縁起モノへの執着すごい(笑)縁起を担ぎまくる江戸っ子たちが楽しんだ「新年の迎え方」を紹介
♪もういくつ寝ると~……♪なんて呑気に唄っていたら、令和元年もあと数時間……来る令和二年に、夢と希望をふくらませている方も多いと思います。
「来年は、もうちったぁマシな年にしてぇモンだな」年越し蕎麦をすする江戸っ子(イメージ)。
そんなワクワク感は今も昔も変わりませんが、昔の人たちはどのようにして新しい年を迎えていたのでしょうか。
そこで今回は、江戸っ子たちが楽しんだ「新年の迎え方」について紹介したいと思います。
「一年の計は元旦にあり」というように、物事は何でも最初が肝心。江戸っ子たちは新年に縁起を担ぎまくることで、めでたい一年になるよう願ったそうです。
一、大晦日の夜は寝ない!
どういう訳かは知りませんが、オールナイトで元旦(元日の朝)を迎えることにより、寿命が延びると考えられていました(庚申待ちの影響かも知れませんね)。
もしかしたら、勝負ごとの好きな江戸っ子たちが「どっちが長く起きていられるか」を競い合っていたのかも知れません。
まぁ、無理のない範囲で楽しんで欲しいと思います。
一、年が明けたら「若水」を汲む!
若水(わかみず)とは年が明けて最初に汲む水のことで、それを飲むと一年間病気をしないと言われています。
新年が明けてすぐに汲むほど効能が高いとされ、一家の主人がその役目を務めるのが通例だったそうです。
江戸っ子たちは井戸から水を汲んだでしょうが、井戸のない現代なら、別に水道水でも(※神様=自然が恵んで下さった水には違いないので)問題ありません。
一、初日の出を拝もう!
どうせオールナイトを決め込むならば、目標のあった方が張り合いもあろうというもの。
そこで一年間で最初となる日の出を拝むことで寿命が延びると考えたのですが、江戸っ子たちは洲崎や愛宕山と言った初日の出スポットに押しかけていきました。
しかし、どこで拝もうが初日の出には違いないため、無理せず行きやすい(出来ればあまり混雑しない)ところでゆっくり待つのがいいでしょう。
一、初詣は「恵方」の寺社へ!
さぁ、年が明けたら初詣で……ですが、多くの江戸っ子たちは松の内(地域によって異なりますが、江戸では1月7日まで)に行けばいいやと思っていたようで、無理に元日でなくても、気が向いた頃合いにボチボチ言っていたようです。
で、何処に行くかですが、恵方(えほう。縁起のよい方角)にある寺社にお参りする「恵方参り」で開運効果が期待できます。
ちなみに令和二2020年の恵方は西南西と言われているので、自宅から西南西にある寺社に目星をつけておくといいでしょう。
一、福茶を飲んで、心身ともに元気いっぱい!
福茶(ふくちゃ)とは、梅干しと塩昆布を湯(先ほどの若水を沸かす)で溶いたもので、これを飲むと一年間心身壮健でいられると言われています。
「梅干しや塩昆布なんて、日ごろ用意してないよ」という方は、とりあえず(若水はともかく)梅昆布茶で代用が利くでしょう(元々、気の持ちようです)。
ちなみに、江戸っ子の新年ノルマは「若水を汲むこと」「初日の出を拝むこと」で、あとは元日じゅう寝ていてもよいとされていました。
あと、せっかく飲むなら定番のお屠蘇(とそ)も忘れずに。
一、正月三が日、妻に楽をさせる!
妻のいる家では、正月の三が日になるべく楽をさせてあげることで、妻があくせくしなくてすむ家になる=「家が繁栄する」と考えられました。
日ごろあれこれと家を支えてくれているからこそ、夫は外で存分に仕事ができる。そんな感謝を込めながら、なるべく楽をさせてあげましょう。
夫だって、外の仕事で疲れているのに……そんな野暮は言いっこなし(妻だって解ってくれているはず)です。
一、新春の勝負で開運出世!
もしも妻が退屈するようなら、負けても腹が立たない程度のゲーム(勝負ごと)を楽しむのがいいようです。
勝てば「幸先がいい」と喜び、負けても「厄が落とせた」とこれまた喜べるいいことづくめ。
お金を使うのは買い物としてではなく、名目は何でもいいからめでたいことのご祝儀として散財するのが吉とのことです。
一、初笑いで運気を上昇!
昔から「笑う門には福来る」というように、笑っている家には何かと幸運が舞い込むもの。
そこで新春初笑いと行きたいのですが、笑いの中でも猥談で笑うのがなぜか一番効果があるようです。
「いやだよもう、アンタったら……!」夫婦仲良く盛り上がるのはいいのですが、そのまま房事(こと)に及ぶと早く老け込んでしまうため、お楽しみは初夢にとっておきましょう。
一、宝船でよい初夢を!
初夢が一月何日の夢?なのかについては地方によって様々ですが、江戸では元日の夜に寝て見る夢を言うそうです。
枕の下に宝船を仕込んで寝ると、よい夢を運んできてくれるそうですが、宝船とは寶(宝の旧字体)を変形させて逆さに描いた宝船の絵に、回文を書き添えたもの。
刷り物も売られていましたが、自分で描くのも味わい深いもの。下の「貝」を帆のように大きく曲げて、上の部分はなるべくコンパクトに描くと。より宝船感がアップ。
「なかきよの とおのねふりの みなめさめ なみのりふねの おとのよきかな」
(長き夜の とおの眠りの 皆目覚め 波乗り船の 音の良き哉)
よく見ると、上から読んでも下から読んでも同じになっている上、しっかりと縁起を担いでいます。
寶をひっくり返した宝船の絵と言い、こういうのを考えつく江戸っ子の柔軟な発想には驚かされます。
終わりに
以上、江戸っ子たちによる「新年の迎え方」を紹介させて頂きましたが、どれも簡単にできるものばかり。
令和二年も、柔軟な発想であまりお金をかけず、それでいてユーモアを忘れずに生きていきたいものです。
それでは、よいお年を!
※参考文献:
杉浦日向子『一日江戸人』新潮文庫、2005年3月27日
日本の文化と「今」をつなぐ – Japaaan
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