10代・20代ユーザーも急増中─140兆円市場に挑むLINEショッピング・SHOPPING GOの将来性とは?

10代・20代ユーザーも急増中─140兆円市場に挑むLINEショッピング・SHOPPING GOの将来性とは?

LINEが展開するショッピングサービス「LINEショッピング」が好調だ。AmazonやYahoo!ショッピング、ユニクロなどのECサイトとリンクしており、購入金額に応じてLINEポイントが貯めることができる。現在、公式アカウントフォロワー数は約2800万人、会員登録数は約2400万人となっている。

さらに昨年12月には、LINE内に表示される専用バーコードを読み取ることで、LINEポイントが貯まる「SHOPPING GO」をスタートさせた。これらの新サービスの責任者としてLINEで活躍する2人に、立ち上げからの経緯や日々感じているやりがい、醍醐味、そして今後の事業展望について語ってもらった。

ECサイトを比較検討できるLINEショッピング

「LINEショッピング」の提携ECサイトは約250サイトに上る。ユーザーは掲載されているさまざまなショップの商品検索や比較を同時に行うことができ、LINEを経由して買い物することでLINEポイントがもらえる。各ショップの「ショップポイント」がある場合は、ショップポイントとLINEポイントがダブルで獲得できる、ユーザーメリットの多いサービスだ。

昨年12月にスタートした「SHOPPING GO」は、バーコードをかざすだけで、実店舗でもLINEポイントがもらえるサービス。人気ファッションブランド「earth music&ecology」の国内286店舗で使用できるほか、家電量販店のビックカメラ、コジマ、ソフマップとも提携している。

これらのサービスを担っているのが、LINE株式会社のO2O(オーツーオー)事業室。同事業室ではほかにも出前・宅配・デリバリーサービス「LINEデリマ」、国内・海外の旅行の比較検索・予約サービス「LINEトラベル」なども手掛けている。「O2O」とは「Online to Offline」の略であり、主にネット上(オンライン)からネット外(オフライン)での行動を促す施策のことを指す。多くのネット企業が注目しているテーマだ。

O2O事業室でLINEショッピングの責任者を務める田村翔平さんは、同サービスの魅力についてこう説明する。

LINE株式会社 O2O事業室LINEショッピングチーム マネージャー 田村翔平さん

「消費者がECサイトで商品を購入する際、今まではいろいろなECサイトを見て一番お得なのはどこかを探すという手間が発生していました。LINEショッピングであれば、250サイトの情報が一度に見られて簡単に比較検討ができる上に、購入すればLINEポイントも貯められます。

また、ECサイト側にとっても、MAU(月刊アクティブユーザー数)7800万人以上を誇るLINEユーザーを取り込めるチャンスがあり、さらにLINEが特に強みを持ち、他メディアでは獲得が難しいとされるF1層(20~34歳の女性)にリーチできるというメリットがあります」

LINEショッピングでの実際の購入者は、一般のECサイトと同様に30~40代がボリュームゾーンだが、10代、20代の流入者も多く、公式アカウントのフォロワ―数はF1層が最も多い。各ECサイトは、若い消費者への訴求媒体としても価値を感じているという。

「私はサービススタート直後に、マーケティング担当としてジョインしました。LINEショッピングは、ユーザーにとってはメリットしかなく、使わない手はない魅力的なサービス。ユーザー数は順調に拡大していますが、メリットをもっと広く知っていただくために、さらにマーケティングに力を入れ、ユーザーの目を引くキャンペーンの実施など、訴求に注力していきたいと考えています」(田村さん)

実店舗で使えるSHOPPING GOでオフライン市場にもリーチ

「LINEショッピング」のネクストチャレンジであり、同サービスから派生した形のオフライン型サービスが、昨年12月にスタートした「SHOPPING GO」。責任者である藤原俊介さんが、ゼロから企画を考え、立ち上げたサービスだ。

LINE株式会社 O2O事業室 SHOPPING GOプロジェクトリーダー 藤原俊介さん

「ネットでのサービスをどのようにオフライン化するのかを考え、どういう事業領域にチャンスがあるか一つひとつ検証を重ねました。その結果、最もチャンスが大きいと思われたのが、LINEショッピングのオフライン版です。

LINEショッピングのターゲットは約16兆円といわれるEC市場ですが、オフラインの小売市場は約9倍の140兆円もあります。LINEはメールに比べて開封率が高い上、ユーザーが常に持ち歩くためにリアルタイム性もあり、オフラインとは親和性が高いのが特徴。この大きな市場にチャレンジしない手はないと考えました」

このようなサービスの先行事例がないため、先々の事業計画が立てにくく、藤原さんは「まずは小さく生み出す」ことに。サービス開始時は「earth music&ecology」1ブランドでリリースを行い、その後ビックカメラなど家電量販店も参画。小規模でビジネスを回しながら検証を重ね、実績を積んで次の有力ブランドに展開するという手法を取っている。そして2021年中には、導入店舗数2万店舗を目指している。

「サービス自体はまだまだブラッシュアップの余地がありますが、各店舗からは想定以上の売り上げが上がっていると聞いています。月間売り上げ目標を数日で達成したというところもあり、手ごたえを感じています」(藤原さん)

「SHOPPING GO」を通じて、オンライン・オフライン問わず、あらゆる購買体験を提供することが、藤原さんの目指す姿だ。

「直近の目標は、ユーザーの同意のもと、位置情報機能を使って店舗付近にいるユーザーにメッセージを配信し、店舗との新しい出会いを創出すること。そしてゆくゆくは、店舗の在庫データを表示できるようにして、欲しい商品がどこで買えるのか、どこが安いのか総合的に判断して買えるようになるなど、O2Oならではの展開を実現していきたいと考えています」(藤原さん)

若くして戦略事業を任されるやりがい、醍醐味は大きい

LINEの戦略サービスを担っているだけに、2人が感じている仕事のやりがい・醍醐味は非常に大きいという。

「私の前職は、ネット広告代理店。LINEという膨大なユーザー数を保有する勢いあるプラットフォーマーならば、大きなことができそうだと感じて転職してきました。ただ、入社して感じたのは、『LINEのサービスだからといって、すぐに使っていただけるわけではない』ということ。逆に、コミュニケーションアプリとしてのLINEの認知が強すぎて、新しいサービスが使われにくいという傾向すらあります」(田村さん)

「LINEショッピングは、一度使っていただければメリットを感じていただけるサービス。どうすれば知ってもらえるかをとことん考え、魅力的なアライアンス先を開拓したり、ユーザーを巻き込むキャンペーンを実施するなどして、着実に実績を積んできました。この試行錯誤の過程が、自分自身を大きく成長させてくれたと感じています」(田村さん)

「今回、SHOPPING GOを通じて消費者のリアルな行動に触れることができ、視野が広がったと感じています。導入店舗に視察に行った時、サービスを使っているお客様がいたのです。ITサービスに関わっていると、こういうシーンに出会えるのは貴重であり、心から嬉しく思うとともに『もっといいサービスにしよう』という力が湧くのを感じました」(藤原さん)

「SNSで検索すると、少しずつ『使ってよかった』の声が増えているのも嬉しいですね。もちろんネガティブなコメントがあれば、社内のLINEグループですぐに検討課題に対し、改善策を考えています」(藤原さん)

大企業の豊富なリソースとベンチャーのスピード感

2人とも転職してすぐに責任ある仕事に携わることとなり、LINEならではの働きやすさも実感しているという。特に意思決定の速さなどのスピード感、そして裁量権については「予想以上」と口を揃える。

「よく『若手にも裁量権を与え…』などという話を聞きますが、LINEでは本当にこの考えが浸透しています。私は現在29歳でLINEショッピングの責任者を任せてもらっていますし、LINEトラベルのリーダーも20代。年齢に関係なく、チャンスをつかめる会社だと思います。

大企業なのにベンチャー気質もあり、やりたいと手を上げられる人にどんどん任せるフットワークの良さもあります。それだけ一人で負わねばならない責任も大きいですが、やりがいやモチベーションを得たい人にはピッタリの環境ですね」(田村さん)

「そんなLINEの中でも、O2O事業室は“大企業内ベンチャー”的存在。これだけたくさんの新規事業を生み出している部署はありません。大企業ならではの資金や人材、パートナーシップといったリソースを使いつつ、ベンチャーならではの意思決定スピードで事業を進めていけるのが魅力です。

私は以前ベンチャー企業を経営していたことがあり、『大企業は社内調整などが必要で、スピード感に欠けるのではないか。自身のペースでビジネスを動かしていた自分にはもの足りなく感じるのではないか』と懸念していましたが、まったくの杞憂でしたね。ベンチャーならではのスピード感を維持しつつ、動かせるリソースが増えたので、仕事がとても楽しいです」(藤原さん)

若手ながら責任ある立場を任され、オンライン・オフラインを駆使してユーザーの「便利」「お得」を追求している田村さん、藤原さん。これからもユーザーの声に耳を傾け、140兆円の小売市場に挑み続ける。 取材・文:伊藤理子 撮影:刑部友康

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