“経歴”や“肩書き”じゃない時代。「こいつ…デキる…!」と思われるため、必要なのは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

“経歴”や“肩書き”じゃない時代。「こいつ…デキる…!」と思われるため、必要なのは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス

こんにちは。俣野成敏です。

名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。

【本日の一言】

「就活とは、言い換えれば3億円の投資だ」

(『インベスターZ』第4巻credit.29より)

大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。

“就職”には、投資の要素がある

道塾学園の秘密の金庫に眠る財宝。これらは投資部の先輩たちが長い年月をかけて買い集めたもの。彼らは学園の資産の一部を骨董品や美術品、金、プラチナ、ダイヤなどといった現物資産で保有し、それを後輩に引きついできました。

しかし、これらのお宝をただ金庫に眠らせておくのは惜しい、と感じた財前は、先輩たちに財宝を処分し、それによって得た資金をベンチャー投資に充てることを提案。当然、先輩たちは大反対しますが、投資部のキャプテン・神代(かみしろ)は、道塾学園を創設した藤田家の当主に判断を仰ぐことにしました。こうして、財前は藤田家の現当主・藤田繁富(ふじたしげとみ)に呼び出されます。

藤田は財宝を処分する担保として、財前に「自分の人生を賭けられるか?」と問います。「世間では、人の人生は尊いと言われているが、実はたった3億円にすぎない」と言う藤田。「就職活動とは投資と同じ。人は生涯年収約3億円と引き換えに自分の人生を企業に預けるというのに、ほとんどの人は意識さえしない」と。それを聞いた財前は、自分の人生を資金の担保にすることを承諾。「たとえ投資に負けても、必ず自分の自由を勝ち取ってみせる」と公言するのでした。

1度の就職で、人生は決まらない

確かに、就職には「“自分の時間“という資産を投じることによって、どれだけのリターン(年収)をもたらすことができるのか?」という考えでは、投資の一面を持っているかもしれません。とはいえ、世の中を知らない20歳そこそこの若者に対して、1度で正しい選択肢を選ぶように求めても、難しいのが実情でしょう。

かつての生涯収入が2億〜3億円と言われた終身雇用制の方程式はすでに過去のものとなり、今ではサラリーマンといえども「1つの会社に一生を費やす」というのは、むしろ少数派になってきています。よって、どちらかというと「この会社にずっといられるとは限らない」と考え、危機意識を持って行動することのほうが重要なのではないでしょうか。

幸いなことに、近年は一昔前に比べて、キャリアチェンジしやすい環境も整ってきています。たとえ就職に失敗したとしても、それで「自分の一生は終わった」と思う必要はありません。

きらびやかな経歴がなくても、なりたい職に就くことはできる

仕事において大切なのは、「どこで働くか?」よりも「何をするか?」です。一芸に秀でることができれば、転職も独立起業も難しくはなくなります。

例えば、私の知り合いの中には金融の専門家を名乗る方がいますが、その方は金融機関で働いたことがありません。1年ほど金融のプロのカバン持ちを務めながら知識を習得し、“本物の投資”を知りました。現在、その方には多くの顧客がいますが、当然ながらその方が金融機関で働いたことがないことを気にかける顧客は一人もいません。顧客が欲しいのはその方のノウハウであって、肩書きではないからです。

他には、40歳を過ぎてからプロのライターになった、という人もいます。その人もそれまで出版社はおろか、文章と関係のありそうな職には一切就いたことはありませんでした。たまたま知人の出版した書籍の批評を書いたところ、それが識者の目に留まり、やがて文章を書いてほしい、と人から頼まれるようになったものです。

確かに、「経歴」や「肩書き」が良ければ相手に安心感を与えることはできるでしょう。けれど、顧客の要望にこたえられる技術があれば、なくても特に構わない、ということです。

充実した人生を歩む際に「仕事は外せない」

このように、最近は昔ほど会社や肩書きに縛られることが少なくなってきています。とはいえ、「今の就職先が気に入らなかったら他へ行けばいい」という意味ではありません。良い選択肢をどれだけ持てるのかは、「今いる場所で、どれだけ次につながる何かをつかめるか?」で決まります。

私自身も、老舗上場企業のメーカーグループで、平社員と役員・顧問しかやったことがなく、中間管理職の経験がない珍しい経歴を売りにして著者デビューしましたし、同グループの社内ベンチャーで店舗マネジメントを10年近くやった経験をフランチャイズ経営に応用しました。

以前に比べて、仕事に関してより自由度が増えたとはいえ、「限りある時間の中で、いかにして次につなぐ結果を残すか?」ということがキャリアの中の大きなテーマであることに変わりはありません。

結論としては、「就職とは人生の投資とも考えられる」ということを念頭に置いた上で、そこから「投じた時間以上のリターンを上げる方法」や、「充実した時間の過ごし方ができる仕事とは何か?」といったことに焦点を合わせていくことが大切なのではないでしょうか。

俣野成敏(またの・なるとし)

大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。

俣野成敏 公式サイト

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