品質相応の価格で販売出来ないことが引き起こす悪影響を考える

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品質相応の価格で販売出来ないことが引き起こす悪影響を考える

機能性価値の高い商品は相応のコストがかかる

高い性能、豊富な機能を備えた商品を開発しようと思ったら、相応の開発コストが必要です。同様に、高い性能、豊富な機能を備えた商品を製造しようと思ったら、製造コストも高くなります。

商品を販売するにあたって利益を確保するためには、開発や生産にかかったコストを価格に転嫁する必要があります。そのため、一般的には商品の品質と販売価格は比例します。商品の買い手は付加価値の受益者ですから、高品質の商品を購入するにあたって高い料金を支払うのが当然といえます。良い物を購入するのに相応の代金を支払うことに違和を感じる方はいないでしょう。

品質の割に低価格な商品が提供できる理由

しかし、品質の割に価格が安い商品も世の中には存在します。低価格で商品を提供する戦略として行っている場合もあれば、価格競争に陥って、安い価格で売らざるを得ないといった場合など、様々な理由が考えられます。

本来なら高価格で販売されるべき商品を、性能や機能の割に安く販売するということは、商品の買い手ではなく、商品の供給側のサプライチェーンの誰かが本来支払う必要のないコストを肩代わりしているということになります。特に、大きな企業の場合は下請けの部材メーカーや加工メーカーにコストの負担をさせているケースもあるのではないでしょうか。

「自分たちの儲けを維持するために、下請けのお前たちが損をしろ」というサプライチェーンは理想の状態とは言えないでしょう。いずれ破綻してしまうことも考えられます。

安価での販売を続けたことが引き起こした悪影響

かつて大手メーカーは、商品を安価に売り続けるために人件費の安い中国に生産拠点を移しました。その結果、国内の製造業が空洞化してしまい、現在は部品を作ってくれる国内メーカーがなくて困っていると言っています。

もちろん、大企業だけの問題ではありません。日本国内のいずれかのサプライチェーンに属する全ての企業の問題です。失注したくないから安価でも受注するということは、企業の収益性も上がらないため、必然的に従業員の給料にも影響します。そういった状態で採用が難しいというのは必然のことと言えるでしょう。その結果、企業の維持も難しくなってしまうことも考えられます。

日本企業が成長発展していくためには何が大切か?

先進国の中でも日本は労働生産性が低いと言われています。労働生産性が低いのには様々な理由があるでしょうが、開発コストや製造コストを販売価格に転嫁しない、あるいはできていないということも、理由の一つとして考えられるのではないでしょうか。

少子高齢化で労働力の確保が難しくなっていく中、今までと同じことをやっていては生産力の維持が難しくなることは火を見るよりも明らかです。日本企業が今以上に成長発展するためには、高い付加価値の商品を適正な価格で販売し、適正な利益を得ることが課題になると考えられますが、いかがでしょうか?

(待谷忠孝/経営コンサルタント)

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