AIが普及した2030年はどんな社会になっている? 映画『AI崩壊』に見る“将来十分に起こりうる”パニックとは

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大沢たかおさんを主演に迎え、『22年目の告白 -私が殺人犯です-』の入江悠監督がAIをテーマにオリジナル脚本で挑むサスペンス超大作『AI崩壊』が1月31日より公開となる。

本作の舞台はAIが私たちの生活に欠かせなくなった10年後の日本が舞台。しかし、人を救うはずの医療AI<のぞみ>が突然暴走を始め、人間の生きる価値を選別し殺戮を開始。大沢さん演じる桐生は警察からAIを暴走させたテロリストに断定されてしまい、日本中にAI捜査網が張り巡らされる中、逃亡劇を繰り広げることに。

日々の健康から、重病を持つ方への投薬、手術に至るまで的確に処置をしてくれる医療AI<のぞみ>。次第に複数の企業や銀行とも連携し、支出の管理や自動車の運転までAI<のぞみ>が一括で行ってくれるという素晴らしく便利な社会。しかし、そのAI<のぞみ>が突然暴走をはじめたら……? 映画『AI崩壊』では近い将来十分に起こりうる様々な出来事が描かれているのだ。

2020年「AI」はここまで進化している

「AI」とは、Artificial Intelligenceの略。「人工知能」を意味する。ガジェットやサービスでありながら、人間の知能の様に様々な事を学習して動いてくれるAI。すでに私たちの身の回りにはスマホのアシスタント機能や、高性能スピーカー、お掃除ロボット、AI搭載冷蔵庫等が身近なものになっている。さらに昨年のNHK紅白歌合戦ではAIによって復活したAI美空ひばりが新曲を披露するなど、2020年においてすでにAIは私達の生活に浸透しているのだ。

さらに劇中にも登場する自動運転車は、現代でも技術が進化し実用化に向けて様々な開発が行われている。先日開催された電子機器の見本市「CES2020」では、車載用AI(人工知能)コックピット「Cockpit DMX」(注1)がイノベーションアワードを受賞。これは、他の車との距離を測ったり、危険予測をするだけではなく、運転手の顔をモデリングして居眠り等を防止。目の動きで操作可能な所も特徴。SONYもプロジェクト名『VISION-S』(注2)として、AIやクラウド技術も活用した車載ソフトウェアの制御で、機能が継続的に進化し続ける車の開発を発表した。

他にもAIによって相性の良い人を導く婚活システムや、学校でのいじめの事例を分析して深刻化を防ぐシステム、農業ではAIが収穫時期を教えてくれるシステムなど、様々な分野でAIの研究が進んでおり、AIは2020年において世界中で最もホットな話題の一つとなっているのだ。

AIが普及した2030年はどんな社会になっている?

新進気鋭のスタートアップから、SONY、オムロン、スクウェア・エニックスと私たちの身近な企業までが続々と開発を続けているAI分野。10年後の2030年にはどの様にAIが生活に広がっているのか?

映画『AI崩壊』の中では、全国民の個人情報を完全に掌握し管理している医療AI<のぞみ>が普及。ウェアラブル端末一つあれば、起床(AIが起こしてくれる)、身支度(天気や気温を基にAIが提案してくれる)、食事(健康状態に合うメニューをAIが提案してくれる)、自動運転の車で出勤、支出の管理も銀行に行かずに楽々……といった様に家の中でも外でも、効率的に便利に生活することが出来るのだ。もちろん医療用としての機能は抜群。体に不調が現れたらAIが教えてくれるだけでは無く、入院患者の投薬のタイミングや、難しい手術もAIの的確な指示・動作で、人の能力に左右されない医療を受けることが出来る。さらにホログラム機能を搭載した自動運転車も普及。まだ完全に自動運転に慣れていない人のために、あえて運転席にホログラムで人の姿を映すというユニークな機能付き。インフラ整備が整い、運転席に人が乗っていなくても車を運転できる未来がやってくる。現代社会から確実に進化し便利になった10年後の日本。その姿は必見だろう。

近未来のAI社会で現実に起こり得ることが怖すぎる

しかし、AIが当たり前になった便利な社会は良い事ばかりでは無い。個人情報を掌握したAIによる監視社会がやってくる。これは、犯罪を防ぐという意味では非常に有益だが、生活をしているだけで常に監視されているという、プライバシー侵害の問題と常に表裏一体だ。私達が普段持ち歩いているスマートフォンやパソコンに搭載しているカメラなどのIT機器から、勝手に個人情報が抜き取られ、悪用される危険性がある。劇中で、街中にあふれる監視カメラやスマートフォン、ドライブレコーダーのカメラから、AIは映った人々を瞬時に判別。AI暴走の疑惑をかけられた桐生(大沢たかお)はテロリストと断定され逃亡するが、これまでの逃亡劇と異なり、変装や裏道をまわるといった方法は通用しない。AIは体型や歩行パターンで個人を特定し、同時に行動予測もたてる。桐生がどう隠れようと発見されてしまうし、先回りされてしまうのだ。

また、AIの発展に伴い必ず話題となるのが「人間の職業が奪われるのではないか」という危惧。英オックスフォード大学のオズボーン准教授らが発表した人工知能に奪われそうな仕事についての論文(注4)では、タクシードライバー、貨物運送係、カフェ店員、事務員といった身近な職業から、スポーツの審判、モデルといった職業らが2024年には無くなると予想されている(論文の発表が2014年の為)。2030年が舞台の映画『AI崩壊』でも、AIに仕事を奪われた人々が国会の前でデモを起こす様子がおさえられている。さらにAIによって便利になる都心部と、AIの普及が進まない地方都市の”地域格差”が生まれてしまう。格差社会が広がってしまう可能性は十分にあるだろう。

さらに恐怖なのが、特定のAIにあらゆる情報が集約していることで、その情報が流出し悪用される危険が高まるということだ。銀行口座の凍結や資産の流出、医療用AIが正常に働かなければ病気の悪化や最悪の場合、命を落とすことも考えられる。劇中ではAI<のぞみ>が暴走し、年齢や病歴、年収、犯罪歴など様々な情報から、[生きる価値のある人間]と[価値のない人間]を”選別”し殺戮を開始!価値がない人間を死亡させるという恐るべき事態が発生し、日本中がパニックに陥ってしまう。もちろんフィクションではあるのだが、近い未来そういった事が起こらないとは言い切れない。映画『AI崩壊』は便利な物にすぐ飛びついてしまう私たちへ警鐘を鳴らす、今観るべき映画であると言えるのではないだろうか。

注1:https://www.youube.com/watch?time_continue=89
注2:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/vision-s/
注3:https://www.omron.co.jp/innovation/forpheus.html
注4:
https://www.iias.or.jp/wp/wp-content/uploads/c8261f2e296ecf07ad6915317e75ab85.pdf

フューチャリストが提言「AIを主導する人間の意志や善意が問われ始めている」

AIについて、さまざまな観点から未来を思考するフューチャリスト・小川和也氏は以下の様にコメントしている。

「行政サービスの99%がオンライン化されているエストニアは電子国家の先端的成功事例として注目を集めているが、極端にデータを独占し国民を過剰に管理するデジタル中央集権国家や企業が成り立ってしまった場合、テクノロジーの負の顔が現れる余地が生まれる。その頭脳としてもAIは不可欠であるし、現存のルーティン作業や人間にとっては難易度が高い多くの業務を担うようになるAI。現に、私が開発を手がけるサービスも、AIが分析やアウトプットを出す領域、自動化の範囲が日に日に広がっている。それらの場面では、AIを主導する人間の意志や善意、人間がなすべきことが問われるようになるだろう。いや、”だろう”ではなく、既に問われ始めている。これはもう、実感なのだ」

【小川和也プロフィール】
▪️アントレプレナー / フューチャリスト
▪️北海道大学客員教授
▪️J-WAVE『FUTURISM』(毎週日曜日21:00〜21:54)ナビゲーター

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。アントレプレナーとして独創的なアイデアで新しい市場を切り開く一方、フューチャリストとしてテクノロジーに多角的な考察を重ねて未来のあり方を提言している。

作品情報

【動画】映画『AI崩壊』本予告
https://www.youtube.com/watch?v=tMSlaXhGrfs [リンク]

『AI崩壊』
http://wwws.warnerbros.co.jp/ai-houkai/

2020年1月31日(金)全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画

【ストーリー】今から 10 年後の日本。AI が、全国民の個人情報、健康を完全に管理し、人々の生活に欠かせないインフラとな っていた。そんな“人に寄り添う”はずの AI が突如暴走、人間の生きる価値を選別し、殺戮を始める!日本中が パニックに陥る中、AI を暴走させたテロリストに断定されたのは、開発者の桐生だった。警察は日本中に張り巡 らされた AI 監視網で、逃亡者となった桐生を追い詰める。AI はなぜ暴走したのか。決死の逃亡劇は衝撃の結末 へと進んでいく!

(C)2019 映画「AI崩壊」製作委員会

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