ユーザーにとって便利で「気持ち悪くない」広告を──LINEのプロダクト戦略マネージャーが目指す新しい広告の在り方

ユーザーにとって便利で「気持ち悪くない」広告を──LINEのプロダクト戦略マネージャーが目指す新しい広告の在り方

LINEの大きな収益源である広告事業。「広告」というと、スタンプや公式アカウントを思い浮かべる人が多いだろうが、実はLINEのさまざまなサービスを通じて多種多様な広告を展開している。

これらの戦略を立て、実行しているのが広告プロダクト戦略マネージャーとして活躍する谷口さん。「広告をユーザーにとって便利なサービスに変える」という谷口さんに、これからのLINEにおける広告の在り方や、仕事のやりがい・醍醐味、そして「LINE」で目指したいことなどについて語っていただいた。

LINE株式会社 コーポレートビジネスグループ B2Bビジネスプロダクト企画室 プロダクト戦略チーム マネージャー 谷口 友彦さん

インターネット系メディア企業に新卒入社し、さまざまな新規事業企画を担当。2014年にLINE株式会社に転職。生活系サービス企画・事業提携、ビジネスプラットフォーム企画(Messaging API、LINEログイン、LINE Beacon)などを担当。現在は広告事業部門の戦略マネージャーを務める。

「ユーザー利便性」と「広告収益拡大」、双方を叶えるサービス開発を

昨年、初めて広告収入が売り上げの50%を超え、LINEの一番の収益源となった。今後も法人向け広告サービスの強化などで広告収入の比率を上げていくことが、中期的な事業戦略の要となっている。

圧倒的なユーザー数とアクティブ・トラフィックを誇るLINEだけに、広告量を増やせば広告収入も簡単に増やせる。しかし、それではユーザーにどうしても違和感を与えてしまい、ユーザー離れを起こしかねない。

「ユーザーに気持ち悪さを感じさせないためには、LINEのプラットフォームを活かしつつ、LINEにしかできない広告展開を考える必要がある」と語る谷口さん。最近手がけたのは、3月に発表した電力・ガス・航空・運輸などに関わる、重要性や必要性の高いメッセージをユーザーに届ける「通知メッセージ」。

搭乗便の遅延や欠航通知、公共料金の通知、配送予定日時通知などの通知をLINEのメッセージに置き換えることで、ユーザーの利便性を向上すると同時に、企業側の業務効率化・経費削減を目指すというものだ。

「この通知メッセージは、ユーザーにとって広告にありがちな気持ち悪さがなく、逆に便利だと感じていただける広告サービスの代表例だと考えています。今後は、飛行機のEチケットやホテル、レストラン予約の予約内容通知などをLINEで簡単に受け取れて、確認したいことがあればチャットで問い合わせることができたり、キャンセルも1プッシュでできるようにする…などの展開が考えられます。

例えばレストラン予約であれば、いつ、何時に予約したのかという情報のヌケモレがなくなり、ユーザーにとって便利であるうえ、今問題となっている『ノーショウ(無断キャンセル)』の減少にもつながると考えています」

より良いサービス作りのため、経営陣を巻き込みデータ利用ポリシー変更を実施

「ユーザー利便性便利」を追求するため、LINEに蓄積されている膨大なデータの活用も進めている。そのために今年1月に実施されたデータ利用ポリシーの変更にも、谷口さんが大きく関わった。

この変更により現在では、公式アカウントに投稿、送信したテキスト、画像、動画や、コンテンツの送信相手、日時、データ形式、アクセスURL情報などが「新たなサービスのための情報提供」として活用されている(友だち同士でやり取りしたメッセージや画像・動画などの内容、通話内容などは含まれない)。

「一般的にWebサービスはユーザーを集め、そのデータを活用することでマネタイズしていますが、LINEはこれだけのユーザーがいるのに、データ利用ポリシーが明確化されておらず、ほとんどのデータが活用されていませんでした。

プライバシーポリシー変更に際しては、役員を含め本当に変更すべきなのか何度も議論を繰り返し、ユーザーにとってより便利なサービス開発のために必要な情報取得範囲を検討し、ようやく決断。その過程では、何度も『ユーザーが気持ち悪いと感じないか』という言葉をもとに、ユーザー目線で細部にわたり検証を重ねました」

ユーザーデータは企業の宝であり、サービス開発の源となる。経営陣を巻き込み、熟考した末の決断ではあったが。「もしも今回の決断が炎上し、LINEユーザーが激減してしまったら…というプレッシャーはものすごくあった」と谷口さん。

膨大なデータは今、ユーザーにとって便利なサービス開発に役立てているという。

あくまでユーザーファースト、マネタイズはその後に考える

谷口さんがLINEに入社したのは2014年のこと。当時はLINE Pay、LINEバイトなどといったLINE連携のサービスはまだ少なく、「これからLINEを使ったサービス展開が本格化する中、面白いことができそうだ」という期待から入社を決意した。既存サービスがLINEに置き換わるだけで、ぐんと便利になる。そこにワクワクさせられたという。

入社後は、LINE TAXI(8月末にサービス終了)、LINEショッピングなどの新サービス企画や事業提携、Messaging API、LINEログイン、LINE Beaconといったビジネスプラットフォーム企画を経て、広告戦略を担うプロダクト戦略チームの責任者になった。

入社して丸4年が経ち、中途入社者が多いLINEの中では「社歴の長いベテラン」だ。もともと社内における人脈は広いが、広告事業という性格もあり、社内のあらゆる部署と頻繁にやりとりが発生する。役員と密にコミュニケーションを取る機会も多い。前述のプライバシーポリシー変更では、役員はじめ全社を巻き込み、先頭に立って推し進めた。

「LINEで働く魅力の一つが、アグレッシブに物事を進められること。一時的にハレーションが起きると予想されることも、ミッション遂行のために必要と判断されれば信頼し、任せてくれます。そして、プロジェクトを進めるうえで役員判断が必要になったときは、迅速にジャッジした上で、GOサインを出してくれる。会社側が、社員が力を発揮しやすい環境を整えてくれていると感じますね」

ユーザーファーストをとことん追求できる点にもやりがいを感じるという。

「役員をはじめ社員全員が、常に『ユーザーにとってどうなのか?』という視点を大切にしています。今の業務においても、こういう情報が届いたら、気持ち悪さを感じるかどうか、どういう情報が来たら嬉しいと思えるのか、ユーザー視点で考え抜いています。

まずユーザーありきで物事を考え、その後にマネタイズを考える。収益頭の広告事業であっても、この姿勢を徹底できる点が嬉しいですね。その視点で開発した新しいサービスがユーザーに支持され、広告収益が上がり、LINE自体の魅力向上にもつながる。この流れを創り出すのが私の目標であり、やりがいです」

ハレーションを恐れることなく、突き進みたい

日本はデジタル後進国と言われている。米国では当たり前のように使われているAIスピーカーの普及も、緒に就いたばかりだ。日本をもっと便利な世の中にしていくためには、次のイノベーションを生み出すチャレンジをし続ける必要があり、LINEの広告事業はそのための重要な資金源となる。

とはいえ、広告における企業メリットとユーザーの違和感は、どうしても比例しがちだ。幸いにも現在は、LINE上で目にする広告に対する「気持ち悪さ」を訴えるLINEユーザーは少ないが、「ユーザーにとって必要な情報を、適切なタイミング、適切なチャネルで届けることで、企業、ユーザー、そして当社の3者が幸せになれる広告サービスを追求し続けたい」と谷口さんは襟を正す。

「私は現状を変えることを厭わないタイプ。データ利用ポリシー変更もそうですが、誰もが躊躇していた難しいテーマにも果敢に挑戦し、議論を起こしながら物事を進捗させる“ぶっこみ役”だと理解しています。これからも『これは絶対にユーザーのためになる』と確信できるもの生み出すべく、ハレーションを恐れず突き進んでいきたいですね」

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