資産と思っていた実家が家計に大打撃!?“赤字相続”を防ぐ方法とは?

赤字相続による経済負担、年間50万円というケースも…
現在、資産として受け継いだはずの実家が、売ることも、貸すこともできず、空き家となってしまい、ただ維持費を払い続けるしかなくなってしまう、いわゆる“赤字相続”となるケースが増加している。この背景には、人口が減少傾向にあるにも関わらず、空き家が増えることで物件が市場にあふれ、売却がしにくくなっているという構図がある。活用も売却もできない不動産の所有者は、空き家のために固定資産税などの維持費を払い続けることになる。今後、団塊の世代が後期高齢者に突入する「2025年問題」も控えており、さらなる人口減少・物件増加が予想され、その結果“赤字相続”が助長されることが懸念されている。
不動産コンサルタントで相続問題にも詳しい高橋正典氏は、「空き家」により引き起こされる問題として、空き家が増え景観や治安が悪くなるという社会的な問題以外に、この“赤字相続”があると指摘する。自分の両親が亡くなり、これから相続を受ける子世帯が、売却や賃貸などの活用ができずに空き家になるかもしれない実家を引き継ぎ、維持費等による金銭的な負担を強いられる可能性があるという点だ。
平均的な日本住宅の年間の維持費は、例外なくかかるものが固定資産税と家屋敷課税(県民税と市民税の均等割)で年間82,300円(神奈川県鎌倉市、JR横須賀線「鎌倉」駅バス9分バス停から8分、土地230㎡、木造築17年約30坪の一般的な一戸建てを想定)。その他、空き家を活用可能な状態に保つためには、数か月に1度換気をするための交通費や草刈り、火災保険などに加入するなど、メンテナンスが必要となり、上記以外にも年間7万~30万円程度かかるという。多い方では年間50万円以上負担されているそう。
さらに、空き家問題は、地方のことと思われがちだが、実は首都圏も例外ではない。総務省による「平成25年 住宅・土地統計調査」によると、東京都の各区市町村の空き家率は10%前後。トップの豊島区においては15.8%もある。実際に2017年に首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)の中古不動産市場において2017年に売れ残った物件は58,370件と19.88%(不動産流通標準情報システム「REINS」)。高橋氏も「常に物件は市場にでており、首都圏でも売れない物件が増えてきている」と話す。
不動産コンサルタントに聞く!赤字相続の解決策は!?
では、赤字相続にならないためには、どうすれば良いのか?高橋氏は、赤字相続を防ぐ方法として「①親子で話す」、「②親が元気なうちに実家活用法を決めておく」、「③売れる時に売る」の3つと語る。
[1] 親子で話す実家の活用や処分、相続対策にしても、最後の決定権の持ち主である親にある。その説得が最大の関門と言っても過言ではない。実家の問題を考えることは、親の幸せを考えることで、最優先すべきこと。以下のポイントを踏まえ、まずは親子で話すことが重要。・日ごろからのコミュニケ―ション急に子供から親に向かって実家について話し始めると、反感を買う可能性もあるので要注意。他人の事例などについて触れるなどして、実家について3~4回コミュニケーションに図りつつ本題を切り出すことをお勧めする。・家族を連れず自分ひとりで帰る 帰省時には、多くの方が家族で帰ります。親も実家や相続などについて話そうとしていても、孫や奥さんがいる前だと、切り出しにくい話題であることに配慮が必要。・この先の人生についてなどポジティブな話題からスタートポジティブな話題で、これからの人生などについて触れ、自然に実家に関する話題に持っていく。・親が考える今後の人生や希望する生き方を知る 実家の活用は、親側の意見だけでも、子ども側の意見だけでも成立しない。親の考えを知りながら、共に考えることが重要。・親の経済状況(とくに不動産)の状況を知る不動産など、経済状況について話すのは、とても難しい。まずは、実家の査定などを一緒にするところからのスタートとなる。
[2] 親が元気なうちに実家の活用法を決めておく実家活用については、親が元気なうちに決めておくことが重要。高齢者の健康は予告なしに悪化することがある。突然、脳卒中を引き起こして口がきけなくなったり、認知症にかかって何事も判断をしにくくなったり、ガンにかかったりすることもあり得る。話しにくいからといって先送りにしてしまうと、話す機会を逃してしまう可能性があるので要注意。そのためには、まだ大丈夫と思わずに、実家の活用法についてなるべく早く動いてほしい。
[3] 売れるときに売る地方でも都心でも、現在はひと昔前に比べると、中古の戸建てが売りやすくなっている。ただし、今後の人口が減り続けることは明白。さらに、2020年に開催される東京オリンピック後には、「生産緑地」の大量指定解除に伴い住宅用地が市場に放出される可能性がある「2022年問題」も懸念されている。空き家の維持費を払い続けるようになる前に、親の転居や同居などを検討するのも良い。
企業・自治体のサポートを活用
企業や自治体のサポートをうまく活用することも一つだ。大手ハウスメーカーの旭化成ホームズは、本年7月に実家とその活用方法についての相談会「実家のこれから相談会」を8月31日まで開催(https://www.asahi-kasei.co.jp/hebel/lp/jikkanokorekara/index.html/?link_id=top_main1)。相談会は、市況や地価相場などを考慮しつつ、二世帯住宅や賃貸併用住宅、親子での近居提案など、営業担当が実家活用事例から得たノウハウを活かし、その解決策を提案するというもの。同社、二世帯住宅研究所 所長の松本吉彦氏は、「『人生百年時代』を迎える中、核家族居住が一般化した世代が親世帯として既にリタイア期に差し掛かかっています。ここ数年お客様からの相談でも『実家の土地をどのように使えばよいか』という、実家活用に関するものが増えてきているといいます。この世代の方々を調査してみて、子世帯の実家活用への関心の高さと共に、親世代がまだ具体的に動きだせていない実態が明らかになってきました。核家族単位ではなく、親子孫三世代が住むために、どこにどのように家を持つべきなのか、例えば二世帯での建替えがいいのか住替えがいいのかを、家族の要望や税金、相続などの様々な条件を検討し、トータルで考えることが必要ではないでしょうか。」と語る。なお、同社は、8月以降も相談は受けつける予定。
東京都でも、空き家の発生抑制・有効活用・適正管理に関する普及啓発の取組と、空き家所有者等からの相談に無料で応じるワンストップ相談業務を一体的に実施する事業者を選定した。その一つ、東京都行政書士会でも「空き家の利用・活用」に関するセミナーやフォーラムを9月以降も順次開催を予定している(https://www.tokyo-gyosei.or.jp/conference/akiya-support/index.html)。 セミナーやフォーラムには無料相談会も併設している。
【高橋正典氏 プロフィール】業界実績20年で1万人もの購入希望者と関わるなど、不動産売買市場を熟知する不動産コンサルタントで、自らも不動産会社価値住宅株式会社を経営。携わった売買契約は約2000件にも及ぶ。一般社団法人相続支援士協会理事、一般社団法人住宅履歴情報蓄積・活用推進協議会理事。著書に『プロだけが知っている!中古住宅の魅せ方・売り方』(朝日新聞出版)ほか多数。
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