大人を魅了してやまない街、高岡へ。漆器、大仏、お抹茶にほっこり

大人を魅了してやまない街、高岡へ。漆器、大仏、お抹茶にほっこり

前回の旅で、生まれて初めて富山県富山市を訪れた。その旅があまりに楽しく、東京に帰ってからしばらく富山の話ばかり人にしていたのだけど、今回なんと、「富山県高岡市に行ってみませんか」と編集部から提案をいただいた。そりゃあもう行きますよ、と即座にメールを返し、すぐに旅行の支度を始めた。

東京駅

まだ見ぬ高岡を想像する

JR東京駅から目指すJR新高岡駅までは、北陸新幹線で2時間50分ほど。

どうしてこんなに富山県に行くことをうれしがっているのか、ピンとこない方もいると思うのだけど(前回富山市に行くまでは、「富山って石川の隣?」くらいの認識だった)、富山市を訪れたとき、食べたごはんが全部おいしかったことと、町並みが決して派手でないのに美しいこと、それから人がほのぼのとやさしいことに気づき、いいところだなあ、としみじみ思ったのだった。

とはいえ、前回お邪魔したのは富山市で、今回行くのは高岡市。地図を見ながら、たぶん富山市とは全然違うんだろうなあ、と想像する。

新高岡駅

初めての列車にドキドキ

新高岡駅で新幹線を降りる。

スマホの温度計を確認すると5度だった。北陸はやっぱりまだまだ寒い。

ここから城端(じょうはな)線に乗り換え、JR高岡駅へ向かう。1駅なので3分ほど。

城端線

城端線

ランチするお店の最寄り、広小路電停を目指して高岡駅でさらに万葉線に乗り換える。ローカル線あるあるだと思うのだけど、どのタイミングでお金を払うのか、ICカードは使えるのかがわからなくて戸惑っていたら、車掌さんが親切に「降りるときにこの箱にお金を入れてくださいね」と教えてくれた。念のため、「広小路電停で降ります!」と宣言して座席に座る。

万葉線

万葉線。バスのような乗り方はややトリッキー

万葉線は、ブザーを押して降車を知らせる形式。私はブザーを押し忘れていたのだけど、(宣言していたおかげで)車掌さんが停まってくださった。よかった。広小路電停でお礼を言って降りる。

いきてるごはんcafē鶴麹本店

発酵調味料たっぷりのカフェでランチ

寒い時期ということもあるのか、街は少し静かな雰囲気。徒歩2分ほどで、「いきてるごはんcafē鶴麹本店」に着く。

いきてるごはんcafē鶴麹本店

こちらは、化学調味料と白砂糖を不使用かつ、発酵調味料をたっぷり使った食事が自慢のカフェ。限定8食の「高岡ものづくり美腸定食」(1,500円税込)をいただいた。

酒かすを使ったお味噌汁は、甘酒のような甘みがありホッとする味。

高岡ものづくり美腸定食

定食には小鉢が5種付いてくる。器がどれもかわいい……としげしげ見ていたら、錫(すず)や漆など、どれも高岡の伝統工芸品を使っているとのこと。素敵な器でおいしいごはんを食べられるのは、すごく贅沢だ。

山町筋

土蔵造りのレトロな町並みを歩く

Alt:山町筋

お店を出て、辺りを散策してみる。15分ほど歩くと、土蔵造りの建物が立ち並ぶエリアにたどり着いた。地図を見てみると「山町筋 重要伝統的建造物群保存地区」とある。通りの中ほどに「土蔵造りのまち資料館」という施設があったので、入ってみた。

土蔵造りのまち資料館

解説員の方によると、ここ山町筋は、土蔵造りの旧商家が600mほど続く地区。江戸初期、加賀藩主の前田利長が高岡に城と城下町を建造させたことをきっかけに町が開かれたのだけれど、その後の「一国一城令」によって高岡城は廃城になってしまったのだそう。高岡が廃れることを恐れた3代目当主の前田利常の政策によって、城下町から商人の町へと徐々に発展していった、という歴史があるのだとか。

当時の政策のひとつとして、加賀藩が取り組んだのが「鋳物※(いもの)工場」の開設。鋳物職人を高岡に招いたことをきっかけに、「高岡銅器」は高岡を代表する産業になっていったという。

※高温で溶かした金属を鋳型の空洞部分に流し込み、冷やして固める加工法のこと。

そんなお話を聞いてから再び山町筋を歩いてみると、「漆器くにもと」という漆器屋さんが目についた。ちょっと見てみようかな、と軽い気持ちで入ったことに後悔する。並んでいる食器や小物が、どれもおしゃれすぎる……!

漆器くにもと

こちらは、高岡の伝統工芸品のひとつである「高岡漆器」の老舗販売店。オリジナル商品の漆のお盆、「ほっこり盆(3,850円税込)」がかわいすぎて、思わずその場でひとつ買ってしまった。

お店オリジナルのお盆

お店オリジナルの「ほっこり盆」

COMMA,COFFEE STAND

人気のコーヒースタンドで休憩

コンマコーヒースタンド

お店を出て、山町筋の端あたり、「COMMA,COFFEE STAND(コンマコーヒースタンド)」で休憩する。

こちらのお店は、築100年以上の歴史ある商家の建物をリノベーションして造られたのだとか。人気の自家製シュークリーム(400円税込)とドリップコーヒー(500円税込)をいただく。

自家製シュークリーム

東京の「菓子工房ルスルス」の監修で作ったというシュークリームは、地元の卵と牛乳を使っていて、当日焼いた分しか出さないので、早めに売り切れてしまうこともあるそう。カスタードクリームが濃厚で、生地がサクサクしていてとってもおいしかった。

コンマコーヒースタンドのあとは宿泊予定の高岡駅前のホテルへ。夕食を食べたり、お風呂に入ったりしてのんびりする。

フロレゾン

とはいえ酒が飲みたい

このまま寝ちゃおうかな……とも思ったのだけど、酒飲みにはちょっとそれも物足りない。高岡駅から歩いて8分ほど、「floraison(フロレゾン)」というワインバーを見つけたのでお邪魔することにした。

フロレゾン

店主の炭谷さんがひとりで営んでいるカウンターだけのお店なのだけど、ワインバー、と聞いて想像するような格式張ったお店ではなく、おしゃべりを楽しみながらゆっくり飲める本当にいいお店だった。

グラスワイン(赤)

グラスワイン(赤)

10種類(赤白スパークリング合わせて)から選べるグラスワイン(1杯800円税込〜)などをいただく。

ほろ酔いになっても歩いて帰れる距離なのがうれしい。ホテルに戻り、ぐっすり寝た。

願道

3つの社寺を結ぶ通りを散策

2日目、今日は「願道(ねがいみち)」を散策する。願道とは、願いをかけながら「高岡関野神社」「高岡大仏」「越中国一宮射水神社」の3か所を結ぶ約1kmの通り。まずは、高岡駅から7分ほどにある高岡関野神社を目指して歩き始めた。

高岡関野神社 高岡関野神社 願かけなで牛

「願かけなで牛」と書かれた牛をなでていたら、神社の方に声をかけられた。「綺麗な神社でしょう、射水神社の方がもうちょっとしっとりしてるんだけどねえ」とのこと。

しっとり……? と想像を巡らせながら神社を出て願道を歩いていくと、10分ほどして、右側に突如なにか大きいものが見えた。

高岡大仏

だ、大仏だ!

高岡大仏は、高岡銅器の職人たちの技術の結晶と呼ばれているのだそう。奈良・鎌倉に並ぶ日本三大仏の一つ。高岡関野神社の方のお話によると、かつて与謝野晶子が「鎌倉の大仏よりも美男」と評したことで有名になったのだとか。

お参りをし、大仏おみくじを引いたら「大仏吉」だった。大吉よりいい運な気がしてうれしい。

越中国一宮射水神社

大仏からさらに8分ほど歩くと越中国一宮射水神社に到着する。神社は「高岡古城公園」の中心部に位置していて、周囲が公園ということで、地元の方が散歩がてらお参りをしていたりする(たしかに静かで風情があり、いわれてみると「しっとり」していた)。広い敷地の中は自然豊かで、特に3月は樹齢400年の御神木「八重紅梅」と白梅が見事だった。

越中国一宮射水神社 紅梅

大重亭

ボリュームたっぷりのハンバーグステーキ

神社から、来た方向に戻るように歩いて10分ほど、ランチは「大重亭」でいただいた。

大重亭 ハンバーグステーキ

ハンバーグステーキ(1,980円税込)

こちらのお店、1940年代に現オーナーのお祖父さまにあたる方がオープンした老舗店。一度惜しまれつつ閉店したものの、5年前に再オープンしたのだとか。おいしいお肉と洋食が食べられるお店として地元の方から愛されているようで、お店への道をお聞きした地元の方に「これから大重亭行くんですか? あそこはおいしいよねえ」とニコニコ言われるほど。

その言葉のとおり、いただいたハンバーグステーキは肉厚でとにかくジューシー。パプリカやたまねぎといった付け合わせの野菜もとても新鮮で、シャキシャキとしていた。

木田芳香園

日本茶専門店でお抹茶をいただく

ボリュームのあるお肉をいただいたあとなので、ちょっと口をさっぱりさせたくなった。5分ほど歩いて、高岡大仏のほぼ目の前にある日本茶専門店「木田芳香園」に入る。

木田芳香園

この場所で昭和初期から営業しているという木田芳香園は、挽きたてのお抹茶や抹茶スイーツが人気のお店。店内にある石臼(うす)で午前中に挽いたばかりだというオリジナルのお抹茶(250円税込)を、その場でたてていただいて飲んだ。苦味がなく、まろやかでとてもおいしかった。

抹茶 九州の銘菓「黒棒」

九州の銘菓「黒棒」と一緒に出していただいた

夏季(4月下旬~10月上旬)には、お抹茶を使った濃厚抹茶ソフトクリームも提供され、人気商品なのだそう。夏にもまた来たい……!

再び願道をのんびり歩き、途中にあったギャラリーでクラフト品の展示を見たりしながら、高岡駅に戻った。そこから再び城端線で新高岡駅へ。新高岡駅内には伝統工芸品の展示販売をしている「GALLERY MONONO-FU」が併設されている。

新高岡駅

「なにもない」なんてとんでもない!

夕方ごろ、「GALLERY MONONO-FU」で自分や友だちのために買ったお土産の袋を抱え、東京行きの新幹線に乗り込んだ。

自分のお土産に買った、工芸品の和紙を使った印鑑ケース(1,870円税込)がかわいい。

工芸品の和紙を使った印鑑ケース

工芸品の和紙を使った印鑑ケース

旅の道中、お話しした高岡の人たちは「よくもまあこんな、何もないところに……」とおっしゃっていたけれど(もちろん謙遜もあるのだと思うが)、何もないなんてとんでもない、本当に楽しかった。

せかせかと動くのがもともと苦手な私にとっては、駅を中心にコンパクトに観光名所が集まっているのもうれしいし、クラフト品や伝統工芸品が好きな人はもちろん、人とかぶらない、かわいいカトラリーや小物雑貨を探している人にとっても見どころの多い街だと思う。

高岡では、例年、秋頃にクラフト市「高岡クラフト市場街」が開催されるという。その時期にまた行こうと思っている。

東京駅

掲載情報は2020年4月17日配信時のものです。現在の内容と異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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