasが貫く人との対話を大切にし、瞬間を楽しみながら、自分の核を築いていくというスタイルと俯瞰的な視点から物事を捉えるという彼のスタンスについて迫る。
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ーー自己紹介をお願い致します。フォトグラファーになった経緯など。

Andreas「私は現在、36歳でベルリンに15年間住んでいます。ほとんどの間、ドイツの南部バイエルン州で育ったのですが、元はロシア・シベリア地域で生まれ、1993年に家族と共に移住して来ました。ドイツやヨーロッパ各地を巡り、学校を卒業してから、スケーターの友人とベルリンに移住しました。そして、何をするか考えずにベルリンのナイトライフに浸っていきました。週に2-3日連続で、バーやクラブでバイトをしていました。若いうちに与えられた時間を最大限に活用していました。ですが、数ヶ月して、徐々にフォトグラフィーに興味を持ち始めるようになりました。当時、フォトグラファーとしての知識はゼロだったので、他のフォトグラファーのアシスタントとして働こうと考えました。翌年、本当にがむしゃらに働いていましたね。ある意味、仕事中毒になっていました。そんな時に、新たな展開がありました。私の中で、自分の考えをアウトプットし、自分自身がフォトグラファーになるという新たな決断に至りました。最初は、小規模な撮影から始まり、自分が心の底から撮影をする価値があると思ったアイデアに対し友人と共に撮影しました。年々とアイデア、チーム、自分のポートフォリオ、プロダクションが膨らんでいきました」

ーーどのようなプロセスを経て、現在のスタイルに至ったのかお聞かせください。

Andreas「撮影をするために必要な要素が全て揃っているかどうかが大事です。まずは、自分の中にすでにあるアイデアの大まかな全体像か衝動的に思いついたものから始まります。そして、撮影のムードに合わせたロケーションやスタジオを見つけ、チームと技術スタッフと共に準備をし、やっと撮影に望むことができます。ですが、私のスタイルはモデルとの対話を通じて発展していきます。私にとって自分のスタイルを確立していくということは、その瞬間を楽しみながら、自分の中にあるアイデアを最大限にアウトプットできるようにするということです。その瞬間にまさにモデルに落とし込んでいきます」

ーーどのように自身の個性/アイデンティティーを作品に落とし込んでいますか。また、どのようにそれを極めているか教えてください。

Andreas「いい質問ですね。自分の作品を振り返る際、自分自身のことについてたくさん学びます。例えば、モデルのYenneferを起用した『Just Magazine』のエディトリアル作品では、ロシアで送った幼少期の思い出が鮮明に思い起こされました。誰もが見てわかる私の粗さという側面が作品で表現されています。それ以外の多くの作品は、無意識に作られていき、まだ完成状態ではないので、作品に自分のアイデンティティを見出すのは難しいです」

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Andreas Knaub Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara

 

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ーー作品をクリエイトする際、心掛けることはありますか。

Andreas「全ては、アイデアから始まります。アイデアを練ったら、マガジンやインターネットからムードボードのインスピレーションを探します。人々が私の考えを理解できるように時間をじっくりかけてムードボードを作り上げていきます。自分のチームを納得させることができたら、すぐに具体化させていきます」

ーー撮影の際、ライティングなどこだわっている点がありましたら、教えてください。

Andreas「フォトグラフィーを始めた当初、使える機材は限られていました。というのもたくさんフラッシュライトを使っていました。徐々に、技術面が向上していき、画質の良いカメラ、レンズとセンサー、LED照明などの機材や照明器具はより持ち運びやすいコンパクトなものになりました」

ーーどのような過程を踏んで、繰り広げられるストーリーを発展させていますか。

Andreas「それは答えるのが難しい質問です。誰が次のトンボラの賞金を得ることができるかと聞いているようなものです。私はストーリーを発展させていくことはしません。その瞬間を生きており、衝動で行動しています。アイデアがあれば、それを作り上げ、もし何か違うと感じたら、それを破棄して最初からやり直します。自分の物語は過去にあり、私は現在を生きています」

ーーインスピレーション源はどこから湧いてきますか。

Andreas「人生において常に様々なものからインスピレーションを得ています。アートやエキシビション、映画、交わす奥が深い話、旅行、自分が見る夢などから始まります。朝起きたら頭の中はインスピレーションで溢れています。それらは写真としておさめられるのを待っています。ですが、一番インスピレーションを得るのは旅行からです。知らない人々との出会いや自分自身の経験を豊かにすることが鍵ですね」

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Andreas Knaub Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara

 

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ーーどのように現代の流れと自身のスタイルのバランスをとっていますか。

Andreas「私が大きく影響を受けたトレンドは一つあります。アナログ・フォトグラフィーのブームが再到来したことですかね。私がフォトグラフィーを始めた当初は、ほとんどデジタルが主流でした。ファッションフォトグラフィーにおいてのアナログのトレンドはここ6年間以上続いており、アナログを駆使すると純粋に魔法がかかります。多くのフォトグラファーがアナログで撮影しているものの、私は自分の物事への捉え方や自分のアイデアと気持ちに重点を置くようにしています。トレンドとの両立をしたければ、自分らしくいることが一番大切なことですね」

ーー現在、ファッション・フォトグラファーでありながら、苦戦していることはありますか。

Andreas「コマーシャル撮影においては、クライアントが自身のレーベルやコレクションを最高な形でアウトプット出来るよう導くのが一番難しいと感じますね。多くのクライアントは1つ以上のプロジェクトを同時に進行しているため、とてもストレスを感じています。私の目標は、アイデアを上手くまとめ、写真に質を落とし込んでいくことです」

ーー新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、ファッションフォトグラフィーの業界においては、どのような影響がありましたか。

Andreas「新型コロナウィルス感染症は、ファッションフォトグラフィー業界において、今もなお大きな影響を与えています。ヨーロッパで流行った際は、全ての仕事がキャンセルになりました。数週間にかけて、今後の未来について多くの人たちが不安を抱えていました。一般的に、全ての企業は状況に応じて対策が取れるよう、今後のためにも資金の使い道に慎重になっています。ですが、私の作業に関しては、今でも変わっていません。外出自粛中は、ソーシャルメディアを利用する人も急激に増えました。もしこの状況が続き、みんな自宅で過ごすようになったら、業界はソーシャルメディアを通じて人々に寄り添うようになると思います」

ーーより一層ソーシャルメディアを活用する人が増えてきている中、どのような捉え方をしていますか。

「ソーシャルメディアはとても大事なツールです。例えば、インスタグラムはフォトグラフィーにとって欠かせないプラットフォームです。人々とのつながりが出来ることが一番すごいですね。普通のウェブサイトに掲載しているポートフォリオと比べ、インスタグラムはその写真をアップロードするだけですぐ人々に伝わります。それはすごい役に立つのですが、同時にユーザーは目にするものを処理しきれていないように感じます。溢れかえる情報量を処理しきれず、それぞれに見出す価値の寿命が短くなっています。これらを省けば、共有したり、自分のアイデアや価値を広めたりつなげたりするのに便利なツールではあります。ソーシャルメディアが価値の判断基準になっているかはわかりませんが、自分のリアルな生活に付けたすものであり、いろんな意味で助けられます。ただ、それにより中身のある人、存在する潜在的な可能性、本当の感情を見失ってはなりません」

ーーSocial isolation(外出自粛)の期間が長引いている中、自身のクリエーションに対する捉え方などに変化はありましたか。

Andreas「私のスタイルは変わらないと思います。以前のように同じチームと働きたいとは思いますが、チームは縮小し、安全対策を組んだ上で取りかかっていく必要があるようですね。前とは変わらず同じような仕上がりを小規模のチームで創り上げていく必要があります。基本に戻りますが、クリエイティヴな作品は優れたアイデアとやる気のある小規模なチームによって生み出されます。それ以外だと、人との連絡を欠かさず、自分なりのよりクリエイティヴな方法で現在の状況に対応しています」

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Andreas Knaub Text: Mayu Uchida | Edit: Ryoko Kuwahara

 

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ーー今後、新たにチャレンジしてみたいことはありますか。

Andreas「今は、主に雑誌の撮影をやりたいです。雑誌の撮影だと、自分のクリエイティヴな側面を最大限に活かすことができるからです。それ以外ですと、印刷媒体ですね。自分のエディトリアルの作品を実際に手に取ることができるとリアルに感じますし、それが人生において一番必要なのです。リアルであるという実感が」

ーーこれからどういう風にファッションフォトグラフィーは変化していくとお考えですか。

Andreas「ファッションフォトグラフィーだけではなく、様々なビジュアルが3次元へと変換されるようになってきています。バーチャル・リアリティが次のステップですね。また、近々、映像ももっと重要な位置づけになり、映像と写真がある意味一体になると思います。ファッション・フォットグラフィーの未来?それは、どうなるかはわかりませんね。ただ、私は変化に対し、自分に合ったやり方で対応していくと思います。先述通り、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響により、ソーシャルプラットフォームのトラフィックが急激に伸びています。この状況とバーチャルリアリティ(VR)の空間を駆使すれば、ファッション業界も様々な方面に進出することができると思います。そして、これを機に、クリエイティヴ業界の人たちももっと対話という形式で顧客とつながりを持てたら良いですね」

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Photographer:Andreas Knaub
IG @andreasknaub
HP andreasknaub.com


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