働き方改革って、何やればいいの?─日本ビジネスシステムズに成功の秘訣を聞いてきた
2017年度 働き方改革成功企業にランクインした日本ビジネスシステムズ。特定のメーカーにしばられることなく、クライアントにとって最適なソリューションシステムを提案していく「独立系システムインテグレーター」です。
わかばちゃんが気になる会社のオフィスに訪問するシリーズ。今回は「名ばかり働き方改革」があふれる中、日本ビジネスシステムズ社員の方々にどんなことをして変革を起こしてきたのか、ググッと掘り下げて聞いてきました!
働き方改革が成功した企業って、本当に存在するの?
あ、あったんだ……!
え?何が?
何って、働き方改革がうまくいってる企業ですよ!
よくわからないけど乗り気みたいね?
じゃあ、さっそくオフィスに突撃しましょう!
日本ビジネスシステムズさんに突撃!
日本ビジネスシステムズさんは虎ノ門ヒルズの16階・17階にあります。
オフィス入り口には水槽が。
営業・開発・企画・ヘルプデスクがゆるやかに色分けされ、円形に繋がっているオフィス。
部署ごとの壁がないのがポイント。
開発職はフリーアドレスで仕事している人も多いそうです。
フリーアドレスっていうのは、自分の席を決めずに、業務の内容や気分に応じて、空いている席で自由に仕事をするスタイルのことなんだって!
会議室はすべてガラス張り。誰がどんな会議をしているか透明性が高く、開放的な雰囲気です。
こちらはオフィス内の各所にある「Surface Hub」。ホワイトボードのように専用のペンで字が描けたり、カメラ付きなのでリモートでテレビ電話ができたりと、会議の場で大活躍しているそう。
さっそくSurface Hubを試してみました!なめらかで描きやすい!
2017年 働き方改革成功企業 22位
日本ビジネスシステムズさんは2017年のVorkersで、働き方改革成功企業としてランクインしました。
この1年で「働きやすくなった」「ここが変わった」と気づいた点はありますか?
今までメールが主体だったのが、積極的に新しいコミュニケーションツールを使うようになったことだと思います。
それによって、情報共有が早くなったり、情報が一元化されたりというメリットが得られました。
あとは、1 on 1(ワンオンワン)という、上司と1対1で話せる機会ができたのも大きいですね。
私は、入社して初めて「有給を使い切りなさい」という上司にあたりました。
ええっ!?そんな上司がいらっしゃるんですね!
有給を使い切るという前提で予定を立てると、「他の日をいかに効率化するか」ということを考えるようになりました。自分自身で期日を明確にし、時間を調整する力が身についたと思います。
他にも、仕事で使うパソコンが持ち歩きやすいものに変わったのも大きな変化でした。
具体的にはどんな機種に変わったんですか?
Microsoft Surfaceに変わりました。
体感しないと、お客様にご提案するときに理由を説明できないですよね。
リアルに体験することを大事にしています。
まずは自分で使ってみて、メリットを感じてから提案するということですね。
私は、社内の意識が変わってきたのかなと思います。
私が働いている部署では、まわりが先にそういう意識を持ち始め、それにともなって自分の意識も変わってきました。
以前だったら「在宅勤務なんて申し訳ない」と思っていた場面でも、今では気を遣わずに「明日、在宅勤務します」と言えます。
在宅勤務の制度ができたこと、Surfaceの支給やネットワークの整備により、家でも仕事ができる環境が整ってきたことも大きいですが、「じゃあ実際に在宅勤務をやってみよう」という空気があって初めて成功するのかなと。
なるほど。「制度・環境・意識」この3つが揃って、初めて実現するわけですね。
そうですね。他に、フレックスタイム制も導入されました。
16時から子どもの保護者会があると、前までなら半休をとっていました。
それがフレックスタイム制の導入により、「朝早めに出社して、15時で退勤し保護者会へ向かう」ということができるようになりました。
フレキシブルで、いいですね!
「会社にこないと仕事はできないよね」「結局いてくれないと話ができないよね」という意見もあると思うんですけど、今ではSurface Hubを使って、朝会と夕会にリモート参加して円滑に業務を回せています。
2017年から社内に新設されたBoot Camp(ブートキャンプ)という場が特徴的だと思います。
予備校方式になっていて、自分がこのスキルを学びたいと思ったら、出席登録をする仕組みです。AI技術、営業ノウハウ、アンガーマネジメント、いろいろな種類の授業が日々行われていて、日本ビジネスシステムズの従業員なら、誰でも自由に参加できるんです。
* Office 365概要
* 超入門!A.I勉強会
* 実用構成で学ぶ!LAN構築とトラブルシューティング
* EQ&アンガーマネージメント入門
* アサーティブコミュニケーション
* クリティカルシンキング
いいなぁ!それって業務時間内に受講できるんですか?
はい!もちろんですよ!
私は営業部で入社1年目なのですが、技術が必要だと思ったら技術の研修を受けに行っています!
あとは、ブラザーシスター制度でしょうか。
なんですか、それ!初めて聞きました。
ブラザーシスター制度っていうのは、先輩社員と若手社員をペアにして、仕事上の相談にのってもらう制度のことです。
「上司と部下」という関係性ではなく、あくまでも「兄弟姉妹」という関係性ね。
日本だとまだあまり浸透していないかもしれませんね。
入社してすぐの辻さんは、伸び悩んでいた時期があったんですね。
そこで、指導方法が合わないのかも?と気づいたんです。
人の相性ってありますからね……。
そう、スポーツのコーチと同じで、コーチによって選手が成長するのと同じで、ビジネスにおいても、指導方法が合う・合わないってあると思うんです。
そこで、私は辻さんにこんな風にアドバイスしました。
「この会社は、意見や提案を言えば受け入れてくれるから、交渉してごらん」
「何かあったら私がサポートするから」と。
結果、実際に辻さんは自分で交渉し、指導方法の合う人に変えてもらったら、そこからの成長がすごかったですね。成長スピードがグンとアップしました。
どの会社でも、人間関係がうまくいかず、我慢して悩んでいる人っていますよね。
それって、会社にとっては、すごくもったいないことなんです。
特に、日本では、EQやアサーティブコミュニケーションを学んでいないので、言えずに我慢しているケースが多いと思うんです。
辻さんのようにアサーティブコミュニケーションができるようになって、実体験として自分の成長を感じた社員達は、今度は、他の人に「私はこう行動したよ」と体験談・解決法をシェアしていってくれています。
課題の発見は「職場の問題かるた」で
おもむろにカードを広げ始める椎野さん。
こ、これはなんですか!?
何って、かるたよ。
これは、普通のかるたとは違って、50音で「職場の問題」が書いてあるの。
職場の問題かるた 〜 “言える化”してモヤモヤ解決! (沢渡あまね 作 / 白井匠 イラスト):技術評論社
「これは!」と自分が思うカードを1つ選んでください
日本ビジネスシステムズは、働き方改革成功企業として22位にランクインしましたが、今後ももっともっと働き方改革を成功させていくために、一人ずつ、必要なカードを選んでみてください。
みなさんが選んだカードはこれ!
社員のみなさんが選んだカードは「な・も・お・む・き」でした。
* 「な」何かをいつも探してる
* 「も」目的が見えない・わからない
* 「お」おかしいって誰も思わないのかな
* 「む」ムダをムダだと気づかない
* 「き」聞かない、聞けない、微妙な空気
この課題、どうしたら解決できる?
カードを選んで「わかる~」「あるあるだね~」では終わらないのが椎野さん流!
皆さん、これらの課題、どうしたら解決できると思いますか?
解決策を考えてみてください。
今この記事を読んでいるみんなも、一緒に考えてみよう!
「何かをいつも探してる」
仕事をしていると「知らなかった」「誰に聞けばいいかもわからない」ということって、ままありますよね。
例えば、新しいシステムが共有されていなくて、古いシステムがそのまま使われていたとか。「これは古いですよ」と言われても、誰にどうやって確認すればいいかもわからない、なんてことも……。
「目的が見えない・わからない」「おかしいって誰も思わないのかな」
どうしても思い込みって存在すると思うので、誰か気づいた人が、勤続年数に関係なく言えればいいと思う。
「なんでそれをやるのかな?」と目的に立ち戻って考えれば、「それはおかしいんじゃないか」とか「ちょっと変だな」と気づけるようになる。
「ムダをムダだと気づかない」
目的が定まっていないと何をすればいいのかわからなくて、ムダな試行錯誤をしてしまうことがあるので、いついかなるときも「目的を設定する・確認する」のが大事だと思います。
でも、場合によっては目的を確認できない雰囲気になることもあるので、強制的に目的を共有する場面を設定して、みんなが確認できるようにすればいいんじゃないでしょうか。
「聞かない、聞けない、微妙な空気」
これは私の実体験なんですけど、先輩社員に質問しづらい空気があって。
聞きたいのに聞けないってつらいですよね。
だから、私は解決策として「新人お悩み解決センター」が欲しいです。
部署内の人や仕事上のリーダーには話しにくいことってあると思うんです。誰に相談したらいいかわからない。そんなときに、新入社員が気軽に聞ける仕組みがあったら嬉しいです。
私の質問、覚えていますか?
みなさん、ありがとうございます。
さて、私が最初にした質問、覚えていますか?
……!?
私は「どうしたら解決できますか?解決策を考えてください」と聞きました。
みんなから出てきたのは「こんな問題がある・こんなことで困っている」ということばかり。
はっ!たしかに!
唯一明確な解決策を提案できたのは、入社1年目の辻さんだけですね。
問題は発見できてるんだけど、解決策まで提案できないのって、もったいないですよね。
「困ってること」から一歩進んで、「私こうしてほしいんです」と言えることが大事なんですね。
そうなんです。「困っていること」だけを言っているとグチになりやすい(笑)。
本気で解決するためには、自分でアイデアを出し、それを率先して実行する『行動力』が大事。
辻さんは、困っていることを本気で解決したいと思っているから、具体的な案が出たのだと思います。
「新人お悩み解決センター」が必要。そう思ったら今すぐ行動して、やってみましょう。
私は、社内のいろいろなところに出没して、いろんなことをやっているので、一見するとなんのミッションもないように見えるかもしれないけれど、この「解決策を考え、実行する」という部分をやっているんです。
な、なるほど!
課題発見だけでなく、その一歩先、解決策思考へ進みましょう。
目指しているのはCHO(チーフハピネスオフィサー)
実は、私のやっている仕事には、1つのタイトルがつけられないんです。
人事っぽいこと(研修講師・メンター)もしているし、広報っぽいこと(社外での登壇や広報活動につながる企画立案)もしているし、システム開発のヘルプに入ったりもする。
子ども向けのプログラミング学習ロボットPETS(ペッツ)のワークショップを開催したりもしています。
だから、私のことをよく知らない同僚からは「椎野さんって、何やってる人なんですか?」ってよく聞かれるんですよ(笑)。
人事、広報、開発!?たしかに、それを一つで言い表す役職ってないですよね。
だから、「ふさわしい役職名をつけたほうがいいと思います」という意見や、はたまた「名前とイメージにとらわれないで動いてほしいです」という意見もあって…。
そして、最近考えていて、わかったんです。
私が目指しているのは、この会社のチーフハピネスオフィサーなんです。
チーフハピネスオフィサー?初めて聞きました!
チーフハピネスオフィサーは、アメリカのシリコンバレーなどで取り入れ始めている企業もあって、「従業員の幸せを考える責任者」という役職なのです。
数年前、あるメディアから取材を受けたとき「人生の中での成果・チャレンジはなんですか」と聞かれたことがあるんです。
そのときの私の回答はこうでした。 人材育成の中で、人が飛躍的に成長するのを目の当たりにして「あの瞬間変わりました!」と言われたり、その後の活躍を見ていることが嬉しかった——
それを見返したときに発見がありました。
「私が好きなことって、ここなんだ!」と。
従業員の幸せづくりのために、会社として、今までやったことがないことをドンドンやっていく。それが今の私の役割だと思っています。
リクエストをもらったら、1カ月以内にそれを実現
現場のリクエストをもらいながら、「現場にあった形にしていく」ことを意識しています。
基準は1カ月。リクエストをもらったら、1カ月以内にそれを実現するようにしています。
1カ月以内に実現!かっこいい!
例えば、先ほど話に出てきた、社員が好きなときに参加できる勉強会「Boot Camp」。
これって、もともとは、平日の10-12時・14-16時だけの開催だったんです。
そうすると、一部の部署からこんな声がありました。 「そういう勉強会って今までになかったから参加してみたいけど、仕事の内容上、予定が合わなくて参加できない」
「彼女たちが受けたいと言っているので16-18時のコマを増やしてください」
その意見を聞いた私は、さっそく16-18時のコマを常設しました。
あと、大阪の事業所で働いている人や「土曜日もやってほしい」という声があったので、土曜日の午前中にも開催するようにしました。
お客様先に常駐している社員からもリクエストがあったので、平日夜にも開催しています。もちろんこの場合も強制ではなく、参加自由ですよ。
数値で測れない取り組みへのアプローチ。効果測定はどうしてる?
ところで、そういう従業員の満足度や環境の良さって、どうやって測っているんですか?
それを測れるのが、社内からの投票によって評価が決まるイノベーションアワードなんですよ。
「社内にいい影響を与えている」と思うプロジェクトに投票するイベントです。
様々なプロジェクトがあり、それぞれ社内の有志が立ち上げて運営しています。
なるほど!社内投票なら、数値化しにくい環境・マインド面も見える化できますね。
2017年のイノベーションアワードでは、Boot Campも表彰していただけました。
このようにフィードバックがもらえる機会があれば、自分たちがやっていることがいいか悪いか客観的にわかりますし、「僕・私もあのプロジェクトを手伝おうかな」「自分も新しいプロジェクトを立ち上げてみたいな」といった社内活性化に繋がりますよね。
「働き方改革って何やればいいの?」にズバリ回答
おかげさまで、働き方改革成功企業である日本ビジネスシステムズさんが、具体的にどんなことを考え、どんな取り組みをしているのかわかりました!
「働き方改革って、具体的に何やればいいのか?」を図にまとめてみました。
みなさんの仕事を「できる・できない」「やりたい・やりたくない」のシンプルな二軸で考えてみましょう。
ふむふむ。右上の「できる・やりたい」が理想の状態ですね。
この理想の状態に近づけるにはどうしたらいいんでしょうか?
ズバリ、できるのにやりたくないことはモチベーションが上がる場を作ればいい。
やりたいのにできないことはスキルを習得する場を作ればいいんです。
* やりたいのにできないこと、つまりスキル的なものであれば、スキルを修得する場を作ればいい。– 例:Boot Camp(社内勉強会)
* できるけどやりたくないこと、つまりその人にとってモチベーションが上がらないことは、それをやりたい、得意な人がやればいい。
– 例:社内SNS「Yammer」の活用(社員同士意見交換したり、Helpを求めたりする)
「制度だけを整えても、その制度が使われない」ということもありますので、意識もセットで内側から変えていく必要がありますね。
椎野さんから皆さんへメッセージ
最後に、椎野さんから読者の皆さんへ、メッセージをお願いします。
一人ひとりが、個性を発揮し、より豊かな人生を楽しむためには、「やりたいこと」=「できること」=「周りから求められていること」だと思っています。ただ、「やりたいこと」は、なかなか見つけづらいので、まずは、やってみることが大事。 やってみる ⇒(大変だけど楽しいから)やり続けられる ⇒ 得意になる
そうやって、できることが増えてくると、自分の中の「やりたいこと」の優先順位が見えてきます。
私の周りには、Work as Lifeな人達が多いので、何歳になっても、新しい技術にワクワクしているエンジニアがたくさんいます。
(IT業界で働くようになって四半世紀過ぎましたが)私も、今でも、新しい技術を知るのが大好きです(笑)!
「学び続ける」と「自分で選ぶ・自分で決める」という軸を持って、ワクワクする世界を実現できるエンジニアが、もっともっと増えたらいいなぁと思っています。
椎野さん、日本ビジネスシステムズの皆さん、ありがとうございました!
※記事内容および社員の所属は取材当時のものです。
取材・執筆・マンガ:湊川あい(みなとがわ あい)
フリーランスのWebデザイナー・マンガ家・イラストレーター。マンガと図解で、技術をわかりやすく伝えることが好き。■主な著書 わかばちゃんと学ぶ Webサイト制作の基本・わかばちゃんと学ぶ Git使い方入門・わかばちゃんと学ぶ Googleアナリティクス〈アクセス解析・Webマーケティング入門〉 ■Twitter: @llminatoll
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