梅雨や大型台風による土砂災害や浸水…我が家の水害リスクについて考えよう

梅雨や大型台風による土砂災害や浸水…我が家の水害リスクについて考えよう

梅雨入りして雨が降る日が多くなるが、近年は異常気象により、集中豪雨や大型台風による土砂災害や浸水の甚大な被害が増加している。最近で言えば、2019年の東日本台風による長野県の千曲川の浸水被害、2018年の豪雨による岡山県小田川の浸水被害などは記憶に新しいところだ。こうした水害に備えるにはどうしたらよいのだろうか?【今週の住活トピック】

「土砂災害警戒区域に関する基礎調査の実施目標」を達成/国土交通省

23%の世帯は、土砂災害や浸水被害の想定地域に居住!?

国土交通省は、2014年の豪雨による広島県の土砂災害を受けて、5年程度を目標に土砂災害警戒区域にかかる基礎調査を行うこととし、2020年3月までに目標通り基礎調査が完了したと発表した。この基礎調査は各都道府県のホームぺージなどで公表され、これを基に「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」が指定される。

土砂災害警戒区域などに指定されると、警戒避難体制の整備や土砂災害ハザードマップによる周知などが行われる。加えて、区域内(土砂災害警戒区域や災害危険区域など)の土地や建物の売買では、重要事項説明として宅地建物取引士がその旨を説明することになっている。

一方、国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会で5月28日に開催したオンライン会議の資料によると、「土砂災害警戒区域」などに居住する世帯数は、約157万世帯で総世帯の3.0%を占める。「津波浸水想定地域」に居住する世帯数は約123万世帯で総世帯数の4.6%を占め、「浸水想定地域」に居住する世帯数は約992万世帯で総世帯数の19.1%を占める。

このいずれかの災害リスク地域に居住する世帯数は、約1203万世帯で総世帯数の23.1%に達すると想定した。4世帯に1世帯近くが、土砂災害や浸水などのいずれかのリスクが想定される地域に居住していることになる。

まずはハザードマップを確認。リスクを知って、避難の備えを

水害リスクと地形には、どのような関係があるのだろうか?ジャパンホームシールドが開催した「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」と題するオンラインセミナーに参加してみた。地形図を見ると浸水リスクの有無が分かるという。例えば、長野県の千曲川の浸水被害を見ると、千曲川の川幅は立ヶ花周辺で急激に狭くなり、ボトルネックとなってその上流で水嵩が増すが、微高地が排水の出口を塞ぐように横たわることで、洪水が発生したという。

とはいえ、一般の人が地形図を読み解くのは難しい。そこで、確認したいのが「ハザードマップ」だ。各自治体が公表する各種のハザードマップや国土交通省の「ハザートマップポータルサイト」などで、土砂災害警戒区域や浸水想定区域、洪水ハザードマップなどを調べ、避難経路を確保するために道路冠水想定箇所、事前通行規制区間などを確認しておくことで、リスクの程度や避難経路の想定をしておくことができる。

〇ハザードマップポータルサイト

水害リスクにどう備えるか?

水害リスクなどがある地域だとしたら、どういった対策がとれるのだろう?

対策はハード面とソフト面があり、すでに家が建っている場合は、リスクの程度を事前に把握して、避難場所や経路を確認しておくソフト対策がとれる。

ソフト対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

ソフト対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

前に説明したハザードマップを活用して、リスクの把握だけでなく、実際に避難しようとしたときに道路が冠水して通行ができないということのないように、避難ルートや想定される浸水の高さを確認しておくことがポイントだ。一方で、浸水リスクが高いなら、被災後に備えて保険に加入しておくことも対策になる。建物や家財なら火災保険の「水災補償」、車なら自動車保険でカバーしておきたい。

住宅の建築前なら、被害を抑えるハード対策も可能

建物を建築する前であれば、ハード面の対策がとれる。ジャパンホームシールドによると、おおむね次の5つの対策が考えられるという。

ハード対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

ハード対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

(1)「建物のかさ上げ」は、基礎部分を通常よりも高く構造にして、想定される水位よりも床を高くすること。(2)「地盤のかさ上げ」は、敷地全体に盛り土をして周辺よりも地盤を高くすること。

(3)土嚢は建築後でも設置できるが、かなり重いものを数十個も積み上げていくのはかなりの体力を要するので、人や車が出入りする玄関まわりや車庫まわりに「止水板など」で壁をつくる対策も有効。

(4)浸水した水の浮力で建物が浮き上がらないように、「基礎と杭の接合」を強化する必要も。

(5)住宅の設備機器を守るには、エアコンの室外機や屋内のコンセントをできるだけ高い位置に設置。

水害リスクがある土地であれば、建築費用が増加しても可能な対策を施しておくほうがよいだろう。建築会社などとよく相談して検討したい。

さて、梅雨の長雨や台風が発生する時期になってきた。異常気象による集中豪雨や海水面の上昇により、洪水や土砂災害などの災害リスクも高まる。水害に対しては、事前の備えと早めの避難が基本だ。とはいえ、コロナ禍で3密を避けたいという事情もある。指定された避難所だけでなく、水害リスクの低い親類や知人の家、建物の上階などを避難先とすることも視野に、万一に備えてほしい。

元画像url https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/06/173206_main.jpg 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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