慢性的なマスク不足の救世主となるか? 建設機械用油圧フィルタ製造会社が従来製品より高機能なマスクを開発
新型コロナウイルスの影響で、慢性的なマスク不足が続く日本。そんな中、ヤマシンフィルタ株式会社がマスクシート開発に乗り出した。
マスク製造の会社としてはあまり聞いたことのない当該企業。だが、それもそのはず、本業は建設機械用油圧フィルタを製造している会社だという。
「60年以上にわたって培ってきた建設機械用油圧フィルタ製造開発のノウハウを活かし、今般のマスク不足の影響を軽減したい」と、世界初の特殊なナノ繊維構造をもつ同社のフィルタ素材を活用したマスク用インナーシートを開発するに至った。製造されたフィルタシートは今後各種メーカーへ供給をしていき、5月にはマスク自体も生産予定である。
そんなヤマシンフィルタの取締役管理本部長である井岡周久氏を、モトタキ記者が深堀りした。
――社内ではどんな新型コロナウイルス対策をしていますか?
井岡氏:当社では、いち早く原則在宅勤務への切り替えをしました。しかし、どうしても出社が必要な従業員がおり、自社開発のナノファイバーを活用して、自社従業員向けにマスクの試作をしました。幸い、全従業員の健康を維持できております。また、マスク製造にあたっては、社内連携を密に図ることで、生産計画を調整しました。おかげさまで主力製品の製造に支障は出ておりません。
――建設機械用油圧フィルタとは、油圧システムに使われるそうですが、それゆえの商品としての強みはどんな特性がありますか?
井岡氏:当社の建設機械用油圧フィルタは過酷な作業環境で建設機械の動力機構を守るために作られております。当社のフィルタマスク・フィルタシートは全く同じ製法によるものであり、高いろ過精度と強靭な耐久性が備わっています。ろ材専門メーカーである当社ならではの高機能品を生み出せたと自負しております。
――製品の特徴や一般製品との違いはどんなものがありますか?
井岡氏:当社のマスク用フィルタは、極めて細い繊維の立体構造で出来ております。200から800ナノメートルの超極細繊維で生まれた、数億以上の孔によって物理的に異物を捕集いたします。
一般的なマスクは静電気で異物を捕集しますが、当社のフィルタマスクは静電気の帯電に頼らないのが大きな特徴と言えるでしょう。一般的なマスクは人の呼吸に含まれる水蒸気によって機能劣化が短時間で起きてしまいます。しかし、当社のフィルタマスクは帯電に頼らないため、長時間使用しても捕集性能の低下はわずかであり、洗濯しての再利用にも耐えられます。
現在、アメリカの労働安全衛生総合研究所(NIOSH)の規格であるN95認定に向けた申請を進めている最中でもあります。
――専門外であるマスク用フィルタやマスクの生産に難しさはありませんでしたか?
井岡氏:初めての経験であり、試行錯誤を繰り返しました。耳にかける部分や鼻のワイヤーの部分、肌にあたる不織布の素材についても、試作品が出来上がるたびに社内で使用感を確かめて、改善を続けて今に至ります。
マスク成形用の機械投資の目処も立ちましたので、本格的な量産に踏み切ることができるようになりました。
――各種メーカーへの供給をする狙いはなんでしょうか?
井岡氏:私たちが生活する環境の空気汚染でいえば、PM2.5や今回のウイルス問題など健康被害の原因物質は多様で多量になってきています。当社の開発したナノファイバーの量産技術で、こうした健康被害原因物質についての問題を解決し、社会貢献に役立ちたいとの思いが一番にあります。
しかし、これまで企業様を中心としたビジネス展開をしてきた為に、一般消費者の皆様へ素早くお届けできるノウハウがありませんでした。当社のフィルタマスクを多くの皆様にご活用いただくためにも、今後も大手小売チェーンやマスクの製造会社様へ供給をしていきます。
――国内マスク用フィルタやマスクのご購入を考えている人々や、共に量産を手伝ってくれる事業パートナーや提供先になりうる企業へのコメントをどうぞ!
井岡氏:当社の創業以来の社訓は「仕濾過事(ろかじにつかふる)」です。すなわち、世が求めるフィルタを供給することを通じて社会貢献をすることです。
今般の新型コロナウイルスの世界的流行に対して、当社の高機能マスク・取替シートを一日も早く、一人でも多く届けたい。それがフィルタ専業メーカーである当社ができる最大の社会貢献であると信じて、量産に踏み切りました。何卒ご理解とご協力を賜りたくお願いいたします。
(インタビューはここまで)
より性能の高いマスクが開発されることによって、人々により良い健康をもたらし、社会にとっての利益にも繋がることだろう。一刻も早いヤマシンフィルタのナノフィルタを使ったマスクの普及を期待したい。
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