成果を“出す人”と“出せない人”の決定的な違いとは?ーーマンガ「エンゼルバンク」に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー(→)。今回は、三田紀房先生の『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』の第27回目です。
『エンゼルバンク』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「普通のことをやるだけで普通と思われる以上の成果、大きな成功を簡単に手にすることができる」
(『エンゼルバンク ドラゴン桜外伝』第3巻 キャリア26より)
龍山高校の英語教師だった井野真々子(いのままこ)は、10年目にして仕事に飽きてしまい、転職を決意します。井野は、かつて一緒に働いていた弁護士の桜木建二(さくらぎけんじ)に相談。桜木は以前、経営破綻の危機にあった龍山高校で教鞭を取っていた時期があり、東大合格者を輩出することによって当校を救った救世主でした。
井野から話を聞いた桜木は、転職エージェント会社の転職代理人・海老沢康生(えびさわやすお)を紹介。井野は海老沢の下でキャリアパートナーとして働くことになりますが…。
味も量も価格も普通…なのに大繁盛する定食屋の秘密とは?
自分が担当している転職希望者・高島の常識のない様子に困った井野。しかし、上司の海老沢は、「世の中はもともと非常識な人の集まりだ」と言います。「だから高島も常識を知って、普通のことができれば見込みはある」と。
海老沢は、井野をあるお店に連れて行きます。そこは、外まで行列ができている定食屋でした。海老沢から「このお店には、普通のことをするだけで普通以上に成功できる秘密が隠されている」と聞かされ、詳しく観察する井野。しかし、味も量も価格も至って普通。唯一、女性スタッフがこまめにお茶を入れにきて、居心地よい空間づくりに努めていたのが印象に残りました。
店を出て、種明かしをする海老沢。「定食屋なら100人に1人がリピーターとなり、1週間に一度来店してくれれば繁盛する。そのもととなっているのが、あのお茶の入れ方だ」と言います。「たいていの人は、『特別なことをしないと成功できない』と思い、かえって当たり前のことを疎かにすることが多い」のだ、と語るのでした。
「才能さえあれば成功できる」とは限らない
世の中の多くの人は、「すごいアイデアを生み出す才能があれば、すごい成功が手に入る」と思い込み、日夜、そうしたアイデアを探し回っています。けれども、そうとも限らないのです。
例えば、天性の才能を持つスティーブ・ジョブズ氏でさえも、かつて自分が創業した会社を追い出されるという、これ以上にない屈辱を味わいました。それは、氏の歯に衣を着せない常識外れた言動が一因だったと言われています。
ジョブズ氏と10年以上ともに仕事をし、iMACの名づけ親にして伝説のクリエイティブディレクターと呼ばれた人にケン・シーガル氏がいます。2人が初めて会った際、ジョブズ氏はシーガル氏に「君たちのつくったTVコマーシャルはとても良かった。でも、紙の広告はクソ喰らえだ」とストレートに言ったそうです。
仕事に集中したがゆえに、会社から追われることになったジョブズ氏
シーガル氏がジョブズ氏の罵倒に耐えられたのは、おそらくシーガル氏もジョブズ氏と同じ“生粋の職人”だったからでしょう。シーガル氏は自著『Think Simple』の中で「(罵倒は)気にならなかった。その言葉に悪意はなく、ただスティーブは彼らしくいるだけだったからだ」と述べています。
シーガル氏の話によれば、ジョブズ氏はいつも頭に思い浮かんだことをそのまま口にし、相手がどう思おうと気にしていなかった、ということです。とはいえ、ジョブズ氏も人間ですから、実際は他人の感情を気にする心は持っていたでしょう。
けれど、ジョブズ氏はいつも自分の仕事を最優先にし、それに集中していたがゆえに、相手に思いやりを示す余裕を持ち合わせていなかったのではないでしょうか。いずれにせよ、氏のこうした態度が災いし、ついには人心が離れて閑職へと追いやられることになったわけです。
©三田紀房/コルク
「礼儀正しさ」も徹底してやれば強力な武器になる
逆に「礼儀正しさに勝る攻撃力はない」という考え方で、トップにまで上り詰めたのが、佐々木常夫(ささきつねお)氏です。氏は家族の看病をしながらサラリーマンを続け、ついには大手企業の取締役になります。「礼儀正しさだけで役員になれる」と言い、部下にもそう教育してきた、ということです。少しその言葉を引用してみます。 「人に会ったら挨拶しなさい」…「ウソをついてはいけません」「間違ったことをしたら、勇気を持ってごめんなさいと言いなさい」―――。
私たちは、このような人として基本的なことを幼稚園でたくさん学んだはずです。その基本的なことをきちんとできる人が「人間力のある人」であり、人に信頼されてリーダーになりうる人だと思います。(佐々木常夫『部下を定時に帰す「仕事術」』)
今回、選んだ「本日の一言」には、サラリーマンが生きている世界観が集約されている、と言ってもいいでしょう。要は「普通の人が普通のことをするだけで成果が出る仕組みになっているのが会社」ということです。それが良いとは思いませんが、組織ピラミッドの上に行けば行くほど、出世の椅子取りゲームは、ミスが命取りとなります。
ジョブズ氏のような飛び抜けた天才が会社という普通の人の集合体になじまなかったのも、ある意味、仕方のないことなのかもしれません。
俣野成敏(またの・なるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン(→)』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?(→)』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」(→)』を上梓。著作累計は42万部。2012年に独立、フランチャイズ2業態5店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、『日本IFP協会公認マネースクール(IMS)』を共催。ビジネス誌の掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』1位に2年連続で選出されている。一般社団法人日本IFP協会金融教育研究室顧問。
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