ToDoを100%確実にこなす!freee代表・佐々木の「書き出し」テクニック
「何か新しい趣味をつくりたい」「新しい分野の勉強をして、周りにちょっと差をつけたい」と決意したはずが、三日坊主で続かない――そんな悩みを持つ人は必見!
「3か月」を一区切りにしたスケジューリングを実践し、いろいろな人から「無理だ」と言われたクラウド会計ソフト「freee」を作ったfreee株式会社代表の佐々木大輔さんに、立てたスケジュールを100%確実にやり切るコツを教えていただいた。
プロフィール
佐々木大輔
1980年、東京生まれ。2002年一橋大学商学部卒業。派遣留学生としてストックホルム経済大学に在籍。在学中からITリサーチ会社にてインターン、契約社員としてリサーチ集計システムや新しいマーケットリサーチ手法を開発。
卒業後は博報堂にてマーケティングプランナー業、投資アナリスト等を経て、2008年にGoogleに参画。日本におけるマーケティング戦略立案、日本およびアジア・パシフィック地域における中小企業向けのマーケティングの統括を担当。2012年7月freee株式会社設立。2018年6月、初の著書となる『「3か月」の使い方で人生は変わる(日本実業出版社)を上梓した。
長続きしないから「3か月で区切る」
佐々木さん自身、学生時代にさまざまな部活動に取り組むものの「全然長続きしなかった」と言う。では、今はなぜ続けられるようになったのかを聞いてみると、意外な答えが返ってきた。
佐々木さん「いや、今でも全然続かないんですよ(笑)。だから『3か月』という期限を切っています。期限を区切るからこそできるのだと思っています。
スポーツ競技の場合は継続的にトレーニングしないと一流になれないですよね。でも、ビジネスは誰もやっていないニッチなテーマを見つければ、『3か月』で一流になれる。それがすごく面白いんです」
ニッチなテーマを見つけるコツは2つ。
1つは「周りの誰かが困っていること」。周りの人からさまざまな「困りごと」を聞いて、どうやったら解決できるか? という目線で考えてみる。
もう1つは、自分の人生を振り返ってみて「嫌だったこと」を探すこと。クラウド会計ソフト「freee」は、まさに自分が過去に仕事で困ったことから生まれたという。
佐々木さんのスケジュールはいつもぎっしり詰まっている。アポイントや会食の予定はもちろん、課題について「深く考える時間」もスケジュールとして確保している。それを「粛々と実行していく」と言うが、ぎっしりのスケジュールを本当に実行できるのだろうか。
佐々木さん「スケジュールを立てないより、やりやすいはずです。『明日やる』と『明日の11:58にやる』だったら、後者のほうが達成される可能性が高いという理論もあります。僕はその理論を信じているので、なるべく具体的に『いつやるか?』をスケジューリングします」
スケジュールを立てずにアポイントで人に会うのが無理なのと同様、考える時間=自分とのアポイントもスケジュールを立てたほうがいいと佐々木さんは語る。
まとまった時間を確保して考えなければ解決しない、前に進まないことは、たとえば3時間確保したとして、最初は「時間を区切る時間」を設けてもいいかもしれない。「この3時間で考えるのはコレとコレ。90分ずつかな」という風に。
逆に3分で終わるようなToDoは、「ToDoをこなす時間」をスケジューリングしておけばいい。いずれにしても、スケジューリングすることで、実行率は高まるというのが佐々木さんの持論だ。
また、佐々木さんは定期に時間の使い方を振り返るようにしている。
3か月に一度カレンダーを見直し、「もう少しこういうことをしておけば良かった」などと改善点を洗い出しているのだ。スケジュールをカレンダーに入れておくメリットは、振り返りできる点にもある。
とにかく、まず「書き出す」
前述の通り、佐々木さんは定期的に3時間程度のまとまった時間を確保し、「深い思考」をするようにしている。アイデアを出す、課題を解決するなど、考える内容は毎回異なるが、最初にやるのは「書き出す」ことだと語る。
佐々木さん「頭の中で考えていると、いろいろな可能性を想像して思考がループして、『とりあえず水でも飲むか』となってしまいます(笑)。だからまずは、この時間で何を考えるのか、何を決めるのかなど、書き出してみることが重要です」
書き出す前は「面倒だな」「大変だな」と思っていることも、いざ書き出してみると「コレだけ考えればいいのか」とシンプルになってくる。一度頭の中から出してみることで、モヤモヤしていたことを客観視することができるのだ。
この「書き出す」ステップを経ないと、モヤモヤと悩みながら課題に取り組むことになり、生産性は著しく落ちる。「悩むフェーズと実行するフェーズは、絶対に分けたほうがいい」と佐々木さんは言う。
実際、今まで自分が一番良いアウトプットを出せたときを振り返ってみると、思考と実行を分けていたことに気づくはずだ。
佐々木さん「僕も仕事の下積み時代、パワーポイントでスライドをたくさん作ったり、エクセルでひたすら数式を書くような仕事をしてきました。
悩みながら作ると、時間なんていくらあっても足りません。先にどうやるのかを決めて、あとは無心でやることが必要なんです。これはどんな仕事にも言えることだと思います」
課題について考えるのも、スケジュールをカレンダーに入れるのも、一度「書き出す」ことで思考と実行を分けるため。こうすることで、実行に集中することができ、結果的に生産性が上がるのだと佐々木さんは教えてくれた。
人を動かすには「ストーリー」を書き出すべし
何か新しいプロジェクトを始めるなど、周りの力を借りる必要があるとき、必要なのは「ストーリー」だと佐々木さんは語る。周りを巻き込む「強いストーリー」を考えるポイントは3つある。 誰に対して、何がしたいのか? それを実現できたら何が起こるのか? それにはどんな意味があるのか?
しかし、この3つを考えても、周りを上手く巻き込める人とそうでない人がいる。なぜなのか佐々木さんに伺ってみた。
佐々木さん「たとえば『もっと顧客の声を製品に反映させよう』みたいな耳あたりのいい『やったほうがいいこと』は、世の中にたくさんありますよね。重要なのはどうやるか? なんですが、『顧客の声が大事』というある種のマジックワードによって、みんな『確かに!』と共感してくれます。
相手に一瞬『すごいね』と言わせるのは比較的簡単で、つい上手くいったつもりになってしまうけど、実際には誰も協力してくれないことはよくあります」
耳あたりの良い言葉でごまかすのではなく、まず「文章に落としてみる」ことが大事だと佐々木さんは考えているという。
文章にすることで、「でも、コレってどこにでも書いてあるよね」「実は理由が薄いな……」など客観視できるのだ。書き出してみることで、確かにコレでは誰もついてきてくれないと自分でも気づくことが多い。
佐々木さんもfreeeを立ち上げるとき、ストーリーを文章に書き出した。もちろん創業当初と多少変わった部分もあるが、大枠の方向性は当時から変わっていないという。書き出すことで、その主張がどれだけ強いかが分かるのだ。
佐々木さんは最近、会社の戦略や「なぜコレをやるのか」「なぜこういう順序で実行するのか」をストーリーにする際、一度文章にするようにしている。
以前はパワーポイントに絵を描き、キャッチーな言葉を添えていたが、「結局何を言っているんだっけ? と分からなくなることがあって」と笑う。
佐々木さん「文章にすることで、自分も考えさせられるし、周りからのフィードバックを受けやすい。思考停止になりにくいと感じています。
文章に書き出すことで、いろいろな課題が浮き彫りになるし、『分かったつもり』がなくなります。『こういう表現にしたほうがスッと頭に入るな』ということまで考えられるので、アウトプットのクオリティが上がるのではと考えているんです」
長続きしないから「3か月」に区切る。スケジュールも悩みも、一度書き出して客観視する。伝えたいことは文章化してみる。
佐々木さんが普段からやっているのは、今日から誰にでもできるシンプルなこと。シンプルだからこそ意外に実行している人は少ないのではないだろうか。
生産性を高め、時間がなくてできなかったことをやるために、今日から1つずつ真似してみよう。
文・筒井智子 写真・壽福憲太 編集・鈴木健介関連記事リンク(外部サイト)
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