「この仕事向いていないかも」と思ったときの対処法
取材を通してお聞きしても、パワハラ被害に遭ったことがある人は、男女問わず存在します。職場に違和感を感じたとき、この仕事に向いていないかもと感じたときの対処法を、ライター華井由利奈が700人への取材経験と実体験をもとに解説します。
※本稿は、『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』の一部を再編集したものです。
プロフィール
華井由利奈
愛知県出身。椙山女学園大学卒業後、印刷会社に就職。デザイン業務を1年間担当した後、コピーライターとしてトヨタ系企業など100社以上の取材を行う。2016年に独立し、2018年8月に初の自著『一生困らない 女子のための「手に職」図鑑』を光文社より出版。5刷27,000部を達成した。今までに取材した人数は約700人。現在は日経doorsや朝日新聞デジタルなどで、女性活躍、就職・転職、教育、生活情報を中心に執筆。全国各地の大学や教育講座で講演も行っている。
この仕事向いていないかも、と思ったときの対処法
残念なことに私自身が取材を通してお伺いしているだけでも、「なんでそんなこともできないんだ!」と自分を基準にして怒る上司や、「使い物にならない」と必要以上に後輩を責める先輩社員は実在します。
けれど、人によってできることが違うのは当たり前。私は『手に職図鑑』の取材で様々な職業人に話を聞きながら、頭の中には複数のレバーがあると考えるようになりました。
暗記が得意なAさんは、記憶力のレバーが100%まで上がります。しかし仕事内容がなかなか覚えられないBさんは、50%までしか上がりません。「故障かな」と思ってレバーの修理を始めたBさん。よく見てみたら、どれほど修理しても50%以上には上がらない構造になっていました。つまり、人には得意不得意があり、それが「仕事ができる」「仕事ができない」の指標とは限らないということです。
「仕事ができない」と感じて悩んだときは、このレバーの話を思い出してみてください。もしかしたら構造の都合上、努力ではカバーできないことなのかもしれません。そして、それは「仕事ができない」のではなく、「合う」「合わない」の違いかもしれないということです。
幸いなことに、ハローワークや転職のエージェントなど、仕事が合わなくて困っている人を助けてくれる機関は全国各地に多々あります。実際に私自身も、前職で精神的につらい日々が続いたとき、ハローワークで転職相談をしながら号泣したことがありました。
無理をして周囲に合わせていると、頭の中のレバーが壊れてしまうかもしれません。修復不可能な状態になる前に「転職」という道もあることを思い出し、信頼できる機関に相談してみるのも一つの方法だと私は考えます。
向いている職業が思いつかないときは?
しかしいざ転職しようと思っても、次の転職先がなかなか思い浮かばないもの。大学や社会人向けの教育講座で講演をすると、「次こそは好きなことを仕事にしたいけれど、転職先を考えるうちに何が好きなのかわからなくなってしまった」という相談をよく受けます。そんなとき私が推奨しているのは、次の3つの方法です。
自分の深層心理を探る
「一生困らないほどのお金が手に入ったら何に使う?」「無人島で暮らすなら何を持っていく?」「どんな職業でも自由に選べるならどこで何をしたい?」など、究極の質問を自分に投げかけて回答を考える。
外出先で気になる企業を探す
インターネットで転職サイトを見ていてもピンとこないときは、スーパーやショッピングモールなどへ行き、自分の足で企業を探す。隅から隅まで歩いたあと、どこを素通りし、どこで足を止めたのかを振り返れば、好きな商品やサービスを知る手がかりを得られる。
日常生活を見つめ直して探す
日々の生活の中で、興味関心のあるものをスマートフォンやメモ帳に書き留める。写真を撮ってもよい。言葉や画像にすることで、自分の嗜好を視覚化する。
これらの行為はどれも、自分で体験して初めて意味が生まれるものです。なぜなら、「好きな食べ物」が過去に食べたものの中の一つであるように、「好きなこと」も自分の経験の中にあるからです。
「まだ食べたことはないけど、エジプト料理の味が大好き!」という人はいませんよね。毎日食事をしていたら「なんとなくだけど、この味が好き」と思うように、自分に合う仕事も実体験をすることで見えてくるのではないでしょうか。
一般職を選んで2つの夢を同時に叶えた女性の話
私が取材をした社会人のなかには、意外な方法で自分に最適な職業に就いた人もいました。「海外移住を経験してみたい」という夢を抱いていたTさんです。Tさんは国際色豊かな大学に通ううちに海外生活を夢見るようになったそうですが、就職活動中は将来を考えて保守的な思考にシフト。女性が長く働けるかどうかを重視するようになりました。
その結果、海外生活を諦めて大企業の一般職や事務職を中心に就職活動を進めるようになったそうです。しかし選考が進むうちに、Tさんはあることに気が付きました。
「海外赴任する人と社内結婚したら、海外に住める!」
Tさんが受けていた大手メーカーには海外拠点があり、さらに海外赴任する夫と同居する場合は、妻が一時的に休職し、帰国後に復帰できる制度がありました。海外移住の夢を思い出したTさんは気合いを入れ直し、大手メーカーの内定を獲得。社内恋愛のすえ結婚し、現在は一般職の社員として楽しく働きながら、夫とともに海外生活の計画を立てています。
よく誤解をされてしまうのですが、このエピソードは「Tさんが結婚相手に夢を叶えてもらった」という話ではありません。異なるアプローチの仕方を知ることで、主体的に自分に向く仕事と夢を切りひらくことができたということです。
Tさんは就職活動で新たな選択肢を得たからこそ、二つの夢を同時に追えるようになりました。人生100年時代と言われている今、より多くのアプローチ方法を知っておくことが、豊かな人生の構築につながるのかもしれません。
華井由利奈 著 光文社
妊娠・出産を視野に入れ、自分にとって働きやすい仕事を探せる一冊。人気業種を中心に、全100種のリアルな情報を掲載しました。夢だけでは働き続けられない現代で、本当の「働きやすさ」を手に入れるための方法が満載です。
文:華井由利奈
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