仕事とは何か?そんなこと考えたことない。ただ「自分で選んだ」ことだから好きやし、やってて楽しい。――『肉山』オーナー・光山英明の仕事論(5)

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仕事とは何か?そんなこと考えたことない。ただ「自分で選んだ」ことだから好きやし、やってて楽しい。――『肉山』オーナー・光山英明の仕事論(5)

『肉山』など自身が経営する店に加えて、60店舗もの飲食店をプロデュースしそのすべてを繁盛させている光山さんに、これまでの半生と仕事論を聞く連載。最終回となる今回は、なぜ光山さんは自分の利益は最低限にし、他人に与えまくるのか。その理由に迫った。

プロフィール

光山英明(みつやま・ひであき)

1970年、大阪市生まれ。個人商店代表取締役社長。小学4年生から硬式野球を始め、上宮高校野球部では主将を務め、甲子園に出場。ベスト8に。卒業後も中央大学野球部に入部、吉祥寺周辺で寮生活。卒業後は大阪に戻り、卸酒屋に就職。9年半勤務後、上京し、2011年11月にホルモンと焼酎の店『わ』を開店。2012年には『肉山』を開店。予約1年待ちの人気店に育て上げる。飲食店を開業したり知り合いの相談にも乗り、これまで60店舗以上をプロデュース、そのすべてが繁盛店となっている。

“与えまくる”理由

──光山さんはフランチャイズ店のロイヤリティや投資する場合の金利もすごく安いし、欲がないというか、儲けようという気がないですよね。

いやいや、それはありますよ。めちゃ儲けたいし、実際に儲かってますよ。ただ、今は十分な稼ぎがあって、それをさすがに僕だけで独り占めしようとは思わないっていうだけです。これって普通のことちゃいますかね? 逆に利益を独り占めしてるような人の店は流行らないと思いますけどね。

──そういうものなんですね。自分が得る利益は最低限にしていること以外にも、以前から光山さんのFacebookの投稿や友達とのやり取りを見てて思っていたのですが、いろんな人に無償でいろいろな物やサービスを与えていますよね。なんでこの人はこんなに気前がいいんだろうと思ってました。

与えるといえば、ある雑誌から取材を受けた時、始まってすぐ「今、思ってることを筆と墨汁で書いてください」って言われたんです。硯なんて久々に見ましたわ(笑)。その時「与えまくる」って半紙に書いたんです。そしたら「こんな言葉を書いた人は初めてです」って言われました(笑)。

▲「与えまくる」と書いた時の掲載媒体(写真提供:光山さん)

──やっぱりそうなんですね。なぜそんなに与えまくるのですか?

そもそも、僕としては実際に自分で与えているという自覚はあまりないんですよ。でもみんなが「いつも人にいろいろしてあげててすごいね」と言ってくれるんです。ということは多分、いつもそうしてるんでしょうね。でもその分、僕もいろんな人によくしてもらってると思うんですよ。そうしてもらえれば気持ちいいじゃないですか。だから僕も自然と人にも気持ちよくなってもらいたくてそうしてるんでしょうね、多分。

ただ、それはその時自分が持っている余裕の範囲内で、無理なくやってるだけです。決して自己犠牲ちゃいます。例えば元々持ってるものが10あったとして、その内の2を人にあげるとします。その後、自分の持ち分が12に増えた時、あげる分も同じくくらい増やして4にしたら元々のベースは8のままになりますよね。さすがにそれはやりません。自然と与える分を3にして9を残してるんでしょうね。

──『肉山』の現場に入っていた頃は、常連客をお店に招待して無料で食事を振る舞ったりしてすごくサービスしてましたよね。還元したいという気持ちからそうしてるんですか?

そうですね。まずはお客さんに対しての感謝の気持ちがあります。それともう1つ、同業者に対して「お前ら絶対こういうこと真似でけへんやろ」という気持ちもちょっとあるんですよ。当然無料でやってるからまるまる赤字なので、よく同業者に「光山さん、これ何のためにやってるんですか?」って聞かれるんです。その度に「うちの店は儲かってるからお客さんに還元プラス、お前らみたいなやつにどや! ってやってんねん」って返すんですが、同業者は「どや! どころじゃないですよ、これ」言うて苦笑してました(笑)。

小学生の頃から100円を5000円に増やす“商売人”だった

──なぜ自分の利益はそこそこにいろんな人に与えるんですか?

なんでと聞かれても困るんですよ。性格的なものだと思います。

──そういう性格はどうやって作り上げられたのかという点にすごく興味があるんですよ。

いや、そらわからんわ!そんなん言われても困ります(笑)。

──ご両親の教育とか家庭環境的なものですか?

そうだと思いますね。

──独り占めしたらあかんと言われて育ったとか?

あんまり覚えていませんが、実際にそういう教育は受けてるかもしれませんね。

──子どもの頃から兄貴肌、親分肌だったんですか?

そうですね。小中高の野球部ではキャプテンだったし、学校では常に級長や生徒会長でした。自分で仕切る、まとめるのが好きで、その逆は嫌いなんでしょうね。

──子どもの頃の思い出で、今に繋がっているようなものってありますか?

小学2年か3年生の頃、おもろいことをやって儲けてました。まず、毎日親からもらった100円の小遣いを握りしめて、自転車でペットセンターに行って金魚を10匹買うんです。そのまま自転車で通称シャープ池という池に行って、買った金魚を餌にして雷魚を釣ります。10匹釣ったら、また金魚を買ったペットセンターに戻って売るんです。1匹100円くらいで売れるから100円が1000円になる。その金を握りしめて今度は釣り堀に行って鯉を釣るんです。ベビースターラーメンをピピピってまくと釣り堀中の鯉が集まってきよるんですよ。黒いのからきれいな色の鯉までいろんな鯉がおもしろいように釣れる。300円くらい払うと大きい袋に酸素のブクブクを入れてくれて、釣った鯉を持って帰れたので、それを持ってまたペットセンターに戻って売ると、4、5000円になったんです。100円が学校終わってわずが3、4時間で4、5000円に化けたわけです。ボロい商売でしょ?(笑)。その儲けたお金で、6、7人の友達と作った野球チームのおそろいの帽子を買ってみんなにあげたんです。

──やっぱり子どもの頃からそうだったんですね。普通は自分で好きなものを買ったり、自分のために使いますよね。

自分だけで使うより、そうした方がみんなも喜ぶし楽しいじゃないですか。

──すでに子どもの頃から商才も半端なかったんですね。そういうやり方って全部自分で思いついたんですか?

もちろんですよ。そんなん誰も教えてくれないですからね。あと、中学2年生の時は、甲子園に出場している選手の生写真を売って儲けてました。

中学生の時、甲子園で商売をして補導される

──どうやって儲けてたんですか?

僕が中2の頃って、桑田真澄さんや清原和博さんが高2で甲子園に出場してたので、よく観に行ってたんですよ。そしたらスタンドに一眼レフとすごい望遠レンズで選手を撮ってた20代くらいの人がいたんです。「にいちゃん、その写真見せて」と言って見せてもらったら、ベンチに帰った桑田さんがアンダーシャツに着替えるところなどがアップで写ってた。この写真、むちゃええやんって思って「この写真どうすんの?」って聞いたら「溜めてるだけや」って言うんです。それはもったいないと思って「その写真、俺が売って来たるから貸し」って言って、その写真を受け取って、スタンドにいっぱいおった桑田・清原ファンの甲子園ギャルに「これ1枚200円でどう?」って見せたら、「きゃー!」言うて大歓声が上がって。当時はアイドルの生写真もブームやって、これはほんまもんの生写真やから甲子園ギャルの長蛇の列ができました。何でか言うとみんな買う写真を選ぶのにめっちゃ時間かけるから。その行列を見てあることがひらめきました。カメラのにいちゃんに「アルバム一冊じゃ間に合えへん。何冊も作ったら一気に見られるからもっと早くぎょうさん売れる。せやからこの写真、もっと焼き増しした方がええわ。明日の試合も来るから持っといで」てアドバイスしたんです。

次の日、そのにいちゃんがいっぱい焼き増ししてきた写真で数冊のアルバムを作って甲子園ギャルに見せたら、短時間でめちゃめちゃ売れて、めちゃくちゃ儲かりました(笑)。

──すごいですね。どこに商売の種が転がってるか、子どもの頃からわかっちゃってたんですね。だから次々とプロデュースしたお店を繁盛店にできるんですね。

あの時は甲子園ギャルが池の水面で餌を求めてパクパクしてる魚に見えましたね。わははは!

──儲けの分前は?

そのにいちゃんに半分渡しました。撮るだけで半分もらえるんだからいいですよね(笑)。でも、すぐ球場関係者に捕まって怒られてもうたんですよ。「甲子園で写真なんか売ったらダメだよ、僕」って(笑)。だから結局5試合分くらいしか売れなかったんですよ。

──それは残念でしたね(笑)。そんな光山さんのご両親は商売人なんですか?

町工場を経営してましたけど、今の僕が見ても商売人気質はまったくないですね。どっちかというと職人気質です。

──じゃあ完全に光山さんの素質なんですね。

まあ結果から見ればそういうことになりますかね。

隣のお客さんに話しかけるの、厳禁

──店主として決めているルールってあるんですか?

僕の店ではたまたま隣同士になったお客さんが、片方のお客さんに喋り掛けるの、NGなんですよ。カウンターやし、ましてや僕も大阪の人間やし、つい初対面でも馴れ馴れしくなる可能性があるじゃないですか。でも許しません。知らないお客さんに喋りかけるのを見たら、すぐ「あ、すんません、そういうのなしで」と止めます。そういうとこシビアにしてます。ここ結構重要なんです。

──なぜですか?

喋り掛ける方は「袖すり合うも他生の縁」みたいな感じで隣のお客さんに喋り掛けるかもしれないけど、喋り掛けられる側はそういう気持ちじゃないかもしれないじゃないですか。だから『わ』で現場に入っていた頃は、「客でたまたま入ったカウンターだけのホルモン屋で何勝手に何でもありと思てんねん、客といえども自分勝手な気持ちで行動するのは絶対許さんぞ」と思ってました(笑)。『肉山』でも僕が現場に入る時はめっちゃ守りますよ。

これは、お客さんからめっちゃ喜ばれます。話しかけるのを止めたら、「そういう気持ちやなかったんです。助かりました。ありがとう」いうてお礼を言われたことも何度もあります。お客さんも一人でしっぽり飲みたい時もあるやろうし。ほんまは知らん人から喋り掛けられるのは嫌やけど、ついつい好きな店に来てるから場を乱したらあかんと思って無理して喋ってくれる人もいると思いますが、そんな思いはさせたくないですよね。

ただ、僕が偶然居合わせたお客さんをどっちもよく知ってて、この2人を引き合わせたら両方ともハッピーになると思ったら、まず「この人紹介したいんですけどいいですか?」ってどっちにも聞いて了承を取れたら紹介します。このマッチングは店のオーナーである僕の仕事やと思ってるんです。

いつでも店を閉める覚悟で

──経営者として大事にしていることを教えてください。

フランチャイズ契約している店にはなかなか言いづらいですけど、自分が経営する店は何か問題が起こったらいつでも閉めるという覚悟でやってきました。例えば、ちょっと前に飲食店のアルバイトが店内でバカなことやって炎上する事件が立て続けに起きましたよね。あんなんがもし自分の店で起こったら絶対、お詫びして即、店閉めますね。それしか責任取れないから。

あと、売り上げダウンが止まらなくなってきても閉めます。延命作業は絶対しません。そういう店は存在したらアカンと思うんですよね。例えばふらっと入ったラーメン屋で1000円のラーメン食べたら、驚くほどおいしくないことってあるじゃないですか。でも東京のお客さんてやさしい人が多くて、そんなんでも生き残ってる店、いっぱいあるんですよね。自分の店でもあかんかったら1回潰して、もういっぺん考え直してまたやればいいと思うんです。別に潰れることが恥ずかしいとは思わないし、店をたたむことの恐怖感はないですね。

──店の経営だけじゃなくて、ビジネスの現場でもすぐにあきらめるのはダメだ、みたいことはよく言われますが。

いや、そうは思いませんね。僕はまあまあすぐあきらめますけどね。あきらめるというか、朝令暮改的なことはいっぱいやりますよ。いいと思ったことは「よし、これやってみよか」とすぐやってみるけど、お客さんの反応が思ったより悪かったらそーっとやめるみたいな、やってなかったことにすることもよくありますよ。わははは!

それとちょっと関連しますが、失敗したらすぐ反省して改善することを繰り返してきました。前にも話しましたが、失敗そのものはええんですよ。そこから学べることも多いので。ただ、お客さんのためにすぐ改善せなあかん。それも明日からとかじゃなくて、営業中に改善せなあかんわけですよ。だから店のスタッフにも、失敗そのものは責めずに、すぐ改善しなかったら叱ってました。すぐやれよと。

▲『肉山』の店内には常連の人気漫画家が描いたポスターが貼られ、壁には各界の著名人のサインが所狭しと描かれている

卒業3、入学5の法則

──飲食店を長く繁盛させるための秘訣は?

飲食店にとって一番大事なのは、自分の店を好きになってくれるお客さん、つまりファンの数です。どんだけ台風が来ようが大雪が降ろうがファンの数が多いと来てくれる可能性が高まりますよね。飲食店とは、その可能性を高めていく商売なんですよ。絶対に高めていかなあかんのです。だから当然自分の店を好きになってくれるお客さんの数が多い方がいいわけで、元々もってるファンが100人しかいなかったら毎日席は埋まらないわけですよ。そのためには常連だけじゃダメ。だから僕は、仲良くなって一緒に飲みに行ってるような人にはもううちの店には来んでもええと言ってるんです。そうじゃなくても、当然卒業していくお客さんはいます。でもまた新しいお客さんに入学してもらわなあかんわけです。入学の方がちょっと多くないと困る。常に卒業3人、入学5人みたいなサイクルになると店がええ感じで変わっていって、いつも満席状態が続くんです。

こないだ『肉山』の3階で常連さんたちと宴会をやってた時、3階で肉を焼くと煙で真っ白になるんで、2階に焼きに降りたんですよ。僕はもう現場に立たないので、ちょっと前だと「わ~光山さんや~!」ってなるのが、「肉焼きに来たこのおっさん誰?」ってなって(笑)。「あら、誰も俺のこと知らん。誰も俺の写真撮れへん」と思ってびっくりしたんですが、でもめっちゃええことなんですよ。それだけ新入生が増えたということなので。

──新規のお客さんを増やすために心掛けていることは?

特にないですね。たぶん常連さんが卒業してくれてるから、空いた枠に新しいお客さんが入ってきてくれてるだけでしょうね。そのお客さんがまた別の友だちを連れてきて、どんどん僕の知らない人が増えていく。めっちゃええことです。でもいまだに常連さんからは僕に直接予約の連絡が来るわけですよ。だから今『肉山』をやってる店長に、「いつまでこの人、俺に予約の連絡してくるの? 現役のお前らがゲットせなあかんねんで」とよく言ってるんですわ(笑)。

──店の経営方針や売上の目標、どんなお客さんを狙うか、などは決めるんですか?

そういうことは全然決めないし、考えません。そんなもん決めても思い通りになんてならないですからね。そもそも店や会社を大きくしようという気がさらさらないので。そういえば過去にある媒体で取材された時、インタビュアーに「社訓みたいなものはないんですか?」って聞かれたんですが、「そんなもんないです」って答えたんです。そしたら「僕はこれまでたくさんの飲食店を見てきてますけど、社訓がないのはよくないと思います」って言われたんですよ。そんなん必要? 僕には理解できない。今まで社訓なんかなしでうまいことやってきてるし。ほっといてくれやって思いましたが、「ほんだらわかりました。今僕のこと聞いたんやからあなたが僕の会社の社訓を決めてください」って言ったら困ってました(笑)。もし社訓作れ言うんやったら、「今日仕入れたもんは今日売り切る」ですかね。わははは! 毎日お客さんがいっぱい来ないと無理なので。それを繰り返すことができればお店は繁盛するでしょう。

お客さんも誰でもいいです。狙いにいってもそんなうまいこといかないですから。そら一番いいのは、こっちの思うままにめっちゃ機嫌よく食べてくれて、高いお酒を飲んでくれるセレブな人。どんな店のオーナーもそう言うと思いますよ。でもそんなわけにはいかないじゃないですか。だから、例えば肉料理屋なら、肉好きで前のめりで食べてくれる人やったら誰でもいいです。あえて言うと同業者に多いんですが、斜に構えて食べる人は来ないでねって感じです。そんなことしても誰もハッピーにならないから。

答えをもっている人は目の前にいる

──仕事のやりがいはどういうところにありますか?

飲食店の場合、まず店に来るという段階でお金が必ず発生しますよね。『肉山』でいうたら最低5000円も発生するわけじゃないですか。まずそこで1つ高いハードルがあるんですが、それを越えたらあとはお客さんとの対面勝負です。この狭い店の中で勝負して、いい関係になって気持ちよく帰ってくれたら、また来てくれる可能性が生まれる。そのお客さんとの対面勝負で今日は勝てたな、うまいこといけへんかったなというのはその場でわかる。それがこの仕事のやりがいというか醍醐味の1つですよね。答えをもっている人が目の前にいてるほどわかりやすい商売はないわけですよ。それを各店舗どれだけ感じながらやってるかはわかりませんけど、それが感じられへん店は弱いですよね。

自分で選んだ仕事だから楽しいのは当たり前

──仕事観についてうかがいたいのですが、光山さんにとって仕事とはどういうものですか?

そういうことはあんまり考えないですね。かっこいいことも言えないですし。わかんないです。何のために働くかも考えてないです。納税のために働いてると書いといてください。わははは! 家族にメシ食わすためとも思いませんし。そんなん、言うまでもない当然事項ですから。逆に言うと、よく有名な会社の社長は「社員の先にはたくさんの家族がいてるから、経営者はそこまで考えんとあかん」みたいなことを言いますが、そんなん僕は一切考えません。僕は実際に一緒に働くスタッフしか見てないので、その家族まで見る余裕なんてないです。そこはスタッフにもはっきり言ってます。

あと、僕はいまだに飲食店って所詮は水商売だと思ってるんですよ。スナックも『肉山』もくくりでいうたら同じ。全国チェーンの居酒屋を経営している社長さんはそこから脱却したいとか、飲食店として社会的地位を上げると言うてる人もいてるわけですが、どんだけ時が経ったって、規模が大きくなったって水商売であることは変わらない。だからそういう壮大なことはぜひそちらでやってくださいって思ってます。

──仕事自体は楽しみながらやってる感じですか?

そうですね。自分で選んでますから仕事は好きやしやってて楽しいですよ。だからこそ僕と一緒に働いているスタッフには僕にぶら下がってもらいたくないですし、その分給料もちゃんと払から自立して働いてほしい。そうしないとその人たちも楽しくないじゃないですか。

──光山さんが求めているものとは何ですか?

ないんですよ。物欲も何もないです。時計もはめないし車も持ってないし、家も吉祥寺のめっちゃ普通の賃貸マンションやし、旅行も行かないし。

──物とかお金とかじゃないとしたら何ですか?

特にないんですよね。ってことは満たされてるんちゃうかなと思いますけどね。満足もしつつ、深追いもせずって感じですかね。

──今後の目標や展開は?

今はまた現場を離れて長いですが、もう1回新しいステージがあるかもしれない。もしかしたら初期の『肉山』と同じように3日だけ僕が現場に入る店をやるかもしれない。でも現段階では『肉山』を作った時のような、そこまでのテンションも構想もないです。それに、今はプロデュースやフランチャイズで関わってる店が多すぎるので、そこまで手が回らないんですよね。プロデュース自体、現状で手一杯で相談が来ても断ってる状況なので。

──twitterに「鮨屋をやりたい」と書いていますが。

それは昔からあります。今まで手がけたことのない業態で、ごはんを食べながらお酒を飲む店を作りたいという思いがあるんです。例えば、本格的なプロデュースじゃなくても、「シュウマイ専門店をやりたいからプレゼンを受けてください」という人がいて、実際にシュウマイを食べておいしいやんってなったら、「シュウマイだけでは弱いからシュウマイと肉でいこか」みたいに、アイデアを出して開店資金が足らなければ支援する、ということはあるかもしれないです。今後も、僕が行きたくなるようなおもしろい店を作っていければと思っています。

~取材を終えて~

今回、光山さんに取材依頼をしたのは、『肉山』や『わ』に実際に何度か来店し、そのおいしさや安さを実感、人気ぶりを目の当たりにしたことや、次々と飲食店をプロデュースし、ことごとくヒットさせているその経営手腕とその元となっている思いに迫りたかったという動機が1つ。もう1つは、こちらの方が大きかったのですが、光山さんのFacebookの投稿や彼の友人たちとのやりとりを拝見していて、「なぜこの人はこんなにもいろんな人にたくさん与えまくるのだろう」と常々思っており、その理由を知りたいと強く思ったからでした。

記事を読んでいただければおわかりの通り、光山さんは自分からは決して「みんなを喜ばせたいから」とか「みんなの幸せのために」などとは言いませんでした。また、もはやボランティアとしか思えないような支援の仕方についてもドヤ顔で語ろうとはせず、こちらが何回も聞いてようやく渋々口を開くといった感じでした。このような謙虚で、自分自身をよく見せようとしない態度を含め、3時間半、お話をうかがってその人間性の一端を垣間見た時、手掛けるお店が繁盛する理由、そして一般人から各界の著名人まで数多くの人たちに慕われる理由がわかった気がしました。 取材・文:山下久猛 撮影:守谷美峰

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