「セの投手は打撃を磨け」里崎智也が語る「パ高セ低」の打開策

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「セの投手は打撃を磨け」里崎智也が語る「パ高セ低」の打開策

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、開幕の延期が決定してから約3カ月。ついにプロ野球シーズンがやってくる。

さんざん「おあずけ」を食わされた野球ファンとしては、6月19日に決まった開幕までの残り1週間で、今シーズンを誰よりも楽しむための「予習」をしておきたいところ。

現役時代に千葉ロッテマリーンズで活躍し、第1回WBCでは正捕手として世界一を経験した里崎智也氏による『プロ野球 里崎白書 Satozaki Channel Archive』(扶桑社刊)は、そのためにもってこいの一冊だ。

この本は里崎氏のYouTubeチャンネル「里崎チャンネル」の内容に追記を加えて書籍化したもの。「セ・リーグがパ・リーグに勝てなくなった本当の理由」から「契約交渉のウラ技」まで、ファンでも知らないプロ野球の真実が、歯に衣を着せぬ「里崎節」全開で明らかにされている。

今回はそんな里崎氏にインタビュー。プロ野球にまつわる様々な疑問をぶつけてみた。

■里崎智也が語る「パ高セ低」の打開策

――『プロ野球 里崎白書 Satozaki Channel Archive』では、普段から野球を見ていて疑問に思っていたことがわかりやすく解説されていてありがたかったです。個人的にはセ・リーグとパ・リーグでなぜこれほど実力差がついてしまったのか不思議だったのですが、里崎さんは複数の理由があるとされていましたね。

里崎:本の方では「ドラフトにおけるクジ運の強さ」「DH制の有無」「打席に立つことを前提としているセ・リーグの投手陣が、きちんと打撃練習をしていない」という3つ理由を挙げていますが、もう一つ言うなら、巨人が昔に比べて弱くなったというのもあります。

昔、巨人が強かった時代は、他球団もそれに負けまいとしますから、その結果としてセ・リーグ全体のレベルが引き上げられていたところがあります。今はそれがソフトバンクですよね。ソフトバンクに何とか勝ってやろうということで、パ・リーグ全体のレベルが上がったのではないでしょうか。

――確かに、今のセ・リーグには絶対的に強いチームがないですね。

里崎:交流戦でもほぼ毎年パ・リーグが勝ち越していますが、これにはモチベーションの違いもあります。セ・リーグの監督の言っていることを聞いていただくとわかりますが、多くの監督は「何とか勝率5割で終えたい」とか言うでしょう。

一方、パ・リーグの監督は「優勝を目指す」と言います。選手の方も「優勝して賞金もぎ取るぞ」「貯金を作るぞ」と思ってやっている。セ・リーグは最高5割、パ・リーグは最低でも5割。このモチベーションの違いは大きいですよ。

――投手を見ても、パ・リーグの方が好投手が多い印象です。DH制を敷いているパ・リーグは、試合展開によって代打を送る必要がないため、投手が育ちやすいとも言われますね。

里崎:かつてはセ・リーグにも桑田(真澄)さんのように年間20完投するような方もいたわけで、「セ・リーグは投手を長いイニング引っぱれないから、育たない」というなら、「なぜ引っぱれないのか」を考えるべきです。

要は完投能力がない、また一人の打者としてもまったく戦力にならない。だから代えざるを得ないわけですよね。そこをどう考えるのか。

「DH制の方が投手が育ちやすい」とよく言われますが、今のセ・リーグがDH制を敷いたら投手が育つかというと正直、疑問です。それは「隣の芝は青い」みたいな話で、隣の芝ばかり見ていないで、自分の庭の芝を枯らさないようにするのが先でしょう。

――今のお話にありましたが、セ・リーグの投手がもう少し打つ方で貢献できれば、交流戦の勝敗(※インタビューが行われたのは3月11日、その後2020年シーズンのセ・パ交流戦は中止に)も変わりそうな気がします。DH制を敷かないセ・リーグのホームゲームでは、セ・リーグのチームが有利になるのでは?

里崎:セ・リーグの投手も少しは打撃練習をしているのでしょうが、ただ遊びみたいに「ホームラン競争」をやっているようでは実戦で役に立ちません。

セ・リーグの投手はもっと打てるようになるべきですが、ヒットをガンガン打てと言っているわけではなくて、バントとかエンドラン、ケースごとの進塁打くらいはしっかりこなせるようになるべき、ということです。プロに入ってくるような投手は、アマチュア時代は4番打者だった人も多いわけですから、真剣に練習すればそれくらいできるはずです。

――本書にある投手の球種についてのお話が新鮮でした。投手がどういう球種をどれだけ投げようと、変化する方向は5つしかないという。

里崎:球種って「言ったもん勝ち」なんですよ。だって「シュート」と「ツーシーム」がどう違うかって聞かれても、みなさんわからないでしょう?その投手がツーシームと言えばツーシームだし、シュートって言えばシュートなんです。

――ツーシームといえば、横浜DeNAベイスターズの山崎康晃投手のツーシームはボールを挟んで握っているように見えます。握り方といい変化といい、一般的なツーシームとはまったく違いますよね。

里崎:チェンジアップみたいですよね。でも、本人がツーシームって言うんだからツーシームなんです。

打者の方も投手が申告している球種の「名前」にはこだわりません。投手がスライダーと言っているボールでも、自分の感覚でカーブだったらカーブとして対処します。その方がアジャストしやすいんです。同じようにスライダーと言っているボールでも、投手それぞれ曲がり方は違うものなので。

――「リードは結果論である」とはっきり言いきっているのも痛快です。そう考える理由はどんな点にあるのでしょうか。

里崎:これは前から言っているんですけど、なかなか理解されないんですよね。いいリードの定義は何ですかと聞いても、みんな「点を取られないリードがいいリード」とか「相手の狙い球を外すのがいいリード」って言うでしょう。

でも、「こういうリードをすれば相手の狙い球を外せますよ」「こういうリードをすれば点を取られませんよ」という具体的な方法は誰もわからないんです。本来はその方法こそがいいリードなわけで、それがわからない以上、結果論だとしか言いようがないじゃないですか。

――チームが大量失点して負ける試合が続いた場合、レギュラー捕手としてはどう考えるんですか?

里崎:それは何が原因かにもよります。投手が劣っているのかもしれないし、準備してきたものが通用しなかったのかもしれません。ミスが多くて失点してしまうこともあります。そこは総合的に考えて原因を探る必要があります。

極端な話、試合前のミーティングで打ち合わせた通りにやったのに打たれることもあるんです。その場合、キャッチャーの責任かといったらそうではないでしょう。スコアラーやベンチも関わってチームの作戦が決まるんですから。

(後編につづく)

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