かつて三菱のフラグシップモデルとして登場したディグニティは、今となっては超希少な絶滅危惧車だ
三菱のフラッグシップモデルとしてのディグニティ
かつて三菱のフラッグシップモデルとして、ディグニティという車が存在した。それまで「デボネア」がフラッグシップとして存在していたが、心機一転新しい名前での投入だった。
同時期のプラウディアをベースとしたロングホイールベースモデルで全長5335㎜、ホイールベースは3080㎜のストレッチリムジンのような風格だった。
1999年12月に発表され、2000年2月に投入されたが……、リコール隠し問題の影響もあってか、翌年3月でプラウディアとともに販売を終了。しかもディグニティの生産台数は、わずか59台だったというから聞くも語るも涙だ。
2012年に2代目が再登場
2001年に絶版となってから久しぶりに「ディグニティ」の車名を聞いたのは、2012年の5月のことだった。
なんと、日産 シーマが三菱にOEM供給されることになったのだ。なお、ディグニティの兄弟車であったプラウディアも日産 フーガの2.5Lモデルと3.7LモデルのOEM供給で復活した。
ディグニティは最高出力306psの3.5L V6エンジンに、68psを誇る電気モーターを組み合わせた、ハイブリッドとなった。
全長は5095㎜、全幅1845㎜、全高1510㎜、ホイールベース3050㎜で、全長以外はシーマと同じ。初代ディグニティと比べるとこじんまりした雰囲気は否めない。5120㎜とシーマの全長の方が長いのは、OEM供給元への配慮であるのだろうか? ちなみにメッキパーツの使用量もシーマの方が多い。
ちなみに、プラウディアとディグニティの見分け方はリアドアの長さにある。両車のホイールベースの差は160㎜で、延長された分は後席の居住スペースにあてがわれていた。また、フーガやシーマのフロントグリルが横縞なのに対し、プラウディアとディグニティは縦縞となっていた。
フラッグシップモデルがOEM供給されたもので果たして売れるのだろうか……、と思ったのは筆者だけではあるまい。
大型セダンを自社開発するほど資金が潤沢ではないという切実な懐事情と、ラインナップの拡充を図りたい、という思いから生まれたと解釈できよう。
そういう意味でディグニティは初代も、2代目も自動車史に残る車だとも思う。いずれも販売面では失敗で、今となっては希少な車となった。
現状残り3台の絶滅危惧車
カーセンサーnetを見てみると原稿執筆時点(2020年4月7日)で、ディグニティの掲載台数はたったの3台しかない。2代目ディグニティは2016年まで一応、販売されていたのだが……、掲載物件は2013年式と2014年式のみ。
いずれも10万㎞オーバーの車両だが、内装の状態は綺麗に保たれている。ついつい三菱グループ系の役員車両だったのだろうか……、という邪推をしてしまった。
両車、100万円半ば強という価格設定がなされている。同時期のシーマよりも若干高い雰囲気もあるが、あくまでも「若干」でありディグニティの希少性を考えれば納得できなくはないだろう。
三菱にとっては不名誉な歴史の一ページとなってしまったディグニティだが、くしくも車名は“尊厳”を意味する言葉だった。
車としての完成度はまだまだ現役であるし、高級車らしい威厳もある。そういう点においては、見逃された車と呼べなくもない。
ちょっとでも気になった方は、中古車物件をチェックしてみてほしい!
文/古賀貴司(自動車王国)、写真/三菱
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