『銃夢』実写映画化『アリータ:バトル・エンジェル』にダニー・トレホが出演していないのはなぜ? 大きな“目”の変化から機甲術のコンセプトまでロバート・ロドリゲス監督が明かす

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木城ゆきと原作の漫画『銃夢』初の実写映画化作品『アリータ:バトル・エンジェル』が2月22日(金)より公開される。同作は、現在から数百年先の未来を舞台に、サイボーグの少女・アリータ(ローサ・サラザール)が自身の存在のルーツを求めて戦う姿を描いたSF作品。アリータをスクラップの中から救い出し、肉体を与えるサイバー医師・イドをクリストフ・ヴァルツが演じるほか、ジェニファー・コネリーや、マハーシャラ・アリらアカデミー賞俳優が大挙して出演するなど、破格のスケールで映像化されている。

『アバター』シリーズのジェームズ・キャメロンが25年前から構想してきた“悲願の企画”である本作。メガホンをとったのはキャメロンではなく、『デスペラード』『シン・シティ』『マチェーテ』シリーズのロバート・ロドリゲス監督だ。キャメロンが最初に書き上げた600ページにもわたる脚本をまとめあげ、そのイメージをどう具現化したのか?原作屈指のエピソード“モーターボール”を映像化した理由や、製作発表時から話題となったアリータの大きな“目”の調整、さらにはダニー・トレホとの意外な?関係まで、インタビューで語ってくれた。

――原作者の木城ゆきと先生とは、何度かお会いになられたそうですね。どういったお話をされたのでしょうか?

木城先生は『アリータ』のセットを訪問してくださいましたが、実はその前にもお会いしています。私とプロデューサーのジョン・ランドーの二人で日本を訪ねて、脚本やアートワークをお見せして、色々とアプルーバル(許可)をとったりしたので。木城先生は、『アリータ』の撮影現場を訪ねたのが、アメリカ初訪問だったそうです。そのときの表情が、フランク・ミラーが初めて『シン・シティ』のセットを見たときのそれと同じだったのを覚えています。自分の描いた世界が現実のセットになり、ローサ・サラザールが演じるのをご覧になって、木城先生は「アリータ(ガリィ)だ!」とおっしゃっていました。先生がとても幸せそうだったのを見て、私もすごくハッピーでした。というのも、私のキャリアも漫画(※編註:テキサス大学時代に『Los Hooligans』というコミックを描いている)から始まっていますし、映画もなるべく原作に忠実に仕上げたいと思っているからです。

――木城先生は、「理解していない人が作ると、クズ鉄町はただ陰惨で暗く危険なイメージのディストピアになってしまう」「映画のアイアンシティはめっさ楽しそう! 自分も住みたい!」と絶賛されています。世界観を作るにあたって、大切にしたことは何ですか?

私はなるべく原作に忠実でいたい、と思っています。と同時に、ジム(ジェームズ・キャメロン)は作品がSFやファンタジーであればあるほど、リアリティが必要であると考えています。でないと、観客が信じないんだ、と。というわけで、デザイン的には原作に忠実でありながら、様式的な部分をなるべく取り除くようにして、出来るだけリアルに寄せるようにした、というわけです。木城先生に喜んでいただけたのは嬉しいですね。おそらく先生がイメージされていたのは、もっと地に足のついたクズ鉄町のイメージだったんでしょう。『アリータ』は、ストーリーも含めて普遍的な部分が多く、色んな文化に通じるところがあると思います。だから、私としては、リアルでありながら原作のデザインに忠実にすることで、アリータの存在も、ストーリーも信じてもらえるようにすることでした。

――『銃夢』アニメ版(OVA)のプロットやキャラクター設定をかなり参考にされていますね。どなたのアイデアなのでしょう?

『アリータ』は、『銃夢』のOVAと漫画、両方がベースになっています。ジェームズ・キャメロンが最初にギレルモ・デル・トロに見せてもらったのがアニメ版だったんです。彼はアニメ版を観てから、「これは原作を読んだほうがいい」と漫画を読んで、映画化の権利をとりました。ジムが最初に書いた脚本は、漫画版の1・2巻と3巻の一部、そしてアニメ版がもとになっているそうです。例えば、チレン(ジェニファー・コネリー)は漫画には登場しないキャラクターなので、アニメ版を参考にしていますよね。もちろん、すべて木城先生のアプルーバルを得て、脚本に取り入れています。

――モーターボールのシーンを取り入れてくださったことを、多くのファンが喜んでいます。

それはよかった!

――「モーターボールを入れよう」と言い出したのは誰ですか?また、一番大変だったのはなんですか?

あれはすごく大変でした。リアルに見せるのが一番大変でしたね。モーターボールを入れようというアイデアは、もともとはジムのものです。たいていの大作映画のアクションシーンでは、アクションそのものに目を奪われてしまって、実際になぜそんなことが行われているのか、目的が見えなくなってしまうことが多いんですが、それだけは避けたかった。アリータがなぜモーターボールをやって、そこで何が起きるのか、ということが失われないようなシーンにできたんじゃないかと思います。木城先生は、モーターボールを非常に美しく、明確な道筋を立てて描いていらっしゃいます。私たちはそれを活かしつつ、いかにリアルでエキサイティングなものを作るかに腐心しました。

――映画のモーターボールは、お話自体はオリジナルのものですね。

ジムの最初の脚本のベースになった1・2巻は、アリータとヒューゴ、あるいはアリータとイドの父娘の物語なので、モーターボールは登場しなかった。ジムは、「モーターボールがないと、ファンが失望するだろう」と後から加えたんですが、それは正解でしたね。ファンの方々に喜んでもらえてよかったです。私は、ジムが選んだモーターボールの描写がすごくいいな、と思っています。というのは、モーターボールというスポーツをすることではなく、アリータを殺すことが目的になっているからです。観客はゲームそのものではなく、アリータが生き延びるかどうかに心を奪われるようになる。スケールの大きなアクションを、ドラマ性を失わずに成立させるのが難しかったですね。ご覧になった方も、そこに惹かれたという方が多いです。木城先生も、ジムの脚本を読んでビックリしたそうです。というのは、アリータがモーターボールのトラックからアイアンシティの道に飛び出していくからです。漫画にはなかった描写なので、先生ご自身も喜んでくださったそうです。

――アリータの使うパンツァークンスト(機甲術)の動きも独特ですよね。中国武術をかなり取り入れているように見えたのですが……どんなコンセプトで作ったのか、教えてください。

パンツァークンストをどんなアクションにするかは、ジムと沢山話をしました。「未来的なファイトスタイルってどんなものなのだろう?」と。Wushu(武術太極拳)をはじめ様々な武術のスタイルをミックスしているんですが、それだけではありません。アリータは宇宙空間で戦うようトレーニングされているので、0G(ゼロジー/無重力)で動くことが出来るんです。様々なスタイルを取り入れながら、流れるような動きになるよう、CGIで他の登場人物よりも滞空時間を長くしています。それが独特のスタイルにつながったんだと思います。

――最初に公開されたトレーラー映像で、アリータの目が非常に大きいことが話題になりました。本編と観比べると少し大きさが違うような気がしましたが、何か調整されたのでしょうか?

『アリータ』は、2005年にジムが監督する予定で始まったプロジェクトです。当時のCGIの技術でこれをやろうとしたのはすごいことですよね。当時のジムのアイデアは、「写真のようにリアルだけど、目だけが大きい」木城先生の漫画のテイストをそのまま人間にするという、誰もやったことがないものでした。漫画をそのままリアルな映画にしようとしていたんです。当初は昨年2018年の夏に公開される予定だったので、先に予告編を作る必要があったんですが、その時はやっとアリータの顔の製作に取り掛かったところでした。でも、実は目のサイズ自体はずっと同じなんですよ。(最初のトレーラー映像が完成した後)みんな「ちょっと目が大きすぎるんじゃないの?」と言ったんですが、ジムは「いや、目はもっと大きくしてもいいくらいだ。足りないのは、瞳の大きさなんだよ」と言い切りました。その後の映像で、目のサイズは変えずに瞳を大きくしたんですが……ピッタリだったんですよ! これが、ジムの天才的なところなんだ!と思いましたね。

最初に公開された映画『アリータ:バトル・エンジェル』予告A(YouTube)
https://youtu.be/UrLDE7tmEXM

最新映像 映画『アリータ:バトル・エンジェル』TVCM【NewWorld】編15秒 (YouTube)
https://youtu.be/7mdggLpdYco

――製作に使用した中で、もっとも新しい技術は何ですか?

(CGIとパフォーマンス・キャプチャーを使って)、人間の質感を写真のようなリアルさで表現した、という点ですね。『アバター』や『猿の惑星』では、異星人や猿をリアルに見せていました。今回は、映画全編にわたって人間をリアルに見せるので、肌や目といったディティールに力を入れています。目に魂がこもっているように見せなければいけないので、例えば『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム一体に使った全技術を、アリータの目だけに費やしたといってもいいくらいです(笑)。最初のトレーラーのアリータと、本編のアリータはかなり違いますが、それくらい初めてのことは大変だ、ということです。

――ローラ・サラザールさん、イド役のクリストフ・ヴァルツさんらメインキャスト以外で気になったのが、ロドリゲス監督のこれまでの映画に出演された常連俳優さんです。ゲルダ役のミシェル・ロドリゲスさん、アジャカティ役のマルコ・ザロールさんは、最初からキャスティングするつもりだったのでしょうか? また、なぜダニー・トレホさんは出演していないのでしょう?

ダニー・トレホ(笑)。ダニーはいつでもほかの映画に出しますよ! 私が最初に脚本に手を入れたときは、特定の俳優をイメージはしませんでした。唯一、クリストフ・ヴァルツだけは例外ですが。だから、アリータ役のローラ・サラザールもオーディションで見つけなければいけなかったわけです。いわゆる、アリータの“先生”にあたる、原作でも有名なキャラクター・ゲルダの配役は、ジムと私が一緒に仕事をしたことがある俳優から考えました。ジムと「彼女は俺たちが知っているなかで一番Badass(※編註:「超カッコいい」「イケてる」の意)だよね」と一致して決まったのが、ミシェル・ロドリゲスです。

――素晴らしい。

ダニー・トレホ主演、ミシェル・ロドリゲス、マルコ・ザロール出演『マチェーテ・キルズ』海外版予告(YouTube)
https://youtu.be/b6liUyhMdJc

マルコ・ザロール デモリール(YouTube)
https://youtu.be/o2QxA8gtUso

モーターボールのアジャカティ役は、最初はダニーにしようと思っていました。でも、ダニーが出ると、「ダニー・トレホだ!」とわかってしまうので(笑)、マルコにお願いすることにしたんです。ミシェルたちが演じたキャラクターたちは、今回の『アリータ』ではそれほど大きな役ではありません。こういうキャスティングは、初めての人には頼みにくいんですよね。ミシェルやマルコは気軽に頼める人たちなので、電話で「ごめん。今回は大きな役じゃないけど、続編では大きくなる役だから、出てくれない?」と、出演をお願いしました。

――続編では重要な役どころになってくるんですね。

ええ!大きな役になると思います。

――期待しています!

『アリータ:バトル・エンジェル』は2月22日全国ロードショー。

インタビュー・文・撮影=藤本 洋輔

映画『アリータ:バトル・エンジェル』
原作:「銃夢」木城ゆきと
脚本・製作:ジェームズ・キャメロン
監督:ロバート・ロドリゲス『シン・シティ』『スパイ・キッズ』
出演:ローサ・サラザール、クリストフ・ヴァルツ、ジェニファー・コネリー、マハーシャラ・アリほか
配給:20 世紀フォックス映画
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/alitabattleangel/
(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation

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(執筆者: 藤本 洋輔) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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