西川美和監督「多様化する女性の悩みを描きたかった」 映画『夢売るふたり』が「トロント国際映画祭」で喝采!
9月8日(土)に公開を迎えた、松たか子、阿部サダヲ初共演の西川美和監督最新作『夢売るふたり』。 現地時間の9月10日(月)、第37回トロント国際映画祭でワールドプレミア実施が実施され、西川監督が登壇。拍手喝采の中、舞台挨拶を行いました。
『夢売るふたり』は、阿部サダヲと松たか子が演じる、地味ながら幸せな暮らしをおくっていた夫婦が経営する小料理店を火事で失い、新たに店を建てる為に2人で協力して「結婚詐欺」を企てるという衝撃的な物語。
『蛇イチゴ』(03)、『ゆれる』(06)、『ディア・ドクター』(09)で国内外の映画賞を総なめにし、いま最も注目される監督である、西川美和さんの新境地であり、大きな話題を呼んでいる作品です。
上映前の舞台挨拶で、満席となった客席に迎えられた西川監督は、「(トロント映画祭の常連である師匠の)是枝裕和監督から、トロントはとてもいい映画祭だといつも聞いていたので、ここに来ることができて本当に嬉しいです」と興奮気味に挨拶。
上映中はコミカルな演技や演出に終始笑いが起き、エンドロールが流れると、会場は大きな拍手に包まれ、上映後の西川監督と客席の Q&A も大いに盛り上がりました。終了後も、熱狂的な世界の“西川ファン”に取り囲まれ、長時間質問攻めにされながら、サインや写真撮影に応じる西川監督の姿が見られました。
『夢売るふたりは』は、トロント映画祭に続き、第31回バンクーバー国際映画祭(9/27~10/21)、第56回ロンドン映画祭(10/10~21)、第48回シカゴ国際映画祭(10/11~25)、第16回オーストラリア日本映画祭(11/16~19)へも出品が決定しており、今後も海外での評価が多いに期待されています。
西川美和監督によるQ&Aは以下の通り。筆者もこの作品を観ましたが、阿部さんと松さんの夫婦役が素晴らしく、現代的な人間関係の闇と恐ろしさが含まれた、とてもとても素晴らしい作品でした。西川監督の過去作品が好きな方はもちろん、多くの女性にオススメしたいです。
「トロント国際映画祭」西川美和監督によるQ&A
――オリジナルの脚本に拘る理由は?
西川:今の日本では、原作がある映画がほとんどです。物語を作るのはいちばん大変な作業です。苦しいんだけれど、最もやりがいを感じる作業でもあります。私の場合は、自分が作った物語だからこそ、責任をもって監督ができるんです。だからオリジナルの脚本を書くことは今後も続けて行きたいと思っています。
――食べ物がたくさん登場するのが印象的でしたが、何かそこに夫婦の関係を示唆しようとする意図はあったのですか?
西川:そんな質問をされたのは初めてです(笑)。特にそういった意図はありませんでしたが、夫婦で結婚詐欺をする、という設定にしたときに、夫婦の職業は何がいいだろうと考えて、夫婦一緒に仕事をしている自営業がいいかな、では居酒屋をやっているのはどうだろう、と思ったのです。
――(女性観客から)結婚詐欺に騙される女性へ対する警告の意図があったのですか?
西川:警告ということは考えていませんでしたが、今の日本では、女性の生き方が非常に多様化していて、生き方に色々な選択肢があるだけに、そのぶん悩みが多く生きづらい世の中になっていると感じるんです。そんな女性たちの悩みを描きたいという思いがありました。傍から見たら、満足しているように見える女性でもどこか欠落していて、その欠落している部分に付け込まれる、というのは誰でもあると思います。誰でも詐欺に遭う可能性はあるのではないか、と。だから気をつけてくださいね(笑)。
――最後に一言お願いします。
西川:ちょうどこの映画の準備中に、日本では大きな震災がありまして、映画を作ること自体に疑問を抱いた時期もありました。でも、震災に遭われた方が、いつか日常に戻れた時に、また新しい物語を観られる環境を作っておきたいと思って、頑張って作りました。
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