カジノ法案成立、「国の運営だから大丈夫」という理屈と反対意見

カジノ法案成立、「国の運営だから大丈夫」という理屈と反対意見

カジノ法案が成立…これって法律で禁止されている「賭博」」では?

先日、IR推進法案、いわゆる「カジノ法案」が2018年7月20日の参議院本会議で可決されたことが世間をにぎわせています。

JIJICO編集部より、カジノ法案成立に関する問題点についての執筆を依頼された際、真っ先に頭をよぎったのは「カジノって賭博ではないのか?!」という話です。刑法第185条には、ハッキリと「賭博をしたら罪になる」と書かれていますし、同第186条2項には「賭博場を開いた人も罪になる」と書かれています。

カジノ法案を通すことで、ここにいう「賭博」には当たらないと理解しなければいけないということは分かりますが、賭博はダメという法律がありながら、カジノは例外的にOKにするというところの理由については一見、分かりにくいと思います。

国の管理・監督のもとでやるカジノだから大丈夫、という理屈

国の考えをものすごくざっくり言うと、「そもそも国の管理、監督のもとやるので健全性は保たれる」、「カジノを作ることで収益が社会に還元される」ということのようです。国が管理、監督できない巷で行われている賭博(賭けマージャン、賭けゴルフ等)は罰則という形で規制するが、カジノは特別待遇で国が法律を作ったりして直接チェックするので合法的な賭け事として容認、という理屈になります。

言われてみれば、競馬、競艇、競輪といった公営ギャンブルや、宝くじ、totoといった抽選系の娯楽もいうなれば賭け事、ギャンブルですが、国が容認しているからこそ罪にはなりません。それと同じです。一方で、「裏カジノ」と呼ばれる非合法なカジノ店は摘発されているように、同じことをやっても国が行えば合法、勝手にやれば違法、ということです。

民間事業者の利益になる点に「公益性」は認められるのか?という反対意見

公営ギャンブルや宝くじなどと今回設置される方向になったカジノとの一番の違いは、前者が配当金以外の控除金は国や公共団体の収益になるのに、カジノは一部の納付金を除けば、民間の事業者の利益になるという形になる見込みであるということです。

カジノ反対派としては、そこに「賭博」該当性を超える公益性が認められるのかという問題提起を行っているようです。個人的にはこの反対意見は説得力があるように見えます。前例に倣えばやむを得ない、じゃないですが、収益全体を国で管理するのであれば、競馬等とも同じですからなぜカジノだけ叩かれるのか、という話になりますが、そうでない以上、国の管理が及ばない部分が出てきます。そこに公益性などあるのか、という意見です。

ギャンブル依存症の増加を指摘するならパチンコや競馬のほうが手軽で危険

カジノ反対派が掲げるもう一つの問題提起としては、ギャンブル依存症患者の増加に対する懸念です。これについては実際にカジノが営業してみなければわからない部分はありますが、さほど説得力のある意見ではないと個人的には思います。

誰もが気軽に行けるほど各地に出来るわけではないですし、カジノでギャンブル依存症になるくらいなら、もっと前にもっと手軽にできるパチンコや競馬などの影響の方が大きいだろうと思うからです。統計を正確に取ることも難しいとは思いますが、カジノにハマって身を滅ぼすような人は、日本にカジノが無くてもギャンブル依存症になりそうですよね。

(河野 晃/弁護士)

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