コブクロ、結成20周年を前に初開催した“2人だけ”のツアー 21年目のリスタートに向けて盤石ぶりを確信する充実のステージ

コブクロ、結成20周年を前に初開催した“2人だけ”のツアー 21年目のリスタートに向けて盤石ぶりを確信する充実のステージ

 2018年5月末からスタートし、先日7月22日の大阪・京セラドーム大阪公演で幕を閉じたコブクロの“2人だけ”のツアー【KOBUKURO WELCOME TO THE STREET 2018 ONE TIMES ONE】。その埼玉公演が7月14日と15日の2日間、さいたまスーパーアリーナにて開催された。本レポートではその二日目の15日の公演の模様を伝える。

ライブ写真(全6枚)

 2018年9月の結成20周年を前に、ストリートでの弾き語りからキャリアをスタートした2人が、いま改めて「WELCOME TO THE STREET」を掲げ、初となる2人編成で開催した本ツアー。その意味合いを2人は「原点回帰ではなく、新しい挑戦」と表現していた。それは活動20周年を前に、今一度2人だけでステージに立つことで、自分たちの足場を再確認し、21年目以降のリスタートへの準備という意味合いもあったはずだ。

 開演前には“ストリート”というツアーのテーマを受けて、大阪・道頓堀の映像がスクリーンに投影され、街の雑踏の音がBGMとして場内に流れていた。定刻を過ぎ客電が落ちると、スクリーンには、まさにストリートで歌うデビュー前の2人の映像が、フラッシュバックのように短く編集され流れる。その音が次第に大きく、激しくなっていき、クライマックスで一転、無音に。アリーナ中央に斜め十字状に置かれたステージ、その対角線上の端と端に、小渕健太郎と黒田俊介が拳を掲げて登場した。

 そのままセンターのステージへ移動し、一曲目に披露されたのはメジャーデビュー・シングルである「YELL~エール~」。小渕の弾くブルージーなアコースティック・ギターの低音リフから、2人の歌う大らかなメロディが紡がれていく、「これぞコブクロ!」という一曲でライブの開幕を告げた。そして、続けて披露された「One Song From Two Hearts」も圧巻。足踏みドラムとブルースハープが登場、ギターと歌に加えてこれらの楽器も弾きこなし、一人二役どころか、三役も四役もこなす小渕のミュージシャンとしてのエネルギーにも圧倒される。

 序盤、コール・アンド・レスポンスが特徴の「ストリートのテーマ」で場内は一気にお祭りモードに。小渕と黒田がステージをところ狭しと動き周り、アリーナを周遊するトロッコも登場して、観客を煽り盛り上げる。この1曲を通して、全部で2万人以上を収容するさいたまスーパーアリーナの大空間がグッと親密に感じられる気がするから不思議だ。

 漫画家の高野苺とコラボレーションした「君になれ」の演奏前には、小渕がMCで「今日は2人だけのステージだけど(バンド編成の普段のライブと比べて)足りない音は、皆さんの想像力で足してください」とコメント。ある意味では観客に対する、これ以上ないほどの信頼を示した一言だったといえる。とはいえ、いざ演奏がはじまると、ループマシンを使って、アコースティック・ギターのリフやボディを叩く打音を重ねて即興的に鮮やかなアレンジを組み上げていくのは流石。その魅せ方も含めた確かな技術は、〈いつの日か/本物の君になれ〉というこの曲の歌詞のメッセージに、ますますの説得力をもたらしていた。

 今回のツアーの中盤の見どころだったのは、ライブ当日に、その日の気分で演奏曲を決める3曲の“当日選曲コーナー”。曲の決め方も自由で、一曲目を担当した黒田は観客にその場でアンケートを行って曲を決めた。そうした流れで最初に披露されたのは「流星」だったが、曲が決まってからの流れも実にユニークで、まず2人が、おそらく候補曲の譜面(コード譜?)がまとめられた分厚いファイル(候補曲は150曲以上もあったとのこと)をめくりながら、決まった曲のパート割を確認していく。もちろん、ただ目で見るだけでは思い出せない部分もあるので(他会場では「二番に入れない」という事件も起きたそう)、実際にその場で早口で歌いながら、どのパートをどちらのメンバーが歌うのかを確認していくのだ。その様子は普段のライブではなかなか見ることの出来ないもので、二人のリハスタにお誘いを受けたような、妙な贅沢感もあった。ちなみに、打ち合わせの最中、スクリーンには、道路工事の現場などによくいる、三等身のアニメ風キャラとしてデザインされた小渕・黒田が登場、キュートな姿も会場の注目を集めた(ちなみに、このイラストは小渕作とのこと)。

 当日選曲コーナーの二曲目は、小渕が決めた「Bell」。ライブ冒頭の「YELL~エール~」と両A面になっていた曲で、粋な選曲にファンも大興奮の様子だった。そして、三曲目は再びの観客アンケート。ここでは黒田がアリーナにまで降りていって、一人ひとり指名しながら、歌って欲しい曲を聞いていく。だが、候補曲が挙がっても、他の観客の反応や拍手が今ひとつだったらNGという、ややハードルの高い設定もあり、なかなか曲が決まらず。そんな中、一人の観客が挙げた「ANSWER」という選曲に、会場から大喝采が起こる。メジャーデビュー・アルバム『Roadmade』の最終曲としてレコーディングされたこの曲について小渕は、メジャーデビューが決まり、お客さんとの距離が離れていってしまうのではないか? という(自分たちも含めた)懸念への回答として作った曲だと当時を振り返りながら説明。この原点回帰的なステージにピッタリの一曲を高らかに歌い上げ、コーナーを締めくくった。

 ここからはライブ後半戦。これまでとは雰囲気を一転、照明演出も絡み合ってクールなムードを醸し出した「Ring」をはさみ、コブクロの代表曲である「桜」「風」「ここにしか咲かない花」という3曲が立て続けに披露される。小渕の職人的なギタープレイとエモーショナルな歌、そして黒田の大空に舞い上がる大砲玉のような強烈なヴォーカルが観客を圧倒。その深い余韻に、観客の長い長い拍手が響き渡った。

 ライブの最終コーナーは、アッパーなパーティー・モードに突入。爽やかな曲調が夏にピッタリの「潮騒ドライブ」に始まり(この日のさいたま市の最高気温は36度だった)、コール・アンド・レスポンスで会場が再び一体化した「Moon Light Party」、そして、どこか和を感じさせるメロディとポップ・パンク調のリズムが軽快な「轍」と、ライブ終盤に相応しいナンバーが続く。本編の最後は、ツアータイトルにも掲げられた「ONE TIMES ONE」。「1×1が、2にも3にも、無限にもなる」というメッセージを込めた、人生の可能性を讃えるような1曲で本編を締めくくった。

 「轍」の歌詞の一節、〈そんな時は/僕のところへ おいで/歌を唄ってあげよ〉というフレーズのファンの合唱が繰り返される中、その期待に応える形で行われたアンコール。この日は「WHITE DAYS」そして「バトン」の2曲が披露された。後者は“命のバトン”をテーマにした曲だったが、それは必ずしも親子や家族の関係のことばかりではなく、誰かが誰かに「がんばれ」と声を掛けて、そのことが人が後押しされることも「バトン」の一つなのだ、と語った小渕のMCも印象的だった。

 全18曲に、楽しいMCや選曲コーナーも加え、気がつけば3時間半という長丁場のライブとなっていたが、その長さを全く感じさせないライブだった。文章の冒頭で、このライブがコブクロにとって「自分たちの足場を再確認し、21年目以降のリスタートへの準備をする」ものだったのであろう、と書いたが、蓋を開けてみれば、2人というこれ以上ないほどミニマムな編成でも、音楽面、パフォーマンス面で全くの不足を感じさせない見事なステージ。その安定感は特筆すべきものだった。この日、コブクロは、アーティスト/エンターテイナーとしての実力と、そこに集った観客たちの愛情によって、アリーナを、まさに(その場にいる人々の温もりに溢れた)“自分たちのストリート”に変えてしまったのだ。21年目以降に向けて、2人の自信と確信を感じるステージだった。

◎公演概要
【KOBUKURO WELCOME TO THE STREET 2018 ONE TIMES ONE】(埼玉公演)
2018年7月15日(日)埼玉・さいたまスーパーアリーナ ※終了

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