認知症対策であり遺言機能もある家族信託は遺言とどう違うのか?

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認知症対策であり遺言機能もある家族信託は遺言とどう違うのか?

家族信託とはどういうものか

ご自身の財産に関して生前に何も対策をしていない場合、相続人は法定相続分という法律で決まっている割合で遺産分けをすることになります。これに対して、法定相続分と異なる配分で遺産分けをしたい場合、遺言書の作成もしくは認知症対策にもなる家族信託契約をする必要があります。

遺言と家族信託を比較するとき、家族信託を二つのパターンに分けて考える必要があると思われます。一つ目は、家族信託の一般的な認知症対策としてのケースである、ご本人が託した相手に「生前の」財産管理の機能を持たせる場合です。この場合、その効力は家族信託契約時からスタートします。

二つ目は、遺言の中で家族信託を設定し、相続発生「後」の財産管理や何代かに渡って遺産を引き継ぐ人を指定する場合です。この場合、その効力は相続発生後からスタートします。家族信託も含めて元気な間にしか契約をすることができません。

家族信託と遺言の違い

民法が規定する通常の遺言と信託法の規定する家族信託契約との違いは、親の死後の財産を受け取る人を決めるのが目的であるのが遺言、親の元気な間から財産の管理を託された人が担うのが家族信託です。つまり、親が亡くなった後の遺産分けを法定相続分と異なるようにしたい希望がある場合は遺言のみで事足ります。

一方で、親の生前の財産管理について、認知症等によって判断能力が低下したことにより預金を引き出せなくなったりすること等の対策を講じる必要がある場合には、家族信託を活用することで、①生前の判断能力低下中の財産管理と②亡くなった後の遺産分けの指定の両方の対策に非常に効果的です。

つまり、家族信託契約の対象に指定した財産については、判断能力低下中の財産管理機能に加えて遺言の機能も付いてくるのです。(家族信託契約に含む財産は、「全財産」を必ず含める必要はありません。全財産のうちで上記①、②の対策に必要な財産のみを選択することができます。)

相続において遺言信託はどのような面で有効か?

遺言は一代限りですが、認知症対策にもなる遺言信託は二代以上先の数次相続に対応しています。

次に、遺言と「遺言信託」についての比較です。ここでいう遺言信託は、銀行等の金融機関での遺言信託とは内容が異なります。どちらも遺言者の死亡により効力が生じる遺言という意味では同じです。

しかし、通常の遺言は、一代限りの資産の承継先の指定にとどまり、なおかつ、財産をもらった相続人・受遺者は、所有者として財産を自己の責任において管理しなければならない。つまり、一代先までしか引き継がせたい財産を指定できません。

一方の「遺言信託」は、遺言のように委託者(遺言者)の死亡によって効果が発生する家族信託で、資産の承継先を指定する機能だけでなく、相続が発生する前に遺言者が財産管理の仕組みづくり(家族信託の設計等)をし、それをそのまま相続人・受遺者が引き受けることができます。そのため、例えば相続人に高齢の配偶者がいるとし、判断能力がすでに危ぶまれるような場合、その配偶者をサポートする仕組みを作ればその仕組み自体を相続することができます。

さらに、資産の承継先は一代限りという制約はないので、数次相続に対応した何段階にも資産の承継先を指定することが可能です。つまり、今の所有者の方が特定の財産の引継ぎ先を二代先、三代先、と先々まで指定することができます。

結果的に、親と家族が望む「老後の財産管理」と「死後の財産管理・資産承継」を実現するには、遺言よりも家族信託が有効的な手段となります。

(池内宏征/司法書士)

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