【「本屋大賞2020」候補作紹介】『店長がバカすぎて』――書店員として奮闘する主人公に共感し、思わず応援したくなる!

【「本屋大賞2020」候補作紹介】『店長がバカすぎて』――書店員として奮闘する主人公に共感し、思わず応援したくなる!

 BOOKSTANDがお届けする「本屋大賞2020」ノミネート全10作の紹介。今回、取り上げるのは早見和真著『店長がバカすぎて』です。

******
 デビュー作の『ひゃくはち』、第68回日本推理作家協会賞を受賞した『イノセント・デイズ』、白濱亜嵐さん主演でドラマ化もされた『小説王』など、数々のベストセラーを世に送り出している早見和真さんの新作となるのが本書です。

 主人公の谷原京子は28歳、独身。本が何よりも好きな彼女は現在、「武蔵野書店」吉祥寺本店で文芸担当の書店員として働いています。そして、本のタイトルにもなっている「店長」というのが彼女の上司にあたる山本猛(たける)。つかみどころがない「非」敏腕な店長のもとで京子がなんとか毎日をやり過ごせているのは、憧れの先輩書店員・小柳真理の存在があるから。しかしある日突然、小柳が店を辞めることになってしまい……。

 新刊の推薦コメント執筆や作家によるサイン会、客からのクレーム対応など、書店の内情を臨場感たっぷりに描いている本書。そのあまりのリアルさに、全国の書店員から驚きや共感の声が沸き上がっているといいます。本や本屋さんが好きな人、書店員の仕事に興味を持っている人には、とても惹きつけられる設定かと思います。

 しかし、それにとどまらず、日々葛藤しながら働くすべての人たちにとっても「自分の物語」として読めるのが本書の良さ。軽薄で頼りない上司に振り回されたり、薄給で契約社員という立場に不安を感じたり、次々と降りかかるトラブルに「今度こそ辞めよう」と本気で思ったり……。こうした京子の姿に自分を重ね、感情移入してしまう人はきっと多いに違いありません。

 さらにそうした中に、ロマンスや謎解きも含まれているという贅沢さ。京子の恋のゆくえやファンである覆面作家の正体など、最後の1ページまで読者を飽きさせない展開となっています。そして「バカすぎて」とタイトルで罵られている店長が、章を追うごとに魅力的に見え、愛しくすら感じてしまうから不思議です。

 抱腹絶倒あり、ドキドキハラハラあり、うるっとくるような感動あり。特にラストの畳みかけるようなどんでん返しは圧巻。早見さんの力量がじゅうぶんに発揮された極上のエンターテインメント小説として、本屋大賞にノミネートされるのも納得の一冊です。

■関連記事
【「本屋大賞2020」候補作紹介】『線は、僕を描く』――水墨画との出会いで人生が変わった青年の成長物語
昭和29年、高尾山で女性たちが失踪した――。人気ミステリ「百鬼夜行シリーズ」最新長編
第161回芥川賞受賞作 なにげない日常に潜む、奇妙で滑稽な「狂気」

  1. HOME
  2. 生活・趣味
  3. 【「本屋大賞2020」候補作紹介】『店長がバカすぎて』――書店員として奮闘する主人公に共感し、思わず応援したくなる!

BOOKSTAND

「ブックスタンド ニュース」は、旬の出版ニュースから世の中を読み解きます。

ウェブサイト: http://bookstand.webdoku.jp/news/

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。