「ゲームバー」が著作権侵害でゲームオーバー?問題点は

「ゲームバー」が著作権侵害でゲームオーバー?問題点は

「ゲームバー」が著作権侵害として警告を受け経営者の逮捕も

飲食しながら客に家庭用ゲーム機(PlayStation4やニンテンドースイッチなど)に遊ばせる業態の「ゲームバー」があります。

そのような「ゲームバー」に対して、コンピュータソフトウェア等の著作権者等で構成される一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)が著作権侵害の警告を発して、大阪のゲームバーが閉店を決めたとの報道がありました。さらに、京都市内のゲームバーの経営者らが著作権法違反(上映権の侵害)で京都府警に逮捕され、店は捜索をされてゲーム機やソフト等が差押えられたという報道もありました。

とはいえ、具体的にどういった点が著作権侵害とされているのか、報道だけでは分かりづらいかもしれません。

家庭用ゲーム機と著作権

現行法ではテレビゲームは「映画の著作物」にあたる

テレビゲームは、著作権法の関わりでは、「映画の著作物」にあたるとされています(中古ゲームソフト事件・最高裁平成14年4月25日判決参照)。静止画像が圧倒的に多く効果音も限られているようなゲームは、「映画の著作物」にあたらない場合もありますが(三国志Ⅱ事件・東京高裁平成11年3月18日判決)、現在ではそのようなゲームはないのではないかと思います。

有償のゲームバーは著作者の「上映権」を侵害していることになる

さて、著作権の一つとして「上映権」(著作物を公に上映する権利)が認められています(著作権法22条の2)。「上映」は、著作物を映写幕その他の物に映写することをいい、「映画の著作物」については映写に伴って音の再生も含むとされています(同法2条1項17号)。

上映権でいう「公に」というのは、「不特定または特定多数の人に直接見聞きさせる目的としてすること」を意味します(同法22条、2条5項)。

非営利かつ無料で無報酬の場合(同法38条1項)を除き、他人の著作物を不特定または多数の人に上映すると、その著作物の著作権を侵害したことになります。

ゲームバーでは、不特定あるいは多数の客に、「映画の著作物」である家庭用ゲーム機用のゲームのプレイ画面を見せていたつまり「上映」していたことが、ゲームソフトの著作権者の著作権を侵害したとされたのでしょう。

なお、著作権法違反の犯罪の法定刑は、懲役10年以下の懲役・1000万円以下の罰金とされています(同法119条1項)。もしかしたら、本記事をお読みの方の中には、意外に重い犯罪だと思われる方もいるかもしれません。

「ゲーム」の著作権を侵害することの重い責任

著作物は、その著作物を創作するのに、費用と労力が相当かかります。とりわけ、一般にいう「映画」も「ゲーム」も製作には多くの人の仕事が必要ですから、莫大なお金が必要です。製作にかかった費用を、「映画」も「ゲーム」も公開あるいは発売後に回収しなければ、費用を上回る利益が出せず、次の作品に回す原資も不足してしまいます。

もし、「映画」や「ゲーム」を製作した著作権者に対価が支払われない状態で、「映画」や「ゲーム」のコンテンツが消費されると、その消費分の対価が著作権者に入らないことになります。これは、著作権者にとっても、新しいコンテンツを待つ消費者にとっても不都合です。

著作権者に金銭が入らない状況でゲームが遊ばれてしまう「ゲームバー」として大々的に営業されると、ゲームの著作権者としては、見込まれた売上が得られないという損害を被ることになります。

ゲーム大会の開催にも許可が必要となる

テレビゲームの大会では、ゲームのプレイ画面を不特定多数の観客に見せるわけですから、ゲームという著作物を上映することになります。

ですから、大会を開催するのであれば、著作権侵害にならないように、ゲームの著作権者から許可(許諾)を受ける必要があります。ゲームの宣伝になるとかゲームのファンが広がるといった判断は、著作権者がすべきものです。

ゲームバーでボードゲームを遊ばせるのは問題ない?

ゲームバーでは、ボードゲームを客に遊ばせるところもあるようです。盤上に駒やカードを置いたり動かすなどして遊ぶゲームであるボードゲームは、「著作物」にあたる場合があります。しかし、著作物にあたるとしてもテレビゲームのように上映しているわけではないので、上映権についての問題にはならないでしょう。

ただ、著作権には、「貸与権」(著作物の複製物を貸与により公衆に提供する権利・同法26条の3)という権利があります。ゲームバーでのボードゲームは、この貸与権の侵害が問題になりそうです。

しかし、飲食店に置いて店内で読まれている雑誌や漫画のように、バーの店内でボードゲームを遊ぶ限りは「貸与」にあたらないといえ、貸与権侵害とならないと私は考えます。

(林 朋寛/弁護士)

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