日本という国においてこの30年でどれほど収入が増えどれほど支出が増えたのか、つまり我々はどれだけ豊かになったのかをできるだけ客観的に書きたいと思う(俺の世界史ブログ!)

日本という国においてこの30年でどれほど収入が増えどれほど支出が増えたのか

今回はmyworldhistoryblogさんのブログ『俺の世界史ブログ!』からご寄稿いただきました。

日本という国においてこの30年でどれほど収入が増えどれほど支出が増えたのか、つまり我々はどれだけ豊かになったのかをできるだけ客観的に書きたいと思う(俺の世界史ブログ!)

大正時代、芥川龍之介は「ぼんやりとした不安」を理由に自らの人生に終止符を打った。

現代日本において、芥川龍之介とは内容が違うが、誰もがぼんやりとした不安を抱えているのではないだろうか。

「昔はよかったねといつも口にしながら生きていくのは本当に嫌だから」

平成初期に槇原敬之という歌手はそのような歌を歌ったが、果たしてこの30年で日本はどれほど良くなったのか、それを客観的に見て行きたいと思う。

・この30年でどれぐらい物価が上がったのか?
・どれぐらい支出は増えたのか 社会保障篇
・どれぐらい支出が増えたのか 税金篇
・どれぐらい支出が増えたのか デファクトスタンダード篇
・子供の学費はどれぐらい上がったのか
・どれぐらい支出が増えたのかまとめ
・どれぐらい収入は増えたのか?
・日経平均はどれぐらいあがったのか?
・この30年間でどれぐらい給与所得は上がったのか
・この30年間、我々はどれだけ豊かになったのかをまとめる
・ちなみに公務員の給与はどれぐらい上がったのか?
・消費者金融を使う人の数
・奨学金利用者と破産者
・他の国はどれぐらいこの30年間で豊かになったのか
・謙虚な姿を取り戻そう

この30年でどれぐらい物価が上がったのか?

今回のテーマを考える時、必ず物価上昇について考えねばならないだろう。例えば明治時代は1円で家が建つ時代であったし、年と共に物価は上がっていく。

まずはこの30年で物価がどれぐらい上がったのかだが、大体1.8倍ぐらいほどだという結果もあれば、あまり変わっていないという統計もある。

「30年で1.8倍… 2%インフレに負けない老後の備え」2013年5月28日『NIKKEI STYLE』
https://style.nikkei.com/article/DGXNMSFK2403Q_U3A520C1000000/?page=3

総務省にデータがあるが、正直経済には詳しくないため統計を見ても一体どれぐらい実際に物価が上がったのかがよく分からない。。

「消費者物価指数(CPI)」『総務省統計局』
https://www.stat.go.jp/data/cpi/

なのでここはビッグマックの価格を使って物価上昇を考えたいと思う。

こちらの記事↓によれば1985年当時、ビッグマックは単品で680円であったという。

「1985年当時のマクドナルドメニューに衝撃 ビッグマックセット800円にハンバーガー230円とバブリー価格」2013年5月1日『ガジェット通信』
https://getnews.jp/archives/332810

いやいや、今より高いじゃないか!

一口に物価と言っても高くなったものもあれば安くなったものもある。

1985年当時と2019年を比べると、例えばたばこは約2倍、後述するように国立大学の授業料も2倍、郵便はがきは1.7倍ほどで、缶ジュースなんかも80円から120円の値上がりなので、今回の記事では缶ジュースの値段をとっておおむね1.5倍ぐらいという感じで行きたいと思う。

もっとも、NHKの料金なんかは平成4年で1020円、平成26年で1260円なのでそれほど変わっていないのだが…

どれぐらい支出は増えたのか 社会保障篇

今回のテーマにおいてこの問題は主題とも言える。なにせ自分を始め多くの国民がこの社会保障料の問題で頭を悩ませているのだからな。

まずはこの30年でどれぐらい社会保障費が増えたのかを見て行こう。

社会保障料といっても色々あるが、我々に関わる社会保障は大きく年金と保険の問題であろう。

年金に関しては以前に記事にした。

「国民年金の値上がり方が狂気を通り越して詐欺の域に達している件について」2019年3月13日『俺の世界史ブログ!』
https://www.myworldhistoryblog.com/entry/nenkindetarame

記事をものすごく簡単に要約すると、30年前の平成元年では7700であったのが平成30年には16000円ほどとなっている。

データ引用元:「国民年金保険料の変遷」『日本年金機構』
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo-hensen/20150331.html

つまりは約二倍。

厚生年金について見てみると、誤差はあれど大体1.5倍ほどになっているので、年金に関しては物価よりも少し上がっているということが言えるだろう。

データ引用元:「厚生年金保険料率表」『日本年金機構』
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo-gaku/hensen/20140710.files/standard_insurance_1.pdf

次に保険料に関してはどうだろうか?

保険料の変遷については全国健康保険協会のホームページに詳しく書いてある。

「保険料率の変遷」『全国健康保険協会』
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat330/hokenryouritunohennsenn

くわしく書いてあるが、正直読み方がよく分からない。

平成二年は8.4%だった国民健康保険料が平成24年には10%になっているので、大体1.2倍ぐらいという計算でよいのであろうか?

もっとも、平成12年度以降40歳以上の人は介護保険料がとられるようになっていて、これが平成12年では0.6%、平成31年度には1.7%にまで上がっており、約3倍となっている。

少し整理すると、40歳以上は平成元年の段階では8.4%で済んでいたのに、平成31年度の段階では11.7%まで負担が上がっているということになるので約1.4倍になっている。

総じて、物価の上昇率と社会保障利用の増加率は連動しており、おおむね1.5倍ぐらいになっていると言えるだろう。

どれぐらい支出が増えたのか 税金篇

俺の一番嫌いな言葉、税金について見て行こう。

所得税に関しては規定がコロコロと変わっているようだ。

例えば平成27年以前と以降でも大分変っている。

所得税速算表1 所得税速算表2

引用元:「No.2260 所得税の税率」『国税庁』
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

1987年以降の税率は以下のような感じで、最高税率は下がっているけれども最低税率もまた下がっているという計算になっている。

所得税

引用元:「所得税」『Wikipedia』
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%80%E5%BE%97%E7%A8%8E

簡単に言うとこの30年で年収1000万円をこえる富裕層と年収194万以下の人たちの税率は下がり、所得税だけで言うなら全体として下がったと言えることになる。

では税金が全体として下がったかと言うととんでもなくて、消費税が導入されたのがちょうど30年前の1989年4月の話となっていて、それまでは消費税がなかったわけで、消費税の分負担が増えたと言える。

1989年に3%だった消費税も2019年には8%になっており、今後10%になるという。

これがどれぐらいの負担増になっているかの算出は不可能だが、かなりの負担増であることは間違いがない。

どれぐらい支出が増えたのか デファクトスタンダード篇

ラテン語で「実際の」という意味を表す「de facto」という言葉をとって、実質的になければ困る物、あって当然というものをデファクトスタンダードという。

平成の30年間で、テクノロジーに限って言えば飛躍的に進歩した。平成元年当時にインターネットを扱える人間なんていなかったが、現在インターネットを使ったことがない、まったく使えないという人間は稀であろう。

実質的にそれがないと困るものが増えた。

中でも「通信費」に関してはもはやインフラであり、電機やガス代金と同じレベルで語られるべきものであり、インフラでありデファクトスタンダードだと言って良い。

この「通信費」は人によって大きく異なる。

「インターネット」にかかる代金と「電話」にかかる代金があって、この2つはこの30年で飛躍的に増大したと言えるだろう。

ちなみに平成4年頃の伝料金は基本料金が1800円で、通話料は1分10円(市内)であった。

現在は人にもよるが、キャリアでスマホを持っている人は月に8000ほどかかっている人も珍しくはないだろうし、10000円を超えている人も結構いることだろう。

格安スマホを使うと通話SIMで月額約2000円、通話は30秒で20円ぐらいで使えるが、まだまだキャリアを使っている人が多いことと思う。

さらにインターネット、これは固定回線でもWiMAXやポケットWiFiを使っても大体月4000円から5000円ぐらいはかかる。人によっては両方利用しているかも知れない。

つまり、平成元年では基本料2000円ぐらいで済んだのが、令和元年たる今年にはどんなに抑えても1人当たり6000円から20000円ぐらいはかかっている計算になる。

この30年でなくてはならないほどになったと言えるサービスは通信料ぐらいであろうが、この通信料が大体3倍から7倍に増えている計算になる。

勿論固定回線電話を使っていればそれにプラスされる計算になるし、家族が増えれば支出も増える。家族四人で月の通信料が30000円から40000円という家庭が多いであろう。知り合いの家庭を持った人たちは大体それぐらいであると言っている。

もしこれらの通信費を払わなければ、現代日本では「情弱」と言われて罵られることだろう。小さなレベルの持つ者と持たざる者の争いがこんなところでも起こるのである。

子供の学費はどれぐらい上がったのか

まずは大学進学率の推移についてだが、平成元年の段階では24.7%だったのが平成25年の段階では50%を越えている。

引用元:「表13.4年制大学への進学率と18歳人口の推移」『武庫川女子大学』
http://www.mukogawa-u.ac.jp/~kyoken/data/13.pdf

そして学費はというと、平成元年には339,600円であった国立大学の学費は平成17年以降535800円になっており、大体1.6倍になっている。私立に関しても平成元年は大体57万円だったのが平成17年以降は80万を超えるぐらいなので同じぐらいの水準であると言える。

教育費用もまた物価上昇と同じぐらいに上がったと言えって良いだろうが、進学率が高くなった分その費用は実質的にかなり増大したともいえる。あまり騒がれないが、この部分が少子化および日本の衰退につながっていると個人的には思っている。

どれぐらい支出が増えたのかまとめ

まずは社会保障料が大体1.5倍に増えた。

次に物価も1.5倍ぐらいになり、そこに消費税が載せられることになった。消費税は0%から8%あるいは3%から10%になる予定。

最期に通信費は3倍から7倍に増え、大学の学費も物価と同様やはり1.5倍ぐらいになった。

どれぐらい収入は増えたのか?

支出がどれだけ増えたかは問題ではない。物価は上がる物、支出は増えるもの、収入さえ上がれば問題ないのである。

ここからはお待ちかね、どれぐらい収入が増えたのかを見て行こう。

日経平均はどれぐらいあがったのか?

まずは日経平均株価から。

この三十年であらゆるものが1.5倍の負担増になっているのだから、きっと日経平均株価も1.5倍になっているに違いない。

平成元年には30000円代の後半だった日経平均株価だったが、一体どれぐらいあがっているのだろうか?

日経平均株価

引用元:「平成の日本経済が残したもの – 新元号時代への教訓(1) 平成の日本経済が残したもの – バブルはこうして崩壊した」2019年1月22日『マイナビニュース』
https://news.mynavi.jp/article/heiseieconomy-1/

つまり大体今の日経平均株価は20000円ぐらいである。

そう、1.5倍ぐらいだ。平成元年が30年のな!

こちらに関しては全く上がらないどころか2/3ぐらいに減少している訳だ、

ちなみにアメリカは株価がここ30年で五倍ぐらいになっている。

株価

引用元:「米国株を買っていたらどれだけ儲かった!?」『マネックス証券』
https://info.monex.co.jp/yahoo-usstock-beginner/voice/002/

え?ここは日本だ!アメリカのことなんて持ち込むな?

これはこれは失礼いたしました。

この30年間でどれぐらい給与所得は上がったのか

株価は2/3になり、負担は1.5倍に増えた、つまり給与は大幅に上がったに違いない。そうでなければ辻褄があわない。

国税庁の調査によると、給与所得者の平均年収は平成元年の段階ではおよそ400万円ほどだったという。

引用元:「平均給与」『国税庁』
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan1997/menu/03.htm

そして平成29年度のデータもあったので見てみた。

そのデータによると給与所得者の平均年収は420万円ほどに増えているという。

引用元:「平成29年分民間給与実態統計調査結果について」『国税庁』
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2018/minkan/index.htm

やったね!20万円も増えたよ!

つまりは平均して1.05倍ほど収入が伸びた計算になる。

すげぇ増えてんじゃん!

という皮肉はさておき、この結果、実は中央値は下がっているんじゃないかと言う話もある。要は所得が多い層は多くなって、低い層も多くなって、放物線のように中間層が少なくなっているのではないかというお話。

単純に、年収が250万、250万、1000万の3人の平均値をとると年収500万円という数値になるもんな。つまり貧富の差が増大したのではないかという話があると。

正直、社会保障料の増大も、物価の増大も、本質的な問題ではないと思っていて、要は収入さえ増えれば問題のないことだったのだ。

だが、収入は増えていない。これが厳然たる日本の現実である。

この30年間、我々はどれだけ豊かになったのかをまとめる

ちょっと色々と複雑になってしまったので、情報を整理したいと思う。

まず、どれぐらい収入が増えたかだが、給与所得はこの30年で約20万円ほど上がった。増加率は5%ほどだ。

その間、消費税は3%から8%に上がった。あるいは0から8%に上がったと考えてもいい。これで給与所得の分はチャラだ。

しかし物価は1.5倍になった。

それに連動して社会保障費用も1.5倍になった。ちなみにここでは書かなかったが、もらえる年金の額も減っているし健康保険における国民の負担割合も高くなった。簡単に言えば払う額は大きくなったが受けられるサービスの質は落ちたということだ。

通信費は増大し、大学の学費も1.5倍になった。

大学卒業の人数は増えたので、学費が上がっても価値は相対的に落ちた。でも企業は大卒を欲しがった。

そして日経平均株価は大体半分になった。ものすごく乱暴に計算すると、国の資産は半分になったと言ってもよいだろう。

詳細は記載しなかったが、不動産の値段もこの30年で半額というレベルにまで落ち込んでいる。

一行でまとめれば、我々はものすごく貧しくなってしまったのだ。

収入は増えていないのに、負担だけは飛躍的に増えた。結果的に可処分所得、すなわち自由に使えるお金は減り、消費は益々冷え込み、経済は好転の兆しを見せていない。そんな状況で、更に景気を悪化させるような政策を発表しようとしている。

それが今の日本を悲観的な目線を排除して客観的に見た情勢だ。

ちなみに公務員の給与はどれぐらい上がったのか?

公務員の給与

引用元:「これが「公務員年収が高い自治体」トップ500だ」2019年3月26日『東洋経済オンライン』
https://toyokeizai.net/articles/-/273078?page=2

東洋経済の調査によれば、地方公務員全体の平均年収は588万円であり、これは前年度よりも4万円ほど高い計算になっているという。

国税庁によれば民間の平均年収は420万円ほど。

公務員になれば比較的高い給与と年金と退職金が保証されている。

ちなみに無能なる俺は5年ほど勤めた会社を辞めた際には1円の退職金もなかった。

そう、全ては自己責任なのである。

日本と言う国においては全て「公務員にならなかった貴様が悪い」の一言で終わる。

それ以上でもなければそれ以下でもない。

もちろん彼ら彼女らに国を良くしようという意識が芽生えるわけもなく、この特権をいかに維持するかのみを考るようになる。

と言っても、この平均額は年長者が押し上げている。俺の大学の友達の半分は公務員になった。だが、彼らの暮らし向きは楽ではない。会うたびに胃潰瘍になっていたり頭髪が薄くなったりしていて、「何しないババアが月60万ももらっているんだぜ」と愚痴りながら酒を飲んでいる。貯金は皆無い。ストレスで死にそうになっている。

中には大学時代、今の俺なんかよりはるかに過激に公務員批判を繰り広げていた奴もいるが、段々と皆朱に交わって紅くなっていくのを感じる。

内側から改革されることは絶対にないだろうな。歴史上、官僚組織が自浄した例はないのだ。外部から強力な力でもって改革されない限り、官僚機構というのは増大し始める。歴代中国王朝もローマ帝国も、それに飲み込まれて滅亡していった。

アメリカがそうならないのは、スポイルズシステム(猟官制度)と言って大統領が代わる度に官僚も入れ替わるシステムが機能しているからだと思う。

ちなみにプレジデント誌が調べた結果ワーストにランクインされる自治体でもおおよそ民間の平均よりも良いという結果が出ている。

公務員年収ワースト

問題なのは公務員の給与が高いことではなく、民間の給与が上がらないことであろう。日本企業が経済的にイチシアティブを取れなくなっているのはもはや明白な事実であり、かつてウォークマンを生み出したような革新的なアイディアはここ数十年出ていない。

これは特にテクノロジー分野で顕著で、日本では現在優秀な若者が日本企業ではなく外国企業で働くことがますます多くなっている。

ツイッター、ドロップボックス、youtube、革新的なテクノロジーは皆アメリカ発だ。

学術分野を考えてみても、ノーベル賞を受賞するような人たちは皆アメリカの大学で学んだり研究した人ばかりとなっている。

資源のない日本はテクノロジーで勝負するしかない。我々が学校で英語を習うのは、最新のテクノロジーを学ぶためだ。学生のころなんで英語なんかやんなきゃいけないだよぉとぶー垂れていたが、明治時代の人間が義務教育で英語を取り入れたのは正しかった。

明治時代よりも我が国の人口は増えたし、優秀な人材はいる。だが、それを特権階級や古い仕組みが潰してしまっているのが今の日本なのだ。

老人ばかりが力を握り、若者にはチャンスさえ与えられない。

それではダメだ。

歴史の流れを見てみても、特権階級の保守性が多くの国家を滅ぼしてきた。

あれだけ強大だったローマ帝国も、外圧ではなく内部から崩壊していったのだ。ナポレオンの言う通り、本当に怖いのは敵の有能な将軍ではなく無能な味方なのである。

経済も政治も、日本は自滅の道を進もうとしている。

だが、まだ完全に滅んだ訳ではない。

消費者金融を使う人の数

消費者金融を使う人の数

引用元:「各種統計データ」『日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関』
https://jicc.co.jp/company/jicc-data/

今の日本がどれぐらい狂った状況かと言うのを如実に表しているのが消費者金融をどれだけの人が利用しているかというデータだ。

その数実に1000万人。国民の約10人に1人が消費者金融を利用している計算になる。消費者金融は20歳から70歳ぐらいまでしか利用できないので、実質的にはもっと高い割合であろう。

必ずしも消費者金融の利用が悪いという訳ではないが、今現在消費者金融をこれだけの人が利用しているというのは、それだけ国民が困窮しているという実態を表している。

消費者金融については別記事でも書いていきたいと思うが、これは正常な社会の在り方とは言えないと思う。

ローマの歴史ばかりで恐縮だが、理想的とさえ言われたローマの共和政が崩壊したのはローマ市民の借金が増えてローマ軍を維持できなくなったからなのだ。ローマ軍はローマ市民だけが正規軍のメンバーとなれ、軍備は全部自腹だった。だが、借財が増えすぎて自腹で武装が出来なくなり、一時期はローマ軍は恐ろしく弱体化し、共和政の維持はできなくなった。国民の借財が多くなることは、あらゆる国家において衰退を意味する。

*データには銀行のカードローンも含まれると思われるが、実態は消費者金融が提供しているサービスと同様なので区別しないことにした。

この辺りに関しては別記事を書きました。

「消費者金融(カードローン・キャッシング)の利用者が1000万人、すなわち国民の10人に1人が利用しているという現実について なぜこんなに利用者が増えたか考察してみる」2019年6月8日『俺の世界史ブログ!』
https://www.myworldhistoryblog.com/entry/cardloanuser

奨学金利用者と破産者

奨学金貸与状況

引用元:「日本学生支援機構について」『日本学生支援機構』
https://www.jasso.go.jp/about/ir/minkari/__icsFiles/afieldfile/2019/03/25/31minkari_ir_2.pdf

大学進学率の増加とともに、奨学金の利用者も増えてきた。かくいう俺も奨学金を利用して大学に行った人間の一人だ。

正直支払いはかなり苦しい。この10年ほど遅滞なく支払ってきたが、毎年20万円も返していくのはやはりキツイ。

近年では奨学金が返済できなくて破産してしまうケースも増えてきた。

「“奨学金破産”の連鎖で一家破産!?」『クローズアップ現代』
https://www.nhk.or.jp/gendai/special/26/index.html

奨学金において大きな問題なのは、滞納者がカードローンなどの滞納者と同じ扱いを受け、数年間あらゆるローンを利用できなくなり、あらゆるサービスを利用できなくなる点だ。

これは先ほどデータ引用させてもらったJICCのような、いわゆる信用情報機関に情報が登録されてしまうためで、早い話が「ブラックリスト入り」してしまう訳である。

欧米では奨学金システムが充実していて、成績が優秀なら学費が免除されたりして、アメリカの例えばハーヴァードなんかは学費が年で300万円以上するが、優秀な人物は真の意味での奨学金をもらえるので返還をする必要がない場合もある。日本には基本そのようなシステムはない。大学によっては多少あるようだが、本当に少数だ。5年で500万もの大金を、ポンと支払える家は少ないであろう。

ドイツなんかは大学の授業料が無料な訳で、そりゃあ日本は衰退するよなって思う。

日本は知的資産に投資しなければ生き残れない。

これまで日本がまがりなりにも先進国だったのは、文化レベルが非常に高く、工業生産的な質が高かったからだ。19世紀の帝国主義全盛期において、欧米の植民地にならなかった国は数えるほどしかいない。その中で欧米に肩を並べたのは日本だけだった。それは寺子屋という民間の学問施設が充実していて、庶民階級の識字率や学力が高かったからだという指摘もある。奨学金問題はその長所を自ら潰しているような政策であろう。

定年退職した公務員に多額の退職金や年金(人によっては月40万)払ってないで若者に投資しろよと言いたくなる。

自分が死んだ後のことなんて知ったことじゃないって人が多すぎないか、この国は?

他の国はどれぐらいこの30年間で豊かになったのか

内部的に見ても日本人は貧しくなっているが、世界的に見るともっと貧しくなっている。

こちら↓の記事ははてな界隈では有名な海外に住む日本人の記事なのだけど、外から見た日本の状態がよくわかる一記事となっている。

「欧州からは「日本だけが勝手にどんどん貧しくなっている」ように見えている」2017年7月6日『エストニア共和国より愛をこめて』
http://www.from-estonia-with-love.net/entry/pjapan

客観的に見て、日本が相対的に貧しくなってしまっているのは確かだろう。

こちら↓はOECDの給与調査実態を表すグラフである。

OECDの給与調査実態

データ引用元:「Average wages」『OECD』
https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm

ちょっと小さくて申し訳ないのだが、平均年収において先進諸国家にはもちろん負けており、スペインとほぼ同レベルの水準となっている。

スペインはギリシャと共に「pigs」を形成する一国で、早い話が財政破綻寸前の国で、失業率は16%を越えているわけで、そういう国と給与水準においてならんでしまっているのだ。

参照:「2018年11月の失業率はEUで横ばい、ユーロ圏で0.1ポイント改善」2019年01月21日『日本貿易振興機構』
https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/01/250624058693e49e.html

そしてこちらは平成元年と平成30年の世界時価総額ランキングだそうだ。

平成元年と平成30年の世界時価総額ランキング

極東の小さな国が世界を席巻していたなんてすごい!と同時にたった30年でここまで落ちぶれるものなのか…とも思うが、トヨタだけ見ても実はかなり時価総額が上がっていて、その面に関してだけは衰退という訳でもないだろう。

要は日本は世界的なインフレについていけなかったのだ。

世界は狭くなった。

ここは日本だ!

みたいなことをドヤ顔で言うのは危険だ。

政治的な面はもちろんだが「ここは日本だ!ドヤァ」みたいな精神が結局日本を国際的に孤立させ、衰退を招いたのも確かであっただろう。

ちなみにさきほどのOECDのサイトはかなり豊富なデータを見ることができて、試しに先進七か国の1990年から2017年までの平均年収の推移なども調べられる。

f:id:myworldhistoryblog:20190605160846j:plain

引用元:「Average wages」『OECD』
https://data.oecd.org/earnwage/average-wages.htm

これを見ると、日本とイタリアだけが全く変わっておらず、他の国の賃金が大幅に伸びているのが分かる。

1990年の段階で日本は6か国中2位だったのに、今は5位まで落ちてしまった。

そしてこれを見ると、実は日本は衰退したのではなく全く成長しなかったのだなということがよく分かる。

謙虚な姿を取り戻そう

「ここは日本だ!」という言葉に見られるように、日本人は傲慢になってしまったのだ。

第二次世界大戦に負けて以後、日本はとにかく外国の優れた文化を取り込もうとした。

古くは聖徳太子の時代、隋に行って自国の後進性を認めた我らが先祖は憲法を作り、政治制度を改めた。

我々日本人の美点はそのように他の優れた国から謙虚に学び、自分たちの文化として作り変えることにある。

真に小さな国が、この先も生き延びるためには、何より学びが必要になってくるだろう。国はガンガン教育に対して投資していくべきだ。くだらない建造物なんか建てるよりもそっちの方が重要だ。明治時代の為政者たちなんかその辺りをよく分かっていたんだろうなって思う。世界的にみてもあそこまで教育を重視した国家は珍しかった。

人工知能分野で成果を出して、日本で介護用アンドロイドや家事用アンドロイドなどw開発したら技術もあるしハイテク分野で一気に成長することも可能だろう。細かい仕事が得意な日本人は割とそういう技術で成長できそうな気もする。

個人的には、大学の無償化をし、単位認定などを厳しくすればいいと思っている。ドイツでは無償化であるがゆえの留年が社会問題にもなっているようだが、日本人は割と勤勉なので大丈夫だろう。

奨学金の返済というのは、モロに可処分所得を減らす行為でもある。月に二万円、別の経済的な効果をもたらす可能性があり、それも小さくないのだ。

日本は今衰退期だが、まだ末期的な状況という訳でもない。

社会保障料の負担を減らせば内需の拡大は可能だし、中国や台湾に大きく後れを取っているとは言え技術はある。

多少の希望も含めて、日本と言う国を諦めるのはまだ早いだろうと思う。

 
執筆: この記事はmyworldhistoryblogさんのブログ『俺の世界史ブログ!』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2019年6月13日時点のものです。

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 日本という国においてこの30年でどれほど収入が増えどれほど支出が増えたのか、つまり我々はどれだけ豊かになったのかをできるだけ客観的に書きたいと思う(俺の世界史ブログ!)

寄稿

ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。

TwitterID: getnews_kiko

  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。