二拠点生活の先進国・フィンランドへ。自給自足ライフを体験!
「二拠点生活(デュアルライフ)」の日本の実践者は1.3%(リクルート住まいカンパニー調べ)。一方、フィンランドは、“サマーハウス”と呼ばれる二拠点目での暮らしを楽しむ人が半数を超え、現地の人に聞いたところによると「8割の人は一度は体験している」という二拠点生活の先進国といわれている。今回は、自らも日本での二拠点生活を実践するSUUMO編集長が、現地で二拠点生活を体験したことをレポートします。
フィンランドには、サマーハウスの予約サイトがある!
2019年のトレンドワードとして「デュアラー(二拠点生活実践者)」を発表した弊社としては、デュアラー先進国のフィンランドで浸透の秘密を探りつつ、ちゃんと実体験もしないと。という理屈で、フィンランドでの二拠点生活体験&取材が決まりました。
今回は、フィンランドの知人のオッリさんに、彼の親族が所有する二拠点目の住居(サマーハウス)を体験させてもらおうと画策・相談しました。が、そのサマーハウスはヘルシンキから少し距離があり、時間がかかるということで彼から「サマーハウス専用の予約サイトがあるから、そこからヘルシンキにほど近いサマーハウスを探して予約しましょう」という提案が来ました。下記がそのサイトです。サマーハウスを持っている人が使わないときは人に貸し出すサービスでフィンランド版のAirbnbのようなものです。サマーハウス予約サイト。実際に予約した家がこちら。予約期間の初期設定が7daysと日本から見ると羨ましくなるような長さが、二拠点生活の先進国・フィンランドらしい
今回はショートステイで大人最大7名が泊まれるサマーハウスに2泊。ベッドシーツ、タオルレンタルやクリーニング代すべて合わせて616ユーロ(約7万円)でした。
鍵の受け取り等と、食料品の買い込み、準備はオッリさんに全部やってもらい、我々はヘルシンキから車でサマーハウスに乗り込みました。平均29平米といわれるサマーハウスのなかでは、平屋でかなり大きめのサイズ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
到着して最初に行うのは、アレ!
我々が到着したのは夕方の16時ごろ。到着後、荷物を置いて、部屋割りを決めて、オッリさんにすぐに連れて行かれたのは小さな小屋。「では、束になっている薪をこのトレイに積んで」と指示を受けて持って行ったのは、湖のほとりの別の小屋。ここはもしや?と思ったら、予想通りサウナ小屋でした。まずサウナから。さすがサウナの本場フィンランドです。日本でいうと温泉旅館に到着したら、浴衣に着替えてまずはお風呂にいく、あの感覚に近いです。薪をしまっておく倉庫。小屋はDIYでつくった感のある簡易なもの(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
サウナの温め方は、薪ストーブに似ています。炉内に薪をくべて、薄く剥いだ木片に火をつけて、それを火種に、最初にくべた薪に火を回します。薪が燃えると上にある石が徐々に温まっていくという形。石が温まるまでは時間がかかるので最初にやります。
ところで石の上にかける水はというと、湖から汲んできます。フィンランドのサマーハウスのほとんどは湖のほとりにありますが、これは景観的に美しいとか、サウナ後にすぐ飛びこめるといったものだけでなく、水の調達がしやすいという実利面もあるようです。 サウナ小屋の先には階段があり、下りた先は湖。桟橋は、ときに“飛び込み台”になり、腰を掛けて足先を水につけて読書するときの“椅子”になります(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)サウナ小屋の内部の様子。オレンジのバケツに湖から取ってきた水を入れておきます。サウナの外に着替えや仮眠ができる小部屋があります(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
外国人客をもてなすディナーはあの肉
サマーハウスの母屋に戻ると、夕食の準備が進んでいます。「ではメインの肉を焼きましょう、はい、焼き担当は外へ出ましょう」とオッリさん。ウッドデッキ上にあるBBQグリルで炭をおこし、プレートの上で焼くのは、「レインディア(トナカイの肉)」です。トナカイ肉はやや高級品らしく、豚:牛:トナカイ=1:2:3くらいの値段と聞きました。今回のトナカイ肉はスーパーで売っているごく一般的なものでしたが、まったく臭みがなくて、塩コショウだけで超美味でした。ビールがどんどん進みます。
「はい、できました」とオッリさん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
さてリビングに戻ると、仲間たちがお手伝いして夕食がどんどんできあがっていました。調理場でもオッリさんが大活躍。フィンランドでは男子が調理場に立つのは普通のようですが、なかでもオッリさんは超料理男子でした。
リビングでの夕食の様子(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
食事も盛り上がり、夜も更けて、外は暗くなってくるかと思いきや、ここは夏のフィンランド。日が長かった。夜の20時でも全然明るいのです。夕食後に、サウナにいってさらに湖で泳ぐことができます。
サウナはとても気持ち良いものの、果たして体や髪の毛はどう洗うのか?ぱっと見ると上水道はありません。はい、実は汲んできた湖の水を洗面器に移してそれをすくって頭から豪快にバシャーです。
湖で汲んできた水をサウナ用の薪で熱湯に変えて、水を混ぜて適温にして豪快に頭からかぶる。よく見ると少し小枝が浮いているが、そんな小さなことは気にしない様子(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
そのままサウナに入ること数十分。体がポカポカになってきたところで、小屋の先の階段を下りていきます。そして……湖にドボンです。写真撮影した時間は20時近くと思われますが明るいです。サウナ後に遊泳するだけでなく、小舟で釣りに出かけ、その釣った魚を調理して食べるのもサマーハウスの楽しみ方(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
さて夜も深まって睡眠。朝は散歩に出かけます。今回利用させていただいたサマーハウスの付近は日本の別荘地と異なり、建物が立て込んでいません。建物はポツポツとある程度で、周囲は自然そのものです。また、建物も均一ではなくきれいなものもあれば、自分で建てたであろう小屋も点在します。日本の北海道に近い光景。急峻な山はなく、緩やかな小高い丘に緑のじゅうたんの景色が広がる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
家に戻って朝ごはん、ここでも調理男子オッリさんがフィンランドの朝らしい朝食ををつくってくれてました。ブルーベリーパイに、卵料理などテーブルの上にズラリ。そして何よりも窓からの景色が彩りとなって、豊かな朝の時間が流れます。
朝食では、ブルーベリーパイ、ハム、エッグ。ランチではフィンランド名物サーモンクリームスープをいただきました(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
優雅なランチタイムを終えて、最後に記念写真をパチリ。
今回は現地で魚やマッシュルームを調達する自給自足体験は諦め、スーパーで食品を調達する形に。
オッリさんが自宅で下ごしらえするなど凝ったパーティー料理を準備してくれました。もっと自給自足的な昔の暮らしを楽しむスタイルもあります。子どもと一緒に森に入り、ふんだんにあるブルーベリーを摘み、マッシュルームを集め、湖で釣りをして、さばいて食べるなんてこともよくあることです。近くの森林から伐採した木を割って薪にしてサウナを沸かすことも一般的。サマーハウスもほぼDIYで建てたものから、厳しい冬も暖かく過ごせる高断熱の立派なサマーハウスまでさまざまです。サマーハウスで家族や親族、知人と一緒に過ごし、多様な体験を得ることがフィンランドの二拠点生活文化として根付いています
日本の別荘は、暮らしに必要なインフラや設備を用意しすぎなのかもしれません。フィンランドのサマーハウスは自然と親しみ、一体化する感覚が強いです。サマーハウスが建つ場所も、食べ物も、水光熱にかかる部分も自然の恵みを上手に利用して、リーズナブルに、手間を楽しんで、時間に追われずゆったり過ごす。日本においても管理・共用棟だけ充実させ、個人の家の空間は、広さや設備をミニマムにして、もっとリーズナブルに提供すればいいのではないでしょうか。特に若い世代にはそのほうがヒットする予感がします。デュアルライフを楽しむために必要なのは、立派な箱ではなく、調理ができる、火が起こせる、肉が上手に焼けるという個人スキルだと思いました。同行したスタッフも「一番驚いたのは、オッリの料理スキルの高さ! 調理が『家事』ではなく『余暇の過ごし方』という位置付けなのが、その要因の一つでは。サバイバビリティの高さは、今の日本のキャンプブームとも通ずるものがあると感じました」とのこと。その点で自分はどうかというと……がんばります(苦笑)。今回、サマーハウス体験をしたみなさんと家の前で。お世話になりました!左手に薪の小屋、奥に見えるのが湖。その手前にサウナ小屋があります(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
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