サラリーマンでも投資しやすい現代。「チャンスを掴める人」は気づいている、“新たな常識”とは?――マンガ『インベスターZ』に学ぶビジネス
『プロフェッショナルサラリーマン(プレジデント社、小学館文庫)』や『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」(日本経済新聞出版社)』等のベストセラー著者である俣野成敏さんに、ビジネスの視点で名作マンガを解説いただくコーナー。今回は、三田紀房先生の『インベスターZ』の第21回目です。
『インベスターZ』から学ぶ!【本日の一言】
こんにちは。俣野成敏です。
名作マンガは、ビジネス書に勝るとも劣らない、多くの示唆に富んでいます。ストーリーの面白さもさることながら、何気ないセリフの中にも、人生やビジネスについて深く考えさせられるものが少なくありません。そうした名作マンガの中から、私が特にオススメしたい一言をピックアップして解説することによって、その深い意味を味わっていただけたら幸いです。
©三田紀房/コルク
【本日の一言】
「これからは、個人が有望な企業を見つけて直接投資をする時代だ」
(『インベスターZ』第3巻credit.23より)
大人気マンガの『インベスターZ』より。創立130年の超進学校・道塾学園にトップで入学した主人公・財前孝史は、各学年の成績トップで構成される秘密の部活「投資部」に入部します。そこでは学校の資産3000億円を6名で運用し、年8%以上の利回りを上げることによって学費を無料にする、という極秘の任務が課されているのでした。
「国家が国民を指導する時代は終わった」
道塾学園の創設者・藤田金七(かねしち)の玄孫(やしゃご)・美雪は、友達と3人で女子投資部を結成。部員たちは美雪の家に行き、美雪の祖父にして現・藤田家の当主:藤田重富(しげとみ)から話を聞きます。藤田は部員たちに「日本人は元来、投資が上手な民族だった」と語ります。
藤田は事例として、日本に古くからある無尽講(むじんこう)について説明。
無尽講とは庶民がお金を融通し合う、一種の小口金融のような仕組みでした。もとは村落内の災害や病人が出た際の相互扶助から始まり、後には事業振興支援的な役割も担うようになった、と言います。それは今でいう「ベンチャーキャピタル」のようなものでした。
「昔の日本人は、個人の責任において無尽に出資し、高いリターンを得ていた。そんな生活が一変したのは、国家が戦費調達のために、国民に貯金を奨励するようになってから。貯金は国債発行の担保として戦争継続のための資金となり、戦後は国土復興のために使われた。しかしその国土もとっくに整備され、国家がお金をばら撒く時代は終わった。今、私たち一人ひとりがそのことに気づき、これからは自分のために投資をするべき時だ」と語るのでした。
次々に登場する新手の投資手段
実のところ、無尽講の精神は今も息づいています。現在、その流れを汲んでいるものの1つがクラウドファンディングでしょう。
クラウドファンディングとは、インターネットの専用サイト等を通じて、資金を必要としている人が事業などのプレゼンを行い、資金を調達する手段です。個人が少額から出資できるものが多くあり、この数年で市場が急拡大してきました。
ここへきて、さらに新たな資金調達法が出現しています。それがICO(イニシャル・コイン・オファリング)、つまり仮想通貨を使った資金調達です。ICO(新規仮想通貨公開)とは、株式で言うところの「IPO(新規公開株)」に相当します。
ICOは多くの場合、ビットコインなどの仮想通貨で出資を行い、証書の代わりに自社仮想通貨やサービスの権利などを付与されるのが一般的です。最近では、ICOを行うためのプラットフォームなどもできあがりつつあります。
依然、混沌としている仮想通貨市場
仮想通貨は最近になって急成長した新しいマーケットのため、まだ国の規制が追いついていません。日本では2017年4月より改正資金決済法が施行され、仮想通貨取引所は現在、許可制になっています。
ICOは、資金を必要とする人にとっては面倒な審査などもいらず、スピーディに資金を調達できる手段として非常に便利です。また出資者にとっても、比較的簡単に投資することができます。もし、出資した事業が軌道に乗り、仮想通貨が値上がりすれば、元手が何倍にもなる可能性があるでしょう。
しかしその一方で、ICOに関するトラブルも増えています。「資金を集めておきながら、サービスを開始できない」「資金を持ち逃げされた」といった報告が相次ぎ、各国も規制に動き出しています。仮想通貨市場はいまだ不安定で、市場価格は乱高下を続けています。
チャンスをつかめるかどうかは“あなた次第”
いずれにせよ、ここ数年でこうした新しい投資法が次々と出現しているのは、決して偶然ではありません。加速度的に早くなる技術の進歩や、今が時代の節目に当たっていることなども、大きく影響しているでしょう。
かつて、日本で事業を興すには大がかりな仕掛けを必要とし、銀行へ行っても個人は相手にされませんでした。その代わり、サラリーマンになれば終身雇用と退職金、年金が約束されていました。しかしもう、そうした“常識”はすでに過去のものとなっています。これからは「与えられる」のではなく、「今あるものをどう活かすのか?」が試されている時代がきている気がしてなりません。もちろん、「自立した投資家であること」という条件があるにせよ、今は誰もが自分のアイディアを形にしたり、もしくは他人を応援できる仕組みが整いつつあります。それは、言い方を変えれば「個人がチャンスを得やすい世の中になっている」ということでもあるのです。
俣野成敏(またの・なるとし)
大学卒業後、シチズン時計(株)入社。リストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。31歳でアウトレット流通を社内起業。年商14億円企業に育てる。33歳でグループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらに40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任。『プロフェッショナルサラリーマン』(プレジデント社)と『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』(クロスメディア・パブリッシング)のシリーズが共に12万部を超えるベストセラーに。近著では、日本経済新聞出版社からシリーズ2作品目となる『トップ1%の人だけが知っている「仮想通貨の真実」』を上梓。著作累計は40万部。2012年に独立後は、ビジネスオーナーや投資家としての活動の傍ら、私塾『プロ研』を創設。マネースクール等を主宰する。メディア掲載実績多数。『ZUU online』『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも寄稿している。『まぐまぐ大賞2016』で1位(MONEY VOICE賞)を受賞。一般社団法人日本IFP協会金融教育顧問。
俣野成敏 公式サイト
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