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「相変わらずすっとぼけて……あなたって本当にひどい人」急死の一報! 甦る過去の忌まわしきデジャヴ……死んでも終わらぬ愛執の凄まじさ ~ツッコみたくなる源氏物語の残念な男女~

エリートコースが一転…制裁を恐れる青年貴公子

長年の片思いをこじらせた青年貴公子・柏木は、ついに源氏の正妻・女三の宮と通じてしまいます。まったく嫌われたまま彼女と別れたあと、彼が帰り着いたのは実家の頭の中将家でした。

今まで大貴族の長男として、一点の曇りもない人生を送ってきた柏木。正々堂々と希望に満ちたエリート街道を歩むべく、勉強にスポーツに音楽に勤しんできました。ところが宮に恋してしまったがために、人生が暗転してしまったのです。

「何ということをしてしまったのだろう。もうお天道さまの下を歩けない。宮さまにはもちろん、自分の人生にも取り返しの付かないことになった」。今までがあまりに輝かしかった青年にとって、自らの過ちはあまりにも受け入れがたく、胸を張って外を歩けないとすら思います。

例えば帝の寵妃相手で、死を持って罪を償わなくてはならないとしても、僕は喜んで死のう」と柏木は思います。源氏は准太上天皇、事実上の最高権力者といっていい人物です。いつも息子のように可愛がってくれた源氏にバレたらどんな制裁が下されるかと思うと、恐ろしくてたまりません。

「明るい方へ出られない」心を隠せぬ幼稚な正妻

一方、宮の方も罪の意識に怯えていました。宮にとって柏木との一夜は、忌まわしくおぞましい悪夢でしかない。まるで事のすべてが知れ渡ってしまったかのように怖がって、部屋の日差しのある方へ出てこようともしないのです。外から見えるようなところにボサッと突っ立っていたあの人が、です。

ここでちょっと面白いのが、「清楚で上品に見えて実は遊んでいる女」のたとえです。”この上なく高貴な身分の女性で、一見とても清楚で上品に見えても、実は好き心があってうっかり身を許してしまうようなタイプであれば、こんな事態になってもしれっとやり過ごし、逆に間男との情事を楽しめたりするものだが”などという風に書かれてあります。

今までだと朧月夜が該当しそうですが、よく言えば割り切って付き合える大人の女、悪く言えばビッチといった女性の存在がここで浮き彫りになっています。今でいうと清楚ビッチなんて言われるタイプの源流かもしれませんね。

ところがこの三の宮はまったくこういう類ではなく、気持ちを隠して普通の生活ができたりしない。お父さんに叱られるのが怖い子供と同じで、いつも何かにつけて注意ばかりする源氏の怒りを心底恐れています。

それにしても、罪の意識から太陽の光を避けるというのは古今東西、人間の本能のようなものなのでしょうか。心の通わない2人ですが、太陽の下に出られないと思う点だけは仲良く一緒です。

この様子が何か病気のようだというので、二条院で紫の上の看病に明け暮れていた源氏も、久々に六条院に顔を出しました。宮はキョドって、源氏と目を合わせることができません。源氏はそれを「あまりに放置していたので、さすがに怒っているのかな」とかわいそうに思います。でも、病気ではなさそうです。

「寂しい思いをさせてごめんなさいね。でも、もう紫の上は助からないでしょう。だからせめて最期までしっかり看病をしてあげたいと思ってね。今は申し訳ないが、もう少し辛抱して下さいね」。

宮は何も知らない源氏がいろいろ優しくしてくれるのがまた辛く、こっそり涙をこぼすのでした。

夫に『落ち葉』扱いされる気の毒な妻

柏木はその後、正妻の女二の宮の待つ邸に戻りましたが、ろくに妻の顔も見ず部屋にこもっています。いよいよ葵祭、友人らが「見に行こうよ」と誘いに来ますが、気乗りせずひとり部屋でゴロゴロ。

二の宮は二の宮で、夫がなぜ冷淡なのかがわかりません。皇女と結婚したいと希望したのはそっちでしょ、と言いたい一方、「自分のどこが悪いんだろう、魅力がないせいなのか」と悩んでいます。

女房たちがお祭りに行って閑散とした邸に、二の宮の琴が奥ゆかしく響きます。柏木はそれをさすがに優雅なものだと思いつつも、やっぱりどうしても「コレジャナイ感」が募る。「もろかづら落葉を何に拾ひけむ 名は睦まじきかざしなれども」……姉妹の皇女なのに、どうして落ち葉の方と結婚してしまったんだろう、とディスります。なんともひどい例えです。

更に気の毒なのは、作中にこの後、また別の『女二の宮』という人物が登場してくるため、かぶりを避ける意味でも彼女が『落葉の宮』と呼ばれ続けること。彼女自身は皇女らしいプライドを持った、たおやかな女性なのですが……。

急死の一報!甦る過去の忌まわしきデジャヴ

久々に顔を出したのにすぐ帰るわけにもいかないと、源氏は六条院に2、3日滞在。その間も紫の上が心配で気をもんでいると、二条院から「突然、息を引き取られました」との一報が届きます。

源氏はもう真っ暗になって大慌てで二条院に帰ります。こんな時、牛車の歩みの遅いこと遅いこと。ヤキモキしながら邸の前に到着すると、内からは女房たちの泣き叫ぶ声が漏れ聞こえ、それを聞いてすでに人が集まり始めている様子です。

無我夢中で中に入ると、女房が「ここ数日少しよくなられたようだったのに、突然容態が変わられて……」と説明し「置いていかないで下さい!どうかお供させて下さい」といって大泣き。すでに祈祷の祭壇も壊され、僧侶たちはバラバラと帰りつつあります。

横たわる紫の上を見て絶望する一方、「もしかしたら物の怪の仕業かもしれない」と思った源氏は、特に実力のある僧を集めてもう一度、力の限り祈祷させます。

死に目にあえなかったなんて絶対に嫌だ。もしこれが寿命だとしても、ほんの一瞬でいいからお別れの時間を下さい。どうか、どうかこの願いを聞き届け給え!!」源氏は我を忘れて紫の上にすがり、後追いをしそうなほど思いつめて一心不乱に祈りました。

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