なぜ今まで無かった? “耳に入れるスピーカー”『INAIR』― 上質かつナチュラルなサウンドの愉悦
本日紹介するのはGreenFundingでプロジェクト支援募集中の“イヤースピーカー”『INAIR(インエアー)』です。
「世界初の耳に入るスピーカー」と聞いて、あなたはどう思いましたか? やはり、こんな風に思った方が多いのではないのでしょうか。
……それって「イヤホン」じゃないの? と。
でも、違うんです。『INAIR』が“イヤホン”ではなく“スピーカー”であることについて開発元の方にお話を伺いました。
“スピーカーの音”を外に持ち出したい
今回お話を伺ったのは『INAIR』の開発を手がける『&COLOR INC.』代表の佐川大介氏。
佐川氏はもともと劇場や映画館用のスピーカーの製造で知られる『米ウェスタン・エレクトリック』製のスピーカーメンテナンスやレプリカの製造に携わる技術者でした。
国内有名オーディオブランド製品のOEMや商品企画・デザインを経て、佐川さんはある製品の開発を手がけることとなります。それが知る人ぞ知る『VTS-384』という製品です。
『VTS-384』はiPod用ドックスピーカーで初めて真空管を用いた本格的なiPod用サウンドシステムでした。当時話題になったので覚えている方も多いのではないでしょうか? このシステムはロバート・デ・ニーロの経営するニューヨークのGreenwichホテルのスイートルームに採用されるなど、ハイクオリティなサウンドで好評を博しました。
据え置きの巨大なスピーカーや本格的なサウンドシステムを通して佐川氏が接していたのは紛れもなく“高品質な音”。そんな佐川氏が次に求めたのは「オーディオシステムがもたらす高品質な音を家の外にも持ち出したい」という欲求でした。
……こう書くと、まず僕らは「高品質なヘッドフォンやイヤホンを買えばいいんじゃないの?」と思いますし、実際、佐川氏のお話を聞き始めた時にも筆者は同じことを思っていました。
しかし『INAIR』の説明を受けるにつれ、「そういうことじゃないんだ」という事がわかってきました。
基本構造がイヤホンと大きく異なる
佐川氏は従来のカナル型イヤホンに代表されるような「耳の奥に入れて密閉する」タイプのデバイスが苦手だったそう。
「スピーカーから流れるBGMって、普段聴いてて“疲れる”ことって少ないと思うんです。けれども、硬いプラスチックのイヤホンやシリコンキャップで密閉するタイプのイヤホンをずっと付けていると、どうしても圧迫感があったり、長時間付けていると耳が痛くなることもありました」
自分の頭の周りに、スピーカー環境の音をそのまま持ってこられないだろうか、という発想のもと、『INAIR』の開発がスタートしました。
『INAIR』が従来のイヤホンと大きく異なるのはその構造です。
通常、イヤホンはドライバと呼ばれる音を鳴らすユニットがイヤホンのボディの奥に内蔵されています。しかし『INAIR』の場合、ドライバユニットはボディの奥ではなく、耳の穴近くに配置され、ユニット全体を “AIR TUBE(エアチューブ)” というパーツで包み込んだ構造をしています。
カナル型イヤホンの多くは、ボディの奥にあるドライバから音が発生し、ボディの空洞や構造を経て、耳の奥に届けられます。その音作りの前提には密閉した状態。しかし人によって耳の大きさも形も違いますし、密閉状態は耳内部の圧力も高まり、耳への負担がかかってきます。
対する『INAIR』の場合、前述のとおりドライバは耳の穴すぐ近くに配置されます。
先端に配置されたドライバを後方から包み込む、医療用にも使われる生体適合性ハイテンションシリコン素材の「エアチューブ」、その外側にスポンジのクッション「インエアーキャップ」を重ねた、異素材3重構造となっています。
このエアチューブは6mmのドライバユニットから発生する音を前方だけでなく、360°あらゆる方向に広げる役割を果たし、低音の解像度向上にも貢献しています。
エアチューブの外側にある丸型のスポンジ「インエアーキャップ」は耳を圧迫することなく、「音漏れしないレベル」かつ「耳内部と外界が薄い空気の層でつながっている(= 耳内部の気圧と外界の気圧が同じ)」という絶妙な状態を創り出し、「ドライバユニットを宙空に浮かしたような状態」で支えているという形になります。
つまり『INAIR』は外耳に近い場所で空間を保ったまま、音を耳内部に届けているのです。
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