“塩こうじ”の発祥は大分? 東北? 常温保存できる“真”レシピとは

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“塩こうじ”の発祥は大分? 東北? 常温保存できる“真”レシピとは

魔法の調味料“塩こうじ”。まだまだ流行中のようですね。最近ではなんと“しょう油こうじ”なるものまで登場したとか。こういった派生製品が出始めると、間もなくブームも終えんなのかと思ってしまいます。
塩こうじは料理の幅を広げる素晴らしい調味料。一過性のブームに終わるのではなく、全国の食文化にしっかりと根を下ろすことを願うばかりです。

さて、ウエブ等で塩こうじについて調べておりますと、発祥の地として“大分発祥”が数多く語られていることに気付きます。東北の『三五八漬け』の系譜に連なる調味料だと思っていたため、発祥は東北、それも秋田、山形、福島の辺りと認識しておりました。不思議に思いブームの起こりを調べてみました。

ブームの発祥は大分県

塩こうじが注目され始めたのは、2011年後半のこと。このブームの火つけ役は、大分県佐伯市『糀屋本店』の女将“浅利妙峰”氏だと言われています。ウエブの情報を眺めると、大分発祥説の根拠として糀屋本店の存在を挙げる記事が多いです。
浅利氏が女将になったのが、2007年。傾きかけていた家業の起死回生の一手を探り、江戸時代の書物を探り見つけたのが“塩こうじ”だったそうです。こうじづくりは300年以上の歴史を持つと言われる糀屋本店ですが、塩こうじと出会ったのは2007年以降ということになります。当時のことを、朝日新聞のコラム『ひと』の中で振り返っていらっしゃいます。

「塩こうじ」なんて聞いたこともなかったが、どんなものだろうか、と試しに魚や野菜にからめて食べてみた。うまみが口いっぱいに広がる。「えっ、何これ。一流のシェフになったみたい」。こうじがたんぱく質や糖を分解し、うまみ成分を引き出していたのだ。
簡単でおいしい。全国のこうじ屋にとって起死回生の調味料になるかもしれない。そんな期待を抱いて考案した塩糀料理のレシピをブログや本で公開した。健康志向の人の間で口コミで広がり、昨年からテレビや雑誌でとりあげられた。各地でこうじが品切れになる店が相次いでいる。
(朝日新聞 2012年4月19日 朝刊『ひと』欄より引用)

塩こうじを調味料としてくくり直し、各メディアを通じて全国に広めた手腕は見事と言えましょう。今回の“ブームの発祥地”として、大分県ならびに糀屋本店の名を挙げることは、間違いではないようです。

食文化の発祥は東北

浅利氏の女将就任からさかのぼること6年。2001年にはすでに、料理漫画『おせん(3)』の「第十八話 おせん的、朝メシ自慢」の中で、塩こうじが紹介されています。作者の“きくち正太”氏は、秋田県のご出身。おそらく、ご自身の食の経験からのご紹介と推察します。

東北は米どころとして有名な地。良い米がとれるということは、良い酒ができるということ。もちろん東北は、酒どころとしても有名です。そして酒の歴史は、こうじの歴史と言い換えても間違いではありません。わたしたちが想像する以上に、こうじは東北の食に深く根を下ろしていたのではないでしょうか。

このことは、古くから東北で愛されている“三五八漬け”の存在からも、容易に推察できます。三五八漬けは、塩、こうじ、米を“3 対 5 対 8”で合わせて漬床とする、いわゆる“こうじ漬け”です。漬物という日常の食卓に欠かせない食品にも、こうじが取り入れられているのですから、調味料としてこうじが取り入れられていても、何ら不思議はありません。
 

2倍も違う塩の量

現在流通している塩こうじの大半は、糀屋本店のレシピが元になっているようです。糀屋本店レシピと、東北を発症とする伝統的レシピを比べますと、一点だけ大きく異なります。その違いは、塩の量。
糀屋本店のレシピは、“こうじ200g、塩60g、水250cc”で塩こうじを作ります。これに対し伝統的レシピでは、塩を倍の“120g”使います。

昔から“こうじ1升に塩3合”と言われており、つまり体積比で“10 対 3”が伝統的なレシピです(重量比に直すと、“10 対 6”となります)。梅を漬ける場合も“梅1升に塩3合”と言われており、保存性を求める食品の場合“10 対 3”の体積比はよく用いられます。
現在流通している塩こうじの大半は、冷蔵して半年程度しか保存ができません。しかし伝統的レシピの塩こうじは、常温で何年でも保存が可能です。
「冷蔵庫のない時代ならいざしらず、現在は冷蔵も容易なのだから、塩こうじの塩分も少ない方が良い」と考える向きもあるでしょう。しかし調味料なのですから、やはり保存性にも期待したいところ。塩分の摂取量を減らしたいのであれば、料理に使う際に使用量を減らせば良いのですから。

また、経年によって加えられる円熟にも、やはり期待したいところです。できたてはとがった塩辛さを感じますが、年月を重ねるごとにまろやかな味わいに熟成します。冷蔵で半年の保存しかできないのでは、円熟の極みに達することは叶いません。

塩こうじの“真”レシピ

■材料
・米こうじ:200g
・塩   :120g
・水   :250cc

■作り方
1、こうじをほぐし容器に入れる(密閉できる容器がオススメ)
2、塩と水を加え混ぜ、ラップを掛けて蓋をする
3、常温で一日保存。こうじが水を吸ってボソボソになっているようなら、ヒタヒタになるまで水を足す。
4、一日一回かき混ぜる。十日から二週間程度で完成。こうじがかゆ状になり、指で簡単に潰れるくらいが目安。

塩分濃度が高いので、常温保存で大丈夫です。完成してしまえば、かき混ぜもあまり必要ありません。米こうじさえ手に入れば、簡単に作ることができます。ぬか床のように機嫌を損ねることもないので、本当に手間いらずで簡単です。

漬け焼きに、浅漬に、かけダレにと、料理の幅を広げてくれる塩こうじ……ぜひご自分で、作ってみてはいかがでしょうか。

■参考
2012年7月に発売された『おせん 真っ当を受け継ぎ繋ぐ。(6)』では、塩こうじについての詳細や、塩こうじのレシピ、そして塩こうじ料理のレシピなど、塩こうじについて広く紹介されているそうです。ご興味がありましたら、ぜひご一読ください(実は筆者は未読なので、早速注文したいと思っています)。

※この記事はガジェ通ウェブライターの「よっぷぃ」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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